
15年前に設立されたイギリスの「SHOTS」は、広告代理店と映像クリエイターを結ぶ、いわば“架け橋”的存在。同名の隔月刊誌では、世界中から集めた最新のテレビCMやミュージックビデオなどを紹介し、毎号世界4万人以上にものぼる映像業界のプロ達に広告業界一早い情報と幅広いインスピレーションを与えている。そのSHOTSが先週金曜、六本木のスーパーデラックスにてラウンジ・パーティー「SHOTS in Tokyo」を開催。東京中の映像業界関係者が集まる中、SHOTSのリンディ・スタウト編集長を迎え、リリースされたばかりのDVD「アドベンチャーズ・イン・アニメーション」から素晴らしい映像作品の数々を上映した。
作:チエミ
協力:Hybrid、西田香織

まずは簡単にSHOTSの活動内容を紹介しよう。SHOTSは、雑誌、DVD、ウェブという3つのメディアをベースに、世界中から集められた最新の映像作品を紹介している。応募されてくる作品数は、2ヶ月でおよそ1000本。その中から優れたミュージックビデオ、ショート・フィルム、TVコマーシャルなどが選ばれる。
SHOTS マガジン
一般の書店ではほとんど販売されていないSHOTSマガジンは、新作の批評、クリエイターのインタビュー、地域にフォーカスした特集記事など、映像業界関係者にとっては貴重な情報が満載。DVDと合わせると年間およそ14万円というかなり高価な物ながらも、その情報の豊富さ、早さから多くの映像関係者が定期購読している。また、年に一回「SHOTS DIRECTORY」という15年間分(!)の監督/プロダクション会社の連絡先を集めた映像業界便利帳のようなものも出版している。
SHOTS DVD
毎回80本あまりの作品を紹介するSHOTS DVDでは、応募されてきた作品はもちろんのこと、メイキング映像やディレクターの紹介、過去の名作、各国フェスティバルの受賞作、貴重なフルバージョンのミュージック・ビデオなどが紹介されている。ちなみに今回イベントで上映された「アドベンチャーズ・イン・アニメーション」は、半年に一度発売されるブックレット付き特集DVDの最新版(今回のみ2枚組)。
SHOTS オンライン
SHOTS.netの名前で知られるSHOTSオンラインは、ピックアップされた最新の映像作品の紹介や、映像関係のニュースの発信を行っている。こちらも雑誌やDVDと同様に定期購読が可能で、購入すると1990年以降に製作された5,000本以上(!)の作品をオンラインで見られるほか、監督/プロダクション会社などの連絡先が検索できる。

隔月刊のSHOTSマガジン。今回の表紙は、野田凪監督によるコカ・コーラのCM。

SHOTS オンライン。アーカイブの情報量はかなりのもの。
SHOTSが日本に本格的に上陸したのは、およそ3年前。活動のベースとしている3つのメディア同様、年に一回の“パーティー”という形で、新作の紹介や映像関係者の交流を図っている。今年は、東京の他に静岡でもSHOTS編集長のリンディ・スタウトさんが広告関係者を対象に「広告の現在」についてのトークショーを行った。
それでは、DVD「アドベンチャーズ・イン・アニメーション」の中から、今回「SHOTS in Tokyo」で上映されたいくつかの作品を紹介しよう。
まずは、MTV HD用のCM「Crow」から。アメリカの映像チーム、サイヨップから届けられたこのモノクロの作品は、一言、シンプルで美しい!真っ白な背景に飛び交う黒いカラスの群れ…。カラスがこんなにも美しい生き物だったなんて!こちらの作品はサイヨップのサイトより視聴可能。(コチラ)

SuezのCM「When A City Comes To Life」を制作したアントワ・バルドー・ジャケは、現在国際的なプロダクション会社パルチザンに所属するフランス出身の監督。作り方によっては容易に退屈になってしまいそうな、電気、ガス、水道の管理会社のCMを、素晴らしい創造力で美しく仕上げた作品。電気やガスがあるから街は生き生きと輝く、というメッセージが映像からよく伝わってくる。


