ジョイスティック名人への10の質問

2006年7月12日 カテゴリー: テクノロジー, プロダクト, 特集

ジョイスティック名人への10の質問

フィリップスの時計を操作するAtariのコントローラー (c) Roger Ibars 2004

ロジャー・アイバースの「配線装置」プロジェクトでは、見慣れた入力装置が変わった目的に使用される。任天堂のコントローラーで目覚まし時計の時間を打ち込む時も、ノキア製の携帯電話のスネークゲームをレトロな正統派ジョイスティックで操作する時も、ロジャーは相互作用の意味や、機械と私達との関係について疑問を投げ掛けてくる。PingMagでは、“相互作用デザイン”とジョイスティックの今後の進化の行方について聞いてみた。

インタビュー:ウレシカ&ジョン
訳:山根夏実

1)あなたのお仕事を一言で言うと何でしょう?

僕は“相互作用デザイナー”で、人々がどのようにテクノロジーを理解するか、そしてテクノロジーがどう人間を理解するかに関心を持っています。人間全般、テクノロジー全般ですね。

2)ソーシャルロボット・ブログを作られたとのことですが、これの意図について聞かせて下さい。

ソーシャルロボット・ブログは、過去3年間に僕が手がけた全てのワークショップのオンライン記録みたいなものです。ワークショップは大半がスイスの州立ローザンヌ美術大学(ECAL)でのものですが、パリやニュー・デリーで行ったものもあります。基本的には、僕の生徒や参加者の作品を紹介する手段ですね。


ECALでのジョイスティック・ワークショップ(2004)。写真提供:ECAL学生

ワークショップでは、相互作用デザインの体験を綴る簡単な電子工学プロジェクトを行います。ここでの目的は、シンプルな電子機器で意義のある物を作ることなんです。ここで僕達が使用する一番複雑なセンサーは、せいぜい光センサーかチルト・スイッチ。大抵の場合には、これが十分なインスピレーションになるものです。

3)あなたの配線装置プロジェクトを見ると、かっこいいレトロな雰囲気のビンテージ物のパーツを多く使われていますね。この美学には何か理由が?(例えば見てくれ、買い手がつきやすいとか、古い装置の方が接続しやすい等…)

配線装置プロジェクトの原点は、目覚まし時計の時刻の設定や、アラームの設定の手順を向上させることでした。一般的な目覚まし時計を見ると、それなりに合理的な、操作の分かりやすいインターフェースがあると思います。この相互作用をデザインし直す過程において、僕は単に別の「合理的な」インターフェースを使うのではなく、相互作用デザイン文化にすでに存在するインターフェースを使ったのです。

パナソニックの時計を操作するAtariガン (c) Roger Ibars 2006

そんな理由でジョイスティック、コントローラー、ライトガンを使いました。これらは普通に見ても「触ってみたい、使ってみたい」という気にさせます。そういう意味では、とても“歓迎している”と言えるでしょう。理想的には、全てのインターフェースや道具は人々を使いたい気持ちにさせる、つまり“歓迎する”コンセプトを持つべきだと思いますね。

パナソニックの時計を操作するAtariガン(製作中) (c) Roger Ibars 2006

それから、確かに古い電子機器は改造しやすいですが、それだけの理由で使うのではありません。僕は日頃から高品質の電子機器を使います。よく考えられたデザイン、良い材料、質の良いプラスチックに耐久年数の長い電子機器…デザインの良くない物は時間の経過と共に消えていきますが、反対に、良いデザインは電子機器の中古市で未だに出回っているものです。勿論、愛着というのも原動力の一つではあります。全てが手遅れになる前に、この物質文化を「救済」してあげなければいけないような気がするんですよね。

スネークゲームをNi-5を使ってプレイ (c) Roger Ibars 2006

4)元々は社会学を専攻されていたそうですが、あなたが現在持たれているテクノロジーに対する意見に、どのような影響があったと思いますか?

