
シリ・ズィンは、正に自力で自らの道を切り開いた女性である。2000年、彼女がロンドンの名声あるファッション学校セント・マーティンを卒業した際、プレスは彼女の作品に仰天した。なんと彼女が作りあげたのは、思いつく限りの最高の素材を用いた、女性専用セックス・トイのコレクションだったのだ。例えば、ヘビ革、水晶、スワロフスキーのクリスタル、羽、毛皮、シルバーなど…。彼女のトイが予想外に“受け入れられた”事を受け、シリは、思い切ってマーケットに飛び込んだ。現在、彼女の製品は、ケイト・モスやベイビー・スパイスのような有名人の間で、まるでホットケーキのように売れまくり、ファッションアクセサリーの“マスト・アイテム”にさえなっているのだ。
今回、どうやってこのような難しい世界で成功したのか、なぜ女性として最高級セックストイをデザインする事にしたのか、そして、“デザイナーセックス”の世界は現在どう発展しているのか話を聞いた。
インタビュー:ウレシカ
訳:ジュンコ
最新の作品が、つい先日「婦人の寝室インスタレーション」の一部として「セリュックス」(ルイ・ヴィトン表参道のペントハウスにある、高級会員制クラブ)にて展示されましたね。ハイファッション・ハイクラスをリードするという点において、ルイヴィトンのようなブランドから声がかかるなんて、それ以上嬉しい事はないですよね!
でも、ブランディングについてお聞きする前に、全ての始まりは何だったのか、簡単に説明して頂けますか?一体なぜ、セックス・トイをデザインしようなんて思いついたんでしょう?
それは単に、この業界に力を持ったデザイナーがいなかったからよ。これまで、論議を呼んだ製品を沢山作ったけど、私の師匠のナオミ・フィルマー(シェリー・フォックス、フセイン・チャラヤンのショーのジュエリー・デザイナー)は、私の水晶製コケシを見て、私にコレクションを制作するように勧めたわ。
そんな頃に、プレスが来たの。皆、この名門校で「誰かがセックス・トイを作ってるらしい」って聞いてショックを受けて来るんだけど、実際に見たら、私の作品は、みすぼらしくて安いものなんかじゃなくて、逆に、よくデザインされた、立派なアクセサリーなんだって事を分かってくれたみたい。それが全ての始まり。それから、ボンベイ・サファイア・グラス・アワードのトップ10グラス・デザイナーに選ばれて展覧会で巡回したり、国際エロティック・アワードなんていう賞ももらったわ。でも、新しいマーケットを形作ったとはいえ、正直、その世界に真剣に飛び込むとも、製品を作るとも思ってなかったのよ。…そもそも、最初のアイディアなんて、バカンスで行った南仏でふと思いついただけでね、セレブが私のセックス・トイに飛びつくなんて、思ってもいなかったわよ。
…まさか、箱いっぱいのコケシを手に、セントロペでセレブに「これ欲しいですか?」って聞いたんじゃないですよね?
まあ、実際そんな感じ!モンテカルロにいるデキる実業家の友達がね、私たちがいつも一緒に飲みに行くお店で、リッチな人たちに作品を見せてみたらって言ったの。考えてみた結果、全財産をつぎ込んで、30~40個の作品を作ったわ。一つ作るのに相当お金がかかるのよ。それから、私はセントロペの路地にある友達のブティックで選んだきれいな服を着て歩いたのよ…私のトイを持ってね!実際、皆がそれを欲しがってね、2000ユーロで売れたわ。その時気づいたの。「ワオ!これイケルかも!」ってね。

「ココ・デ・メール」(ボディ・ショップのアニータ・ロディックの娘、サムによる最もロマンチック且つ官能的でハイ・クラスなエロティック・ショップ)は、最初にあなたの製品を支持して販売してくれたショップの一つですよね。ココ・デ・メールとのコネクションはなんだったんですか?