STARDUSTのJake Banksによるボンベイ・サファイヤのCM「Step in Blue」

+Cruz/W+K Tokyo LabによるDJ Uppercutのミュージックビデオ「What You Standin For?」
前回のCMでサイヨップを起用し、クリエイターに自由を与えるクライアントとして知られるボンベイ・サファイヤからは、Windows XPのCMで注目を集めたSTARDUSTのJake Banksによる新作が登場。上のショットからも分かるように、Windows XPのCM同様、絶妙なバランスでミックスされた実写とアニメーションが印象的な作品。
+CruzとW+K Tokyo LabによるDJ Uppercutのミュージック・ビデオは、以前PingMagでも紹介した澁谷忠臣のイラストをフィーチャーした作品。澁谷独特の“オブジェクトを直線で再構築する”という変わった表現方法が、このミュージックビデオを印象深くさせていた。

Olivier GondryによるThe Vinesのミュージックビデオ「Any Sound」

Ben Hibon / Blinkincによるショート「Code Hunters」
The Vinesのミュージックビデオ「Any Sound」を手がけたのは、ミシェル・ゴンドリーの弟であるオリビエ・ゴンドリー。クレイ・アニメーションで作られているこの作品では、メンバーの動きとかなり微妙な表情が面白い。ユーモアのセンスは、兄譲り?
「Code Hunters」は、スイス出身のベン・ヒボン監督がMTVの依頼により制作した作品。8ヶ月という時間をかけただけあり、その表現方法、ストーリーはかなり出来映え。ちなみに本人のウェブサイトより視聴可能なので、興味のある方はコチラへ。

Pierre Ducos & Bertrand Bey (Supinfocom)によるショート「True Color」

Fabrice le Nezet, Mattieu Goutte, Benjamin Mousquet (Supinfocom)によるショート「Dynamo」

Patrick Harboun, Ronan Le Fur, Joaquim Montserrat (Supinfocom)によるショート「Fin d’ete」

Tomek Baginskiによるショート「Fallen Art」
「True Color」「Dynamo」「Fin d’ete」の3作品は、驚くべきことに全て同じ学校の卒業生や在学中の生徒によって作られている。北フランスの小さな街にあるスピンフォコムは、優秀なクリエイターを数多く輩出するアニメーション学校。その作品の完成度の高さは、ぜひ自分の目で確認して欲しい!(「Fin d’ete」の視聴はコチラから)
そして最後に紹介するのは、素晴らしい光感をショート・アニメーション「Fallen Art」で表現したポーランドの若手監督トメック・バギンスキ。RESFESTやショート・ショーツ・フィルム・フェスティバルでも紹介されたこの作品によって、近年注目されているポーランドの映像技術の高さが証明されたと言ってもいいだろう。

SHOTSの日本事務局Hybridのアンディ・トーマスさんと高橋流美さんが進行役を勤めた
進行役であるHybridのアンディ・トーマスさんによれば、近年ではクライアントの為の商業的な作品では満足出来ない監督達が「もっと面白い作品を作りたい!」とパーソナル・ワークでその創造力を発揮し、それがより大きなクライアントや、作り手に自由な発想を与えるクライアントへの仕事と結びつくケースも多いそう。クライアントに泣かされることの多い日本の監督達には、ちょっと嬉しい話かもしれない。
では最後に、編集長のリンディ・スタウトさんより素晴らしいお知らせ。
「2007年の1月号(2006年11/28発売)は、いよいよ日本の特集です。ここ日本には才能溢れるクリエイターの皆さんが沢山いることを知っています。ミュージックビデオ、テレビCM、ショートフィルム、仕事で作った作品、プライベートで作った作品、何でも構いません。あなたの素晴らしい作品をまずはDVDでSHOTSに送って下さい。そしてその作品を世界に紹介させて下さい。締切りは10月上旬です。沢山のご応募を心よりお待ちしています!」
日本の映像クリエイターの皆さん、この機会にSHOTSと一緒に世界へ羽ばたく一歩を踏み出してみてはどうでしょうか?
(応募の詳細は日本事務局のHybrid、又はSHOTSにご確認下さい)
2 コメント
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Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年