
街を歩いていると着物姿の娘さんが、から〜んころ〜ん♪カランコロンカラン♪と下駄を鳴らして通りを行く。その下駄から奏でられるカランコロンという音にどこかしら風情を感じ、酔わせられる。下駄は日本の伝統的な履物。見た目のデザインも奇抜でとても美しい。そんな日本独自のものに触れると、丁髷にしろ、着物にしろ、日本人の発想は凄いなぁと感心してしまう。
作:リョウコ
東京の浅草にある和装履物店「辻屋本店」。このお店は創業大正元年(1912年)からなる歴史深き老舗のお店で、現在ではご兄弟二人とその家族で営まれている。お店のお客さんは俳優から歌舞伎役者、老若男女と様々だそう。かつてはかの有名な川端康成、それに私の敬愛する文豪、永井荷風もよくこのお店に訪れていたそうだ。

宵の口の浅草

お店
生粋の江戸っ子だというお店のご主人は、江戸と履物の深い関わりについて、色々と話をして下さった。和装履物の商いについて言えば、下駄や草履を履く習慣は次第に遠くなっていったが、同時にその良さも見直されつつある。ここ数年の浴衣ブームでたくさんの女の子達が下駄を履くようになり、また若い男のお客さんも増えてきているそうだ。若い男のお客さんのファッションスタイルでは、下駄は和服に合わせるのではなくて、Tシャツやジーンズなどに合わせたりするらしい。

履きだおれの街、江戸
「大阪は食いだおれ」(食文化)、「京都は着だおれ」(着物の文化)というように、ここ東京は「江戸は履きだおれ」というくらい“履物”にこだわった文化が根付いている。この街の人々にとって履物はステータスだった。そのために、昔は足元を見て身分を判断されることが多かったそうだ。それ故、人々は履物にこだわりを持ち、細部まで気を配るようになった。例えば、鼻緒の柄や下駄の柾目などがあるが、その中でも特に履物の絵にはそのこだわりが反映されている。

下駄の絵の魅力が初めて発揮されるのは、脱いだ時。日本では家屋に上がる際、玄関で履物を脱ぐというのが習慣だ。履物を使用している時はその絵は隠れてしまって見えないが、脱いだ時にその絵は人々の目に留まる。ようするに、脱いだ時のことまで考えているところに、その人の履物に対する価値観が表れるのだ。

歌舞伎の定式幕と同じ色

千鳥柄の鼻緒

粋な配色

貝殻が貼付けられている。艶やか
また、“細部へのこだわり”という思想は、歴史とも深く結びついている。江戸時代には度々、倹約令(奢侈禁止令など)が出されていた。その倹約令とは衣食住の全てに渡って厳しく規制するものだった。その数々の規制がより一層、人々の細部に対する美意識を高めたともいえる。

鷹の絵

浮世絵が貼付けてある
下駄には流行がない。人の想いは「十人十色」というように、下駄はその人の好みで選ばれる。


こちらは履物の職人さん。手捌きが速い!

職人さんの道具

お店のショーケースに並べられているたくさんの履物

彩り鮮やかな鼻緒!
下駄の歴史を少し調べてみたので簡単に説明したい。下駄という履物が生み出されたのは太古の昔。弥生時代よりもっとっもっと前の時代に田下駄がすでに出土していた。
労働で使われた下駄
江戸時代になると漆塗りや表付きのものなども作られ、天候により履き分けられるようになる。この時代、身分の高い者だけが下駄の使用を許されていた。下駄が庶民の履物になったのは明治に入ってからである。それから、昭和初期ぐらいまでは一般家庭の9割以上に下駄はあった。しかし、生活スタイルや道路状況の変化とともに、下駄を履く習慣が薄れていったようだ。
江戸時代の下駄
他にも色んな種類の下駄!


時雨(しぐれ)下駄。雨の日用

角下駄。このお店では三味線下駄と呼ぶそうだ


子供の下駄(男の子用)

子供の下駄(女の子用)。可愛らしい
至極当然のことだが、日本であっても土地によっては文化や思想が、その土地の環境によって異なる。京都で生まれ育った私にとっては、京都の風土で培われた考えが方が中心であるがために、このような江戸の文化に触れると、その都度驚かされて、自分の知識、思考の稚拙さを実感する。今日では時代の流れとともに、日本の文化が衰退しつつある。そんな中、少しでも、先祖達が残してくれた“日本のよきもの達”また、自分たちの生まれ育った街を誇りに思う気持ちを私たちに伝えようとするこのお店の人々の心に私は胸を打たれた。
辻屋本店の皆さん、ご協力して頂き本当にありがとうございました!皆さんも時々下駄を鳴らして近所を散歩してみてはいかがでしょうか?こちらでもまだ色々な下駄が見られます!Flickr Gallery
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