
どんなトレンディ・マガジンも、ストリートファッション・スナップ無しでは成り立たない。東京で今何が熱いのかを見つけだすため、無数の撮影隊は週末毎に街に繰り出し、次のターゲットが現れるのを待っている。彼らは、実際どんな風に人に近づいていき、どんな人を選び、一体どんな質問をするのか…。そして、新しいトレンドをセットする上で、フォトグラファー達はどれほど関与してるのか…。我々はその答えを求め、ある土曜の午後に表参道での突撃インタビューを試みた…。
インタビュー:Ryotaro Bordini Chikushi
フォト&アイデア:Jan Chipchase
作:ウレシカ
訳:ジュンコ
午前11時-各撮影隊はセッティングを開始する。チームの一人がベスト・ポジションを見つけている間、他のメンバーは、アンケートを準備するか、既に目の前の群衆のファッションに目を通している。太陽が容赦なく照りつける中、まずは、道端の木陰に隠れてターゲットを待つ、40代前半のカメラマンに声をかけてみる事にする…。

すみません!ストリート写真について、ちょっと質問させて頂きたいのですが?
う~ん…、今仕事中で、人を探し続けなければならないんです。急に中断しなきゃいけなくなっちゃうかもしれないですけど、それでも良ければどうぞ。
ありがとうございます! では、まず始めに、どんな雑誌の為の写真を撮影してるんですか?
ストリート撮影に関して言えば、女性向けの「Lady’s Bike」という雑誌のための写真で、個性的な服装で50cc以上のバイクに乗っている女性を撮影しています。
へぇ!…では、バイクで走っている女性を見つけたら、手を振って写真を撮らせてくれるように頼むんですか?それで上手くいきますか?
勿論、まずは安全第一を考えなければならないですよ。事故は絶対嫌ですから。協力的に止まってくれる人は多いですけど、元々、求めているターゲットの枠がかなりきついですからね… “表参道を流している、クールなバイクに乗った個性的な服装の若い女性”ってね…。

逆に、あなたの目に留まりたくて行ったり来たりするような人もいますか?
時々はね。それから、僕らが一人の女性を止めると、大抵、それほどイケてないバイクや平凡な服を来た友達が同伴していて、写真を撮られたがるんですよね。そんな時はどう言ったらよいか分からないですよ…。
レギュラーメンバーもいるんですか?
少しは。でも彼女たちのファッションは毎回違っているし、雑誌は月に一度の発行なので、誰も分からないと思いますよ。
良かったら、バッグの中を見せて頂けませんか?どんな機材を使ってるんですか?

ニコンのデジタル、色んな種類のレンズ、それからメモリーを山ほど…。
うわぁ!凄いですね!

この撮影のために、機材をカスタマイズしますか? それから、他に誰か手伝ってくれる人はいます?
チームのメンバーは3人ですよ。カメラマン、スタイリスト、それからアシスタント。沢山動き回るので、あまり多くの機材を持ち運ぶ事は出来ないですね。ストロボライトのために長いケーブルを使用する事もありますけど、通常は暗くなった後に撮影するのは無意味ですよ。
どうして? フラッシュを使ったり、東京のカラフルな灯りをバックに撮っても素敵な写真が撮れそうな気がしますけど…?
ストリート写真は、夜だとうまくいかないんですよ。 暗すぎて服の細かな部分が全く見えない事もあるし、黒いバイクなんかはほとんど見えません。それに、フラッシュを使うと、かなりフェイクな印象を与えちゃうんですよね…黒いバックグラウンドを作ってしまうお陰で、「ストリート」の感じが消えちゃうんですよ。

なるほど!これまでに、ストリート撮影で有名人やモデルに関わった事がありますか?
時々目にする事はありますが、撮影を頼んだりはしないですよ。彼女たちを撮影するには、まず所属事務所に連絡してギャラを支払わなければならないですから。万が一気づかずにモデルに声をかけた場合は、彼女達の方からすぐ警告してくれますよ。
(遠くを見て)すみません、他のメンバーが誰か見つけたみたいなので、もう行かなくちゃ…。
どうもありがとうございました!
通りを渡り、GAPの角へ移動。巨大な撮影クルー、無数の衣装の入った袋を持ったスタイリストと共に、プロのモデルの一群が見える。2メートル先にいる数々のストリートスナップのプロたちを目にしたら、こっちは、ただストリートスナップのように見えるだけ!
「ターゲット」が通りかかった時、クルー同士でバトルが勃発する事もあるのでは、と秘かに予想していた我々。…「あ、あれ!ピンクのクロコドレスに、珍しいバッグ、大きなグッチのサングラスの、あの女性!」…と思ったら、ハズレ!どのクルーも無反応。ラフォーレ原宿から表参道までずらっと並ぶ無数のクルー達は、自分たちが求めるスタイルを確実に知っているのだ…。

