
オープンソース・ソフトウェアの利点は、コンピューター・ユーザーの生活において、より明確なものになってきている。オープンソースを使えば、誰もがソフトウェアを改良する為の開発プロジェクトに簡単に参加することができてしまう。つまり、Firefoxのウェブ・ブラウザのように、無料でソフトウェアをダウンロードして、クオリティの高いソフトウェアが制作可能になってしまうのだ。しかし、オープンソースのコンセプトは元々、ソフトウェア開発だけを意味するものではなかったはずだ。初台にあるメディアセンター、ICCのドミニク・チェンは、オープンソースの観念がどのようにアートの世界で活用できるかをテーマに、「DIVVY/dual」と題された新しいイベントのシリーズを開始した。
インタビュー:ジョン
訳:チエミ
現在開催中の「DIVVY/dual」シリーズの第一回目のイベント(詳細はこの記事の最後で紹介)では、基礎となるオープンソースとメディア・アートの一体化がテーマ。「Type Trace」と名付けられた作品で、メディア・アーティストの遠藤拓己とエンジニアの松山真也は、来場者が作品と交互に作用することが出来る、見る側と作る側の境界線に挑戦したインスタレーションを披露している。

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壁に映し出されたキーボードは、テキストが打ち込まれるとカチカチと音を立てる
殺風景な部屋の中で、カチカチという音だけが響き渡る…。「DIVVY/dual」のオーガナイザーであるドミニク・チェンが僕達PingMagにこれが何を意味するのかを説明してくれた。
ドミニクさん、今僕の目の前にあるコンピューターの山は、壁に文字を映し出しているんですが、これは一体どういう意味でしょうか?
遠藤拓己さんのこのインスタレーションでは、タイピングする時の“思考のプロセス”を表現しているんです。もっと大きな意味でいうと、どのように私達が電子的にコミュニケートできるのかということです。遠藤さんは、私達のコミュニケーション方法に大変興味を持っていて、「Type Trace」という作品では、自由に人々の“考え方”のプロセスを見ることができるんですよ。あなたの前にはコンピューターがありますが、誰でもそこに座って、好きな事を打ち込めるんです。
遠藤さんと松山さんが開発したソフトウェアは、打ち込まれたものを記録するだけでなく、書き直された言葉も記録します。言葉を打ち込むスピード、次の言葉を考えている“時間”。それらの情報を視覚的なフォームで伝えてくるのです。例えば、打ち込むのに少し時間がかかった文字は大きく映し出されます。これは、私達が普段見るようなEメールなでのテキストとは大変異なります。すごく整っていますよね。つまり、テキストの伝達のクオリティを多少ながら失っているということなんですよ。
ということはつまり、共有された考え方のプロセスを見学するということですか?
確かにそうですし、もちろん共有するということは、総合的なオープンソースのイデオロギーにうまく当てはまりますよね。しかしながら、私達はオープンソースというテーマで、実はもっと先に進んでいるんです。「Type Trace」では、遠藤さんと松山さんが制作したソフトウェアをオープンソース・コードとして公開する予定です。そうすることで、どのように開発コミュニティがソフトウェアを改良されていくのかをこの目で見ることをとても楽しみにしているんです。また、「Type Trace」の中において打ち込まれた内容はすべて“オープンソース”となり、クリエイティブ・コモンズのライセンスの下、誰にでもウェブからダウンロードして改善することが可能となります。

「Type Trace」に打ち込まれた内容全てが、クリエイティブ・コモンズのライセンスの下、オープンソースとなる
まずは、座って何かを打ち込むだけという、このとても簡単なスタートがすごく気に入っているんですが、この“分かりやすさ”も目的があってのことなのでしょうか?
そうですね。スタートが分かりやすければ、参加する人も増え、結果的には「Type Trace」の取得出来るデータ量が増えるということに繋がりますよね。例えば、あるビデオ映像をオープンソース化するとする。あなたは、ウェブにそれをアップして「じゃあ皆、好き勝手にこれを使ってくれ!」という言ったとします。しかし、それをどうにかするためにはビデオ編集の仕方を知らなければならないし、それに最適なソフトウェアが必要となります。テキストというのはとても基本的なもので、衝動的なものです。Eメールや書類を打ち込む方法は誰でも知っているでしょう。ですから、そういう意味でもそこから出る結果はより真実性があり、また多様性に富んでいると思うのです。

オープンソース・ソフトウェアの総合的なゴールは、人々の力を借りてソフトウェアを改良するということですが、オープンソース・アートのゴールは何だと思われますか?
なかなかいい質問ですね。なぜなら、私達が「このアートを改良しよう」とは言わない訳ですから。そんなことは、言えませんよね。まずアーティストの創造性に対して「改良して欲しい」なんてことを言うのは大変失礼でもあります。「DIVVY/dual」では、プロジェクトに2つの層が存在します。“システム”の層と“メッセージ”の層です。
“システム”の層は、会話のオープンソースのように機能します。例えば、私達が開発したソフトウェアがオープンソースになり、人々が部分修正したり、改良するために私達のウェブサイトから自由にダウンロード出来るようになるとする。すると、総合的なゴールは、改良や、人々が使うための良く出来たツールの提供ということになります。

大きな文字…

…小さな文字

「P」を打つのに時間がかかった人がいるらしい

大きな夢
“メッセージ”の層は、「DIVVY/dual」シリーズがどのように人に感じさせるかであり、ここでの総合的なゴールは、見る側に協力を促すイベントを通した“表現と経験の多様化”です。例えば、ここで「Type Trace」を操作する人は、文字を打ち込むスピードやタイミングがテキストの表示に直接影響することを知っている上で操作します。ということは、つまりその人は“強制的に”文字を打ち込んでいる訳です。それは、すでにその人の“考え方”に影響を及ぼしているのです。それは、見る側にとって、テキストの表示の仕方から“どのように人々が考えるか”をさらに深く理解する機会となるのです。

今後の「DIVVY/dual」のイベントは全て、テクノロジーやコンピューターがベースとなるのでしょうか?また、オープンソースは、アナログなアートにも活用できると思われますか?
日本の現代美術作家の協力などを得て、デジタルではないアートにオープンソースのコンセプトを活用するというのは、とても興味深いですし、チャレンジでもありますね。当然ですが、私達にとってはコンピューターを使ってこれらに取り組むことの方が容易なんですよ。というのは、オープンソース・コンテンツを配布したり、公開したりするのが私達の手段ですから。イベントのほとんどは、コンピューターが不可欠であるオンラインでの配布と参加というテーマにリンクされると思います。

ドミニクさん、今日はお忙しい中、本当に有り難うございました。「DIVVY/dual」の第一回目のイベント「Type Trace」は9月23日(土)まで銀座のギャラリーで開催中です。興味のある方はぜひ足を運んでみて下さい!(詳細はコチラ)
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