ココ・デ・メールは本当に素晴らしいお店よ。正に、私の「母艦」って感じ。私の名前を広めて、100パーセント支えてくれた。サム・ロディックは、マイラが店をオープンしたのと同じ頃、身体の感覚を探検することへの強いコンセプトを基にこの店をオープンしたの。この二つのブランドは、どっちも“女性による女性のための”お店で、セクシュアリティと快楽のデザインに対する斬新な見方を創り上げたと思うわ。彼らは、世間の一般的な認識と製品のチョイスに関して、物凄い変化をもたらしたと思う。
ココ・デ・メールは、この産業の皆がしようとしている事のコンパスの役割を果たしたし、その哲学は、セクシュアリティを恥じて避けたりしない点で、マイラと本質的に違う哲学を持っているのよ。彼らは、製品をそこに当たり前にあるものに思えるようにしたのよね。例えば楽しくて、美しいセックス・オブジェクトとして。マイラの製品は、セックスとセックスを刺激するようなものからかけ離れた感じ…実際セックス・トイには見えないくて、家のどこにでも置けそうなものなの。でもそれって、彼らは「セックス」って物を、やっぱり何か隠されるべきもの、恥ずべきものだって考えているって事よね。それは私の哲学とは全く違うのよ。
マイラは、新鮮な見解の元、トム・ディクソンやマーク・ニューソンのような著名デザイナーにセックス・トイをデザインしてもらいましたが、彼らのトイについてどう思いますか?それから、自身の製品と比べてどう見ていますか?
そうね、彼らのは“デザイナー・セックス”のコンセプト、…うーん、多分ここでは私も一緒にくくられちゃうんだと思うけど、でも実は私がしようとしている事は、もっと直球なのよ。マイラのためにデザインされたトイは、モダン・デザインの名の下に、そう見えないよう、挑発的な部分を角に隠したものよね。
でも、マイラと彼らのプレスはとっても素晴らしいし、彼らが製品を売り出した方法は、この業界に大きな変化をもたらしたわよね。それは、後に続く人のために道筋を作ったと言えるわ。
私は、芸術、高級感、ディテールにこだわったデザインを本当に大切にしたいと思ってるの。それって、この業界では完全に無視されたものでしょ。官能的なロマンスを求めつつ、私はデザインに情熱を注いだってわけ。

私には、女性のオーガズムのような神秘的な事に関する製品を、男性がどうしてそうも強い自信を持ってデザイン出来るのかが理解出来ないんですよね。トム・ディクソンの黒い「ボーン」と、あなたのピンクの「ミンクス」は、完全に異なった物に見えますし…。
多分、女性は、何が女性に火をつけるのを理解しているのよ。いくつかのデザインは、女性がセクシュアリティを恐れたり恥じたりしているって事実を意識したり、むしろ操る傾向があると思うの。その点においては…一人の女性として、私は女性がそれを誇りに思えたり、恥ずべきものではないと思えるようにしていきたいって強く思ってるわ。
私の製品、実際、完璧クレイジーなデザインよね!男根がピンクのアイスクリームでコーティングされてるみたいだもん!(笑)でもね、私は、芸術性を重視してるし、魅惑的で、アクセサリーのようでもあり、セックス・アピールも何もかもオープンにして、デザイナーの作品として受け入れられるようなポイントまで持っていったつもり。みんな、可笑しなこじつけを持ったポップ・カルチャーの一つとして受け入れてくれたわ。

デザインが素晴らしかったら、誰がどこに持って行っても良いと思うの。要は、どう物をデザインするかだから、そういった境界線を動かすことだって可能なのよ。それは、そのものが何であるかに尻ごみしたりとか、消費者に受け入れられやすいものにすることとは違うの。
あなたのトイの形やデザインはどうやって選ぶんですか?そこにはどんなコンセプトが?
伝統的なものに関して、沢山リサーチをしたの。私が採用した材料の全ては、とっても高品質で非毒性なのよ。それに、技法は基本的にシンプルなの。快楽デザインにおいては、ロマンスや、心地よい使用のイメージをかきたてる雰囲気って重要な部分だから、それはただ単に物であるだけではなく、それに伴う魅惑と幻想が大事なのよね。
実は、業界に良いデザインが無かったっていう点とは別に、私がセックス・ブランドを立ち上げると決めた大きな理由は、私には深刻な性的障害があったということだったの。それで私は、タントラの司教の所へ行ったんだけど、その時に彼は私の上でクリスタルを使用したわ。それが私の障害を取り除いてくれたの。だから私は水晶のコケシをデザインし始めたんだけど、この限定版は、今や、ココ・デ・メールの私のコレクションではベストセラーよ!
私の作品は、デザインにおいて浅薄に見えるかもしれないけど、実は違うの。それは実際深い所から来ているってわけ!私は、セックスブランドをデザインするって事は、そこには経験や学んだ事、真の意欲が隠されていなければって思う。