「熾烈な争いになりませんか?」我々は、行き交う人をチェックしている20代前半の3人組に声をかけてみた。「もの凄い数の撮影隊ですよね…。同じ人を巡って争う事もあるんじゃないですか?」
それはほとんど無いですね。勿論、実際皆が同じ人を撮ろうとする事もあるし、同じ人の写真が他の雑誌に出てるのを目にする事もありますけど、僕らの大部分は、それぞれ違ったターゲットを探してると思いますよ。
あなたが働いてるのはどんな雑誌なんですか?
僕らは、「FashionSnap」という、自分たちで運営してるウェブサイトのために撮影してるんです。ファッションセンスをテーマに、ストリートで撮った写真を載せてます。あらゆる種類の人の写真を撮りますよ…流行的も保守的も。僕らは、何がトレンディーなのかに関して格付けしたりはしません。ストリートのリアルなファッションを紹介して読者に沢山のオプションを与える事で、気に入った部分があればアドバイスとしてセンスを盗んで欲しいなって思ってます。
では、我々の写真を撮るというのは?その雑誌には不向きでしょうか?
う~ん…。撮影をする時には、僕らが後で混乱しないよう、どんな人にどのアンケートをお願いするか、アシスタントが前もって番号をつけてくれてるんですよね…。

なるほど!ちなみにどんな質問をするんですか?
名前、年齢、身長、服のサイズ、買い物に行くエリア、好きなブランド…そういった質問ですね。そういった情報は、読者が服を見つけに行くのを遥かに楽しくさせます。その人と同じ服を買いたいと思った場合には特にね。


ほとんどの撮影隊は、まずシンプルに「すみません!」と声をかけ、雑誌の名前を伝えることによって、道行く人の足を止める。名刺を渡す事もかなり効果的だが、概して、協力を得るのはいたって簡単なようだ。大きなカメラ達を見ればプロの撮影なのは一目瞭然。…ネガティブな経験をした事はあるのでしょうか?
一部の人は、オンラインマガジンって聞くと協力したくなくなるみたいですよ。彼らは単純にウェブを信用していなくて、写真が誤用されるのを恐れてるんですよね…。
ストリート撮影をしてどれくらいですか?そして、これまでの経験から、ストリート写真の今後をどんな風に考えてますか?
僕らは約1年前に始めました。今の日本では、まだまだ紙の雑誌が絶対的な影響力を持っていると思いますけど、無線LANが一般的になって、誰でもどこでもインターネットにつながるようになれば、僕らの様にあらゆるタイプのリアルなトレンドを伝える雑誌たちも、かなり力を持ってくると思いますよ。僕らの雑誌がブレイクする日も近いって確信してますよ!
頑張って!そして、ご協力ありがとう!

うだるような暑さに溶けていく我々の傍で、撮影隊たちは、忙しさと静けさのバランスを上手くとって、スムーズに流れに乗っているようだ。一人が「ストリートモデル」の撮影をしたりアンケートを埋めていたり休憩を取ってる間、もう一人は常に群集から目を離さない。
こんにちは、どんな雑誌のための撮影なんですか? 良かったら、ここに座ってお仕事の様子を見させてもらえませんか?
僕らは、「ChokiChoki」という、20歳の男の子をターゲットにした雑誌の撮影隊ですけど、多分、あと30分は僕らが求めてるような子は通らないんじゃないかと思いますよ。

パーフェクトな男の子がすぐには通らないって、どうしてそんなに自信を持って言えるんですか?今、午後3時…。一番人通りが激しい時間帯じゃないかと思うんですけど…?
そうなんですけどね…。でもやっぱり今ラーメン食べちゃった方がいいだろうな。
あそこにいる男の子はどう思います?
古過ぎっ!
じゃああの人は? ハハハ。
う~ん、違うな…。

