フォトグラファー、川内倫子への10の質問

2006年8月11日 カテゴリー: インターナショナル, フォトグラフィー, 特集

フォトグラファー、川内倫子への10の質問

日本人の女性フォトグラファーの中で、現在最も有名な川内倫子(かわうち・りんこ)は、「うたたね」「花火」「花子」の3部作を同時刊行した2001年、第27回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現代写真界において一大センセーションを巻き起こした。更にその後も「AILA」「the eyes, the ears,」「Cui Cui」の三冊を発表し世間を驚かせた彼女は、日本の若者達の心を捉えただけでなく、ロンドンでさえも注目のフォトグラファーとして話題となっている。今月9日まで行われていたフォトグラファーズ・ギャラリーの彼女の個展で、私はそんな彼女と直接会えるという素晴らしい機会に恵まれた。

インタビュー:マヤリーナ

ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで行われた川内倫子の展覧会の様子。沢山の人が来場した。

作品はプレキシ・フレームで展示された。フレームの中から写真が飛び出して、その中へ引き込まれそうな不思議な感覚。

1. 川内さんの作品を見ていると、静寂の世界へ引き込まれていく感じがします。川内さんのカメラは日々の生活の中の詳細を捉え、平凡な物を非凡な物に変化させ、周囲に詩的なリズムをもたらしますよね。作品やモチベーションについてのお話をお伺いする前に、どんなカメラを使われているのかを伺ってもよいでしょうか?

私はローライフレックスを一番良く愛用しています。理由は、レンズの柔らかさだったり、手に持った時の感触だったり、シャッターを押した時の音だったり、全てが自分にものすごくしっくりくるからです。全然違和感が無いんですよ。でも普通にコンパクトカメラを使うときもあります。コンパクトカメラでしか撮れないものもありますから。色々な物に何かを感じてシャッターを押す瞬間が好きです。

2. プリントへのこだわりはありますか?例えば、よく四角いフォーマットの写真を撮られているようですが、それは何故でしょうか?

なぜ四角かと言うと、自分の持っているローライフレックスというカメラが、6×6のフォーマットなんです。撮っている時に6×6の目線で見ているので、トリミングが生理的に気持ち悪いんですよね。同時に、横にも縦にも無い世界が凄く好きなんですよ。どっちにも引っ張られていないっていうのは、どこかでニュートラルな世界だと思いますし。

ビーズのようなフクロウの目は、一度見ると忘れられない…。

3. 写真の何がそんなに好きなのですか?

私にとって写真は、最初から違和感がなかったんです。また、自分は写真を撮ることとすごく相性がいいんですよね…“瞬間を切り取ること”がすごく好きなんだと思います。写真を撮ることってどこかで狩猟本能を満たしてくれて、満足感を与えてくれるんですよ。例えば買い物もそうだと思うんですけど、“獲得する”っていう感じがすごく心地よい作業で、帰ってきてプリントするのが料理することと近い感じなんです。その一連の作業の全てが、日常の中でもすごく大事な作業なんです。

4. 川内さんはアート作品と商業作品の両方を撮られていますが、その二種類の作品の関係、またその二つをどうのようにこなしているのかお話して頂けますか?

最初はとことん色々な雑誌とかコマーシャルを擦り切れるほどやっていて、マネージャーの竹井さんからは、カメラマンという仕事をするよりも作品に時間を使った方がいいという意見をもらっていました。でも、難しいんですよ。じゃあ依頼された仕事を全くしなければいいかっていうとそうでもなく、かといってやりすぎでも良くないし…。

写真集「AILA」より

例えばフォトグラファーズ・ギャラリーの展覧会は、仕事の依頼撮影と併走して作ったものです。今考えても、仕事と同時進行してあれだけの量の作品を作れたのは、良かったと思いますね。でも逆に、時間があるから作品に集中しろと言われて出来るかというと、すごく微妙なんですよね。だから私にとってのカメラマンの仕事と作品の仕事の関係は、バランスをみながら連動しているのがいいみたいです。

5. ホームページの「りんこ日記」用に、携帯電話のカメラでも写真を撮られるそうですね。プロの写真家が携帯で撮った写真を一般に公開するということが、すごく面白いと思うのですが、携帯の写真と「りんこ日記」について少しお話しして頂けますか?

携帯で毎日写真を撮るというのは、なかなか面白いと思ったんですよ。携帯のカメラだし、日記だから、あえて作品性を強くしないで撮ろうと思って。

「りんこ日記」より。これが携帯電話のカメラで撮られたなんて…!

日記を始めた理由は毎日する決まり事を持ちたかったんです。しかもそれがプライベートのためだけだと続かないんですよ。自分だけでくるくる回っていても結局一緒だから、インターネットで発表するのが、ライブ感もあっていいと思ったんです。自分の精神バランスを保つのにもそうする事がいい役割を果たしているような気がします

6. この日記は書籍として発売されるそうですね。すでに6冊の素晴らしい写真集も発表していらっしゃいますが、書籍として作品を発表される機会が多いように思われます。そのきっかけは何だったのでしょうか?何かにインスパイアされたりしたのでしょうか?