最初にヒットしたセレブリティ・トイは、ひとつ£1000するピンクと赤のガラス製コケシでしたよね。このセレブを意識した物の次に、「ミンクス」という名のバイブレーターを作りました(約240ユーロ。オリジナル・デザインを、バイブレーター版として大量生産化したもの)。バイブレーター市場は巨大で、ラビットのような製品はすごい勢いで売れますよね。特にセックス・アンド・ザ・シティなんかでも強くプッシュされてましたし。良いバイブレーターを製作するという事において、何が大切だと思いますか?
一般的にバイブレーターを作る会社って、社員が皆男性で、男性は技術にフォーカスしたがるもの。でも本当は、豪華で、美しくて、官能的である事の方が、技術よりも重要なのよ。女性として女性のオルガスムがどういうものかが知っているし、基本的に必要なのは、ただ、強く且つ緩やかなモーター・スピードなんだっていう事も知ってるわ。できるだけ静かでね。とにかく、それは至ってシンプルな事で、シンプル・イズ・ベスト!と思ってる。
「ラビット」は、実はとっても複雑なんだけど、衛生的では無いし、みすぼらしくて安っぽく見えるわ。でも、3回のオルガスムを得られる素晴らしい製品なのよ。私のメーカーの工場に入ったら、ラビットのためだけに使われる1つの部屋があるのよ。実はそこはとにかく凄い毒性の匂いがするの! メーカーは「法的な限界の範囲内です」って言うんだけど。信じられる!?彼らは“法的に可能な範囲の”毒性を保ってるんだって!それでも、どうしてココ・デ・メールはそれを売るのかしら!
私にとって、技術は品質ほど重要ではないの。材料、芸術性、イメージ、それからそれがユーザに実際に与えるオルガスムの品質の方がずっと大切。私の作品は、ロマンチックな“バイブレーター初心者”のため、もしくは、あらゆるタイプのバイブレーターを持っているけど、気分転換に美しい物も欲しい人なって思った人のためにデザインされてる。まず第一に、それはグッチの靴やプラダのバッグのように誇りに思えるものなのよ。
あなたの製品は、本当に綺麗ですよね。アイディアはどこから得ているんですか?
ほとんどは考古学やアンティークからよ。例えば日本では、14世紀~18世紀にかけての、こういう美しいエロティックな印刷物があるのよ。これには、私、凄く刺激を受けたわ。それから、最初に両頭コケシの存在が記述されたのは、紀元前6世紀の古代エジプトでね、私のデザインした両頭コケシはそれに刺激されて作られたの。£1000で、真ん中に60個のスワロフスキーがほどこされていて、手作りのアクアブルーのガラスで…ほんと豪華よ。