社会学はデザインとそんなに変わりませんね。社会学では社会を物のように見て、人々を対象として研究しますが、デザインでは“人々の為に”物を作ります。主題とか対象とか…はっきりと区別があるように見えますが、実際には何もない。主題は対象のように捉えることも出来ますし、対象は主題のように振舞うことができます。僕は、この二つの境界線をぼかすことに魅了されて、明らかにそれによってロボットへの興味をかきたてられました。

JUMP-O-TOASTER (c) Roger Ibars 2006
「JOYSTICK-ABLES」シリーズのアニメーション(クライアント:ELLLEE)

でも、僕は欧米の映画や小説から影響を受けてロボットに興味を持った訳ではないんです。ヨーロッパやアメリカでは、そういった架空の影響が全てです。研究室に閉じこもっているお決まり人達以外には、日常生活の一部としての本物の「ロボット文化」はありません。テレビや小説、コミック、映画などでリバイバルとして時々見かけるだけの幻想なのです。

RACING-MACHINE (c) Roger Ibars 2006
「JOYSTICK-ABLES」シリーズのアニメーション(クライアント:ELLLEE)

僕は人間が機械的に振舞う物に対して愛着を覚える“実例”が見たかった。そして、それを日本文化に見つけたのです。例えば、日本の伝統芸術であるからくり人形は興味深いですよね。こういった“機械文化”と“動く物”の関係には創作意欲を掻き立てられます。僕の自作のコレクションは、このような人間を相互作用から切り離して「自分自身を使い始める」物体の展望に注目したものです。

5)「配線装置」プロジェクトの作品には、必ずケーブルが付いています。そこには、どのような象徴的な意味があるのでしょうか?Bluetoothやラジオ電波を使った「ワイヤレス」なシリーズをお考えになったことはありますか?

良い質問ですね。僕は2003年からこのコレクションを作って来ましたが、ワイヤレス技術が広く普及しているこの時代に何故僕が二つの物体をケーブルで繋ぐのか、今日まで聞いた人は誰もいませんでした。

ステルスを使ってスネーク・ゲームをプレイ (c) Roger Ibars 2006

ケーブルを使うのは、完全性を感じさせるからでしょうか。ケーブルはレトロで昔ながらの、最高の電機的アイコンです。僕はビンテージ的な美学として使いますが…もう少し正直に言えば、僕の改造の知識に限界があるからというのもあります。まあ、どっちもということで(笑)。

これらの作品が「新しい」相互作用技術を見せびらかすものではなく、過去から救い出した物をもう一度楽しむ為のものであると認識するのは大切ですね。

中古電子機器と修理のマーケット(ニュー・デリー、インド 2005)

とは言え、ワイヤレス製品も大好きですよ。一年前、ニュー・デリーの部品市場でリモコン式のデコレーションの写真を撮ったのですが、あちらには素晴らしい電機文化がありますね!

6)配線装置プロジェクトの作品は、2つの既存の物体を組み合わせて、元の機能を持つ別の物を作る電子的な「ごちゃ混ぜ」と言えないこともないですね。配線装置プロジェクトにインスピレーションを与えた、他の電機的ごちゃ混ぜの例などもあるのでしょうか?

ごちゃ混ぜ、繋がり、組み合わせ、混合、融合。僕としては、異なる相互作用文化(家電文化やコンピューターゲーム文化)のブレンドだと考えたいですね。僕が「配線装置」を選んだのは、言葉の響きが良かったのと、面白そうで分かりやすかったから。僕の作品に影響を与えた例は、古いダイナマイトの起爆装置など山のようにあります。箱型の物体に垂直に引くハンドルがついた、西部劇やアニメなんかで見かけるアレですが、凄く強烈な物体ですよね。あれこそ本物のアクションデザインですよ。ああいうのが大好きですね!!

7)私くらいの年代の人にとっては、配線装置プロジェクトに使われている物の多くが青春時代のアイコンですから、このような展示会には自然に興味が湧いてきます。私達の世代以外の、例えば、子供や高齢者の方からの展示会への反応はいかがですか?

「Dデー、モダンデー・デザイン」展、パリ 2005。写真提供:Centre Pompidou

一般的には、僕の作品は、ゲーム好きで電子文化や物質的文化に興味を持っている人の心に感銘を与えるようです。

フィリップスの時計を操作するNESMAXコントローラー (c) Roger Ibars 2005

僕の世代にも、「機械」には全く興味を示さない人もいます。こういう感性は明らかに世代によって異なるものですが、万人が興味を持つものではありません。こういう物に対する僕の情熱は、年代物の車やビンテージ洋服と同じで、誰しもが経験する、別の時代の物に対する興味なのです。過去50年の僕達の文化は、物…特にアイコン的な電子機器やコンピューターで溢れていて、そのデザインの多くは、寛容でいて繊細です。それを復活させてみたのです。

8)こんなに沢山のレトロなジョイスティックが一堂に会しているのを見るのは興味深いです。殆どが8方向2ボタンですね。勿論、こういったヒューマン・インターフェース機器は今では更に進化している(ボタン数の増加や更に緻密な操作など)と思いますが、今後の進化はどういった方向に向かうとお考えですか?最終的には全て脳波で操作するようなことになるのか、それとも結局は手に持てる、触覚性のある入力機器になっていくと思いますか?

その質問には簡単に答えられますよ。入力機器の未来とは、人が生活の中で愛着を持って、楽しんで使うことの出来る物。もし人がコンピューターのポインタを脳波で操作したり、手を叩いて電気を消すことを楽しいと感じるのであれば、それでいいじゃないですか(笑)。

ベルリンの「Cebit」ショーより。開発者2人が、触覚入力機器を使わずに脳波のみでタイピングを披露。

僕はバカバカしさとか嫌な思いを感じさせない、気分を良くしてくれるような物を使いたい。僕のやることをコントロールするような物は好きではないですが、何かを完全に掌握することも好みません。僕が欲しいのは相互作用であって、それは僕と物との関係が楽しく豊かで、有意義なものであることを意味しています。完璧でも正確でも難しくもなく、時にドラマチックであったり、嬉しくなったり、色々な感情や経験がもてるだけの余裕のあるような。あと、相互作用デザインに幾許かの寛容さを持たせてくれれば大変嬉しいです。他の人も喜ぶと思いますね。

過去5年間で最も成功した電機製品を見てみれば、多くがこういった特性を持っていることがわかると思います。また、この期間でも、知らない内に日常生活を駄目にするような製品も沢山買われたと思います。

質問にもう少し正確に答えると、ジョイスティックは、2つの理由でこれからも商品として生き残ると思います。一つは、人間の手がここ1世紀で5cm縮むなんてことは有り得ないこと。もう一つは、この物体の名前が本当に完璧だということ。JOY(喜び)のSTICK(棒)

9)任天堂の「Wii」のコントローラーに対する感想はありますか?天才?それとも単なるPR戦略?もう試されましたか?

これは参った、まだ試してないんですよ!

すごく個人的なんですが、正直に打ち明けると、実は僕は「身振り手振り」のインターフェースが大嫌いなんですよ。こういう触覚なしの技術を使ったプロジェクトや製品が好きではないんです。人間の動作に反応する相互作用の視覚投影、手を振ると反応して音を出すグラフィック・インターフェース、空間における人間の位置に反応する物とか…こういったプロジェクトは好きになれません。経験を基にして言えば、デザイン性に乏しい場合は特に。

任天堂「Wii」の動作センサーのデモンストレーション © 2006 任天堂

いくつかの例外はありますが、この技術は、この技術自体とそれを作った技術者やデザイナーを褒めたたえているだけです。それ自体は何も悪くないですし、良くやったと思いますが…。なぜ僕が白い歯磨き粉の箱を部屋の中でブンブン振り回さなければいけないんでしょうか?(笑)

最近では、空港のトイレにある手をかざすだけで水が流れるあれが、この技術で唯一気にならないものですね。

10)最後に、もしこの質問を聞き飽きていたら申し訳ないですが、これまでのジョイスティックで一番好きな物と嫌いな物はどれですか?あと、その理由は?

大好きな質問ですよ!

僕の最高にして最愛のジョイスティックは、僕がコモドール64でゲームをするのに使っていた、Spectravideo社のシンプルな黒と赤のクイックショットII。あれは、前モデルの機能を色々と改良した大ヒットのジョイスティックでした。吸盤やトリガボタン、連射ボタン、人間工学基づいたグリップなどを最初に導入したモデルではなかったかもしれませんが、初めてこれら全てを一つのジョイスティックに詰め込んだモデルの中の一つだったとは思いますね。


Spectravideo社の「クイックショットII」

Zipstick社の「スーパー・プロ」

もう一つの素晴らしい装置が、Zipstick社のスーパー・プロ。強化された金属シャフトとゴム製の台座の使い勝手は最高ですし、あのカチカチ感が実に