
U2の「Vertigo」ツアーの映像の提供や、Howie Bとのコラボレーションなど、音楽業界を中心に幅広く活躍するラン・レイクは、不可思議なキャラクターやストーリーを生み出すアニメーター&イラストレーターの奇才として知られている。1年以上かけて制作された作品「Rabbit」が現在世界中の映画祭で注目される中、先月末に行われた広島国際アニメーション・フェスティバルの招待でラン・レイク本人が急遽来日した。
作:チエミ
協力:Hybrid
まずは自己紹介からお願いします。
ラン・レイクです。ロンドンを拠点に活動するアニメーション・ディレクターで、イラストレーターです。来日は…4回目かな。
今回は広島国際アニメーション・フェスティバルに招待されて来日したと伺いました。昨年完成したショートフィルムの「Rabbit」が国際審査員特別賞を受賞されたそうですね。おめでとうございます!それでは早速ですが、その作品について少しお話を聞かせて下さい。
アニメーション作品「Rabbit」より
(イントロはウェブサイトの「Recent work」より視聴可)

素敵なマフがどうしても欲しい子供達が…
© Run Wrake

野原でウサギを捕まえる
© Run Wrake

するとウサギの中から、なぜか動く偶像が出現
© Run Wrake

偶像が魔法で宝石を作り始めると…
© Run Wrake

悪知恵の働いた子供達は…
© Run Wrake

偶像でひと儲け
© Run Wrake

しかし偶像がトラに食べられると…
© Run Wrake

宝石は消え、子供達も虫に食べられてしまう
© Run Wrake
ストーリーは、簡単に言うと「人間の欲」にまつわる倫理性。欲に溺れてしまうことの危険性と自然の探求…。この作品のアイディアは、20年程昔にガラクタ屋で買った1950年代のステッカーが元になっている。2年程前に引っ越した時、引き出しの奥にそのステッカーの山を見つけてアニメーション制作を思いついた。ステッカーは、200種類ぐらいあったかな。
どのようなステッカーだったんですか?
子供が単語を覚える時に使われる教育用のステッカーで、様々なオブジェクトのイラストの下にその名前が英語で書かれているものなんだ。例えば、アイロンのイラストの下に「Iron」と書かれているような。そのステッカーのシートが40か50枚ぐらいあった。それで、そのイラストのスタイルをそのまま使ったフィルムを作りたいと思ったんだ。ステッカーの単語で構成されたストーリーを自分で考えてね。

ステッカーのイラストを同じスタイルで描き直したということですか?
いや、そのステッカーをスキャンして、Photoshopに取り込んでから、切り抜いていったんだ。例えば偶像のキャラクターは、まず右腕と左腕を切り離して、右腕をひとつのレイヤーに、左腕を違うレイヤーに…っていう具合に。最後は登場する全てのキャラクターをバラバラにしてひとつのPhotoshopのファイルにしたんだよ。ものすごい数のレイヤーでね。そこから、AfterEffectsで組み直して、アニメーションにした。自分で描いたのは偶像が蠅を撃つところの変身シーンだけだよ。

制作にはどれくらいかかったのでしょうか?
去年の8月に作り終えて、制作期間は16ヶ月ぐらいかな。アニメーション部分は1年で、プリプロダクションに4ヶ月。長いよね…。ちなみに、音楽はHowieBが担当して、クレイグ・バッターズという人がサウンドエフェクトでとても良い仕事をしてくれた。今回はいつもと違って、絵が出来た後で音をのせたので、ちょっと様子が違ったんだけど…とにかくサウンドエフェクトが79トラックもあるんだよ。つまり、作品に出てくる蠅の一匹一匹が違う音を発してるに近いということ。その上に音楽だろう。素晴らしいよ。
ところで「Rabbit」以外の作品もいくつか拝見したんですが、大変興味深いというか、いつも少しダークなアイディアが盛り込まれていますよね。あのようなアイディアはどこから来ているですか?