初めて自分の写真集を出してくれたのがリトルモア時代の竹井さんだったんです。一度に三冊の本を、しかも写真集を出版するっていうのは本当はあり得ないんですが、やってくれたんですよね。それがきっかけです。

2001年に同時発売された写真集は、現代写真界において一大センセーションを巻き起こした。

最新の写真集「Cui Cui」から。13年以上も撮り続けた家族のアルバム。親密な家族の時間を写し出している。

小さい時から、本は友達みたいな感じでした。自分の将来の夢は、何かは分からなけど自分の名前で本を出すことだって高校の時に言っていましたね。

7. 本というフォーマットの何に惹かれるのでしょうか?

例えば映画とかテレビは、向こうから時間を与えられるでしょう?そこから動くことはだめじゃないですか。でも本は持って歩けるし、好きなページはずっと見ていられる。だから、自分が読んでいる本を、他の人と一緒に読むのが嫌いなんですよね。例えば小学生の時に、少年ジャンプが大好きだったんですが、私の横でお兄ちゃんにのぞかれるのが、すごく嫌だったんです。私とドラゴンボールの関係を邪魔しないで!って(笑)。この親密な世界を誰にも邪魔されたくないっていうのがすごく好きだったから。私は本に救われて来たから、自分が本を作る仕事ができて嬉しいです。

私が集めた川内倫子の写真集。サイン入りのものも。

8. 川内さんの写真集はすごくストーリー性が強いというか、好奇心を掻き立てられますし、見る人に沢山のことを想像させますよね。写真集の構成はどのように決めているのですか?また、そのような流れはどのように生み出されるのでしょうか?

それは、自分と会話をしていくんですよ。具体的に言うと、まず自分の最近撮った物とかを全部プリントしますよね。それを家の床とかに並べてみるんです。最初に一枚選んでその後は、連想ゲームみたいに選んでいくんです。だから、自分の中で「この横はこれしか無い。でも、これとこれは出来過ぎだな」と感じれば省いてしまう。やっぱり発見ですよね。写真って発見の連続なんです。撮る時に「あ、面白い」っていう発見がある。プリントする時にも、「気がつかなかったけど、これって面白いな」っていう発見があるんです。


フォトグラファーズ・ギャラリーの展示で左右に並べられた作品。

接触!

9. 自分の感受性というのは、どういう風に生まれたとお思いですか?

「子供の視線みたい」という事は言われます。蟻が砂糖に群がっているのとか、雨宿りしてる時にカタツムリをじっと見たりとか。そういう感覚って、子供の時にあるじゃないですか。それと寸分変わらない感覚です。

囁いているような小さい言葉が好きなんですよ。そういう世界の方に、自分は救われている部分があると思います。渋谷を歩いていても、ちょっと咲いてる花に駆け寄ったり。そっちの方に自分はほっとするんですが、それは普通の感受性だと思いますよ。自分が住んでいる世界は、道端の草だけではなくて、色々な物で構成されて成り立っている訳だから、もちろん他の写真も撮ります。ただ花ばかりを並べても面白くないんです。バランス感覚みたいなところで自分は世の中を渡っているし、作品にもそれが現れていると思います。

葉についた小さなまゆ

10. 最後に次のプロジェクトについてお話を聞かせて頂けますか?現在、ブラジルでの展覧会の準備に取りかかっているとお聞きしましたが。

来年の7月にブラジルのミュージアムで展覧会が決まっていまして、そのための撮り下ろしに今年の2月にブラジルに行ったんです。サンパウロ近代美術館のオーナーがブラジルを撮ってみませんか、と言ってくれて。彼女の提案が、“日本から移民した人の歴史”だったので、日本人の移民の歴史を勉強しに行きました。もう一度、夏に撮りに行って、一冊にまとめようと思っています。


ロンドンのフォトグラファーズ・ギャラリーで行われた写真集のサイン会の様子

川内倫子とマネージャーで出版者でもある竹井氏。

川内倫子は大学でグラフィックデザインを専攻していた。彼女の写真家としてのキャリアの始まりは、週一度の写真の授業だった。彼女が追い求め決断したことは、間違いではなかったようだ。沢山の作品を生み出すその力は本当に素晴らしく、そしてそこから励まされることも数えきれない。若くしてこの驚くべき才能を持つフォトグラファー、川内倫子は本当に素晴らしい人だった。

今日は、沢山の素敵なお話を聞かせてくれて、有り難うございました!

2 コメント

  1. 6月にロンドンへ行った際、フォトグラファーズ・ギャラリーにて拝見させて頂きました。(6月20日)

    奥の部屋にて川内さんのご家族の写真を見ていて、「心が浄化される」感想を持ちました。また自分の田舎にいる両親、風景、地元の葬式の様子も照らし合わせられて、本当に癒しを受けました。親の死など、避けては通れないヘビーな事も真正面から捉えられていて、見て良かったというのが正直な気持ちです。
    私は単なる旅行者でしたが、ロンドン滞在最終日にあのような作品を見られて本当に光栄でした。
    これからも素晴らしい目を持ち続ける写真家でいて下さい。

    Posted by: Mari Iwase @ 8月15日2006年

  2. [...] 补充一些关于川内伦子的资料,翻译于日本pingmag网站,因为是个人花了一定的时间翻译的,如果想转载的朋友请标明出处。 [...]

    Posted by: 假如我们的语言是威士忌 » Blog Archive » 川内伦子 @ 1月8日2009年

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