ハンドルに60個のスワロフスキーがついた限定バーション「Double Ended Molten Crystal Piece」(£1000) Design and Copyright by Shiri Zinn
何人の人が実際に製造プロセスに関わっているんですか?それから、超高級の製品と、安めの製品の製作では、どんな違いがありますか?
高級なクチュール・グラス&クリスタル・コレクションに関して言えば、だいたい8~10人の人が3つの小さいスタジオで働いてるかな。私は、ロールスロイスの先端の像やモンテカルロ・グランプリのトロフィーを作るような人たちや、デビアスのトロフィーにダイヤを付ける職人…なんていう人ともコラボレートするのよ。で、その次に大量生産バージョンのために、中国で同様の品質を得ようと頑張るわけ。…ふ~!それは正直人生最悪の経験だったけど(笑)。
この業界では、簡単に大金を稼いだもの、例えばラビットみたいなものに対して、常に壁があるものよ。ま、大抵それは、念頭に女性の喜びのイデオロギーを気にもかけない男性によって行われるんだけどね。ディテールや品質にこだわった製品作りを目指したり、バイブレーターに使われる通常のモーターに満足していなかったり、手作りで宝石のような仕上がりを求めてる…こんな理想を持っていると、死ぬほどの苦労を伴うのよ。でも、ひとつ気づいたの。口喧しく言うパワーって、女性が持っている最も強いパワーだって!中国ではね、この分野において私のメーカーは2番目に大きいの。つまり、そこまで行くには、彼らに口喧しく言う私のパワーは他の誰よりも強かったってわけ(笑)! これこそ、私がどうやって満足いく製品を手に入れたかね。
あなたの製品を買うほとんどの人が、ためらわずにすぐ使うと思います?つまり、私自身も、この業界の思い切った変化を見るのをとっても嬉しく思いますが、そこにはまだまだ多くのタブーがあると思うんですよね。(正直、どれくらい多くの読者が、この記事でショックを受けるか、分かりませんし…)あなたの作ったような製品が、実際に、女性自身、もしくはカップルの性行動に影響を及ぼすことができると思いますか?
もし、製品の批評を書きたいって思ってくれるなら、喜んで一つ送るわよ?私はね、この素敵な製品の品質を心から分かってもらいたいと願っているの。手にしてみると、凄く重厚感があって、全体がジュエリーのような仕上がりだし、ディテールにもこだわっているし、取り外し可能な毛皮や羽のしっぽがついてるのよ。それに、彫刻されたスタンドと、私自身が一人で半年を費やして作りあげた、物凄く強靭なモーターが使われてるの(製作サイドに、振動数レベルでは無くて頻度のレベルを上げたいと伝えるのに本当に苦労したのよ!)。そうすれば、また違ったオーガズムが加えられるかもしれないの…。

それから、箱。…高級であろうと無かろうと、ほとんどのパッケージって、まだまだボール紙で作られてるわよね。多分、サテンのラインが入ったヘビ皮の箱を作ったのなんて、私くらいじゃないかな。私は、箱一つであっても絶対妥協しないわよ。全て私のイメージ通りになるまで、工場間でトラックを往復させ続けるし。その分、二倍のコストをかけてもね!なぜって?だって、私の製品が世界のどこかの女性の手に取られたとき、それは100%完璧な製品であって欲しいと思うからよ。
私は品質に関しては、尋常じゃないくらい神経質なの。だって、それは私が何より信じている事だから。品質っていうと、それはロマンティックではないかもしれないけど、でもそれって、技術よりももっと大事な何かだと思うのよ。
うーん、何て言ったら良いのか…。(製品を送ってくれるという)あなたの申し出は魅力的ですが(赤面)、ともかく、丁寧なお答えありがとうございました。知らない世界の話、新鮮で本当に興味深かったです!
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[...] あれから何年かが過ぎ、エロティック市場全体は、女性に向けても本当にオープンになった。「セックス・アンド・ザ・シティ」はセックス・トイに対する一般的な認識を大きく変え、Coco de Merのようなブランドが「寝室アートのための道具」を提供し、Mylaが、トム・ディクソンやマーク・ニューソンのような著名なクリエーターをセックス・トイのデザイン界に巻き込み、全てが完全に受け入れられるようになった。…って、本当だろうか??本当だとしたら、実際、どれくらい変わったのか。呼び名が「エロティック・ブティック」と変わろうが変わるまいが、気軽にセックス・ショップに入れない女性は未だ少なくはないだろう。もっと豊かに性生活を楽しみたいと思いながらも、シリ・ズィンの製品を使ってみる勇気までは持てない女性は多いはずだ。…それに、パートナーがRabbitバイブレーターに夢中になっているのを見て自信を失くす男性はいないのだろうか?セックス・トイは、実際、セックスライフをどれほど高めてくれるんだろう?そこには、まだ欠けている大事な何かがあるのではないのか…。 [...]
Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » 感覚と官能についてのインタビュー @ 9月24日2006年
とても面白い記事でした。私もスカーレット・アモールとゆう素敵なブランドを見つけました。www.scarletamour.com
Posted by: アキコ @ 12月22日2006年
シリ・ズィン: 最高級なセックス・トイのデザイン good post1028
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年