少し休憩した後、「Street Jack」という16歳~26歳の男性向けの雑誌の撮影をしていた、よりプロっぽい感じの撮影隊にインタビューを試みた。
撮影機材の横にある、この緑色のバッグの中には何が入っているんですか?
あ、それは撮らないでくれますか?これは秘密なんですよ。 今日の撮影は靴のメーカーがスポンサーで、僕らは、目を引く男の子がいたら彼らにその靴を履いてもらって撮影してるんですよ。

「コレ!」っていうターゲットを見つけるのは難しいですか?それとも、撮影されたくて表参道を行ったり来たりする人って沢山います?
僕らの雑誌は有名なので、頼んだら8割の人はOKしてくれますよ。雑誌に載りたがってる人はかなり多いですけど、彼らの大部分は、ファッションで目を引きたいというよりは、顔に自信があるみたいですよ!
あなたの撮る写真は、どれくらい影響力を持ってると思いますか?
「Street Jack」は日本中どこでも買えるけど、僕らが撮影するのは渋谷と原宿です。だから、原宿が最もおしゃれなエリアと考えてる、例えば青森や九州にいる読者にとっては、僕らが紹介するファッションの与える影響はかなり大きいですよね。

では、最近何がキテます?もしくは、どんな新しいスタイルを予見してますか?
ファッションは6ヶ月毎に完全に変化するものです。…だからこそ、今後も常に僕らの仕事が尽きる事は無くならないはずですよ。
…次に我々は、1箇所からほとんど移動せず、とても忙しそうに働く撮影隊を見つけた。やや年配の、物凄くプロっぽい風貌のカメラマンで、他の撮影隊よりもクルーの人数も多いようだ(普通は3人)。
ストリート写真について、ちょっと質問させて頂きたいのですが…?
フィルムを交換してる間ならいいですよ。今物凄く忙しいんで。
何人のクルーで撮影されてるんですか?それから、通常どんな機材を使われてますか?
フォトグラファーの僕と、スタイリスト達、それからアンケート用紙を埋める二人の女の子、あと全体を監督するコーディネーター。通常はデジタルカメラを使ってます。沢山のイメージを取っておけるし、コストもかからないし。でも今日のこの写真撮影には巻きフィルムを使用してます。最終的にかなり大きなサイズまで伸ばすから。
良かったら雑誌の名前を教えて頂けますか?ファッション雑誌ですよね…?
「Love Photo」、カップルのための雑誌です。日本って最近色々上手くいってない感じなので、僕らは読者に希望と前向きな感情を与えられるように、心から愛し合ってるんだな~と感じられるカップルを探してるんですよ。

凄く面白いですね!どうやってそういうカップルにアプローチするんですか?彼らにどういう事をやってもらうんですか?
ただシンプルに、「お二人の幸せを僕らLove Photoのためにお裾分けしてくれませんか」って聞くんですよ。皆快諾してくれますよ。
それがアンケートですか?どんな質問をされるんですか?
至って普通の質問ですね。二人の趣味、出会ったきっかけ、付き合ってどのくらいか…。
ちいさな虚栄心のために、人ってどれくらいの情報を公開するんだろうって、興味深い…。
100メートル以内でこれほどバラエティに富んだ撮影隊に出会える事に驚きつつ、ふと、道の反対側で小さなカメラを手に撮影している一人のカメラマンに気がついた…。

すみません!どんなストリートファッション雑誌の撮影をされてるんですか?
僕は、単に自分自身のために撮ってるんですよ。アートとして…と言えるかな。もう何年も路上で人を捕まえて、写真展を開いて…そんな感じの事をやってます。
へぇ!どんな人を探してるんですか?
普通の人たちですよ。ぱっと見は退屈かもしれないけど、実はおもしろい詳細を含んでるという…。時々は、ちょっとしたインタビューもしますけど、僕がやってるのは人間研究が目的ですからね。群衆の中の人々…そして、彼らが見せる些細な人間くささ…。

ありがとうございました!暑いけど頑張って下さい。我々はもう限界…休息と冷たい飲み物を求めて撤収…。
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すごく楽しく読ませていただきました!
おもしろかったです。
Posted by: mano @ 9月24日2006年
関係者各位
お伺いしたいことがあります。
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makiko-nagata@superlovers.co.jp
宜しくお願い致します。
Posted by: 株式会社スーパーラヴァーズ @ 2月23日2007年
暑いからお体に触らないようにがんばってくださいね~。
Posted by: ゆーき @ 8月18日2009年