ショートフィルム「NME Gallery」より
© Run Wrake

ショートフィルム「What Is That」より
© Run Wrake
よく聞かれるんだけど、自分でも分からないんだよ。思いついた事を書き留めて、本をパラパラ開いて、そこら辺にある絵を手に取って眺めたり、音楽を聞いたりしてるだけで…。コレという理由は思い当たらないね。
例えばシャーラタンズの「Try Again Today」というミュージック・ビデオ(本人のウェブサイトの「Recent work」より視聴可)では、落書きされたような人の体にのせられたメンバーの頭がクルクル回ってからポロリと床に落ちて、そのままコロコロ転がってしまうシーンがありますが…
そこはちょっと説明させてくれないか!あの時は、プレゼンまでに一週間しかなかったんだよ。それで、思いついたことをスケッチブックにグチャグチャと描いていったら結局10ページくらいになった。あの曲は「トライ・アゲン」っていう内容で、アイディアを書き留めることも「トライ・アゲン」だろう?だから、レコード会社にその落書きをそのまま送ってみた。すると先方から「素晴らしいアイディアだ。これを発展させてくれ。」っていう返事がきて、まずは落書きのスタイルが決定した。肝心の頭の部分は、今回撮影は出来ないがシャーラタンズの過去の素材ならどこを使ってもいいって言われたんだ。でも全身が映っている素材は殆どなかったから、頭を切り抜いて、それを動かして何かするしかなかった。だから皆が想像するような悪い意味じゃないんだよ。でも、そういう風にとられることがある意味面白いけどね。時間や素材の問題から生まれたアイディアが、見る人に謎を生むんだから。
あなたの作品によく登場する、人の体にスライスされた肉が付いているキャラクターの「ミート・ヘッド」もダークですよね?道を歩いている男の人が、前から来た犬を見たとたんに、頭が突然“肉”になって犬に追いかけられるという…。

この犬に吠えられた男は突如、頭が肉になる。
「JUKEBOX」より © Run Wrake

HowieBの音に合わせて卓球をするミート・ヘッド「Ping Better Pong」より © Run Wrake
あれはかなりダークだね。ミート・ヘッドは、初め「JUKEBOX」という作品に出て来たもので、“恐怖”を意味している。僕自身、犬が大嫌いなんだよ。最初の男も犬を見た瞬間に「もし俺の頭が肉だったら…」と考えてしまって、だから本当にそうなってしまう。僕としては、ミート・ヘッドがとてもユニバーサルなところも気に入っているんだ。僕達人間は皮膚を剥いだら皆、同じような肉の塊だろう?人種なんて関係ない。1個の心臓、2つの肺、流れる血管…。だから、僕はあのキャラクターにこだわっているんだ。
今まで影響を受けた人や、現在気になる人などいますか?
影響を受けたのは、「ベティ・ブープ」や「ポパイ」を作ったフライシャー・ブラザーズ。彼らの1930年代の作品はすごくシュールな上に、沢山のループを使っていて、しかも線がものすごく美しいんだ。学生時代には、ダダにとても影響を受けた。あとはロシアの構成主義者でポスター・デザインをしていたロドチェンコ。あの時代のロシアのポスターやグラフィックはとても美しい。それと、バウハウスは今でも大好きだよ。最近だと、シャイノーラや、NYのサイヨップがいいね。ミシェル・ゴンドリーは作るもの全ていいよ。腹が立つほど素晴らしい(笑)。
日本のアニメーションや漫画についてはどう思われますか?
今まで見たもので一番好きなのは、宮崎駿だね。彼の作品は…信じられないくらい美しい。“マンガ”って呼ばれるものは正直あまり好きじゃないんだ。動き方がどうもね。でも、宮崎作品の素晴らしいところはあの滑らかな動きだ。そういえば、さっき買い物をしていたら何かのアニメーション作品のマンガ本を見つけたよ。ものすごい変な妖怪が出てくるんだ。あれに比べたらミート・ヘッドなんて全然普通に見えるよ。
では、今後の予定は?
(机を叩いて)ミート・ヘッド!ミート・ヘッドが世界を征服するんだ!あと、死ぬ前に一度は長編も作りたい。まだそんな若さがあるといいけど…。
まだ全然お若いですよ!最後に読者にメッセージをお願いします。
ミート・ヘッドに注目していてくれ。…ちょっとダークな感じになるよ。
やっぱりダークなんですね…!ランさん、今日はいろいろお話してくれて有難うございました!

ミートヘッドに会いたい方はこちら。GAS DVD「Run Wrake/Dinner Time」
広島国際アニメーション・フェスティバルで国際審査員特別賞を受賞したラン・レイク氏の作品「Rabbit」は、今後DVDで発売予定。また、来月よりスタートする世界45都市を回る映像の祭典「RESFEST」のプログラム「Short I: State of the Art」でも上映されるので、ぜひ見て下さいね。
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whatisthat大好きだったので新作がみられるのがうれしいです。
Posted by: outoffocus @ 9月19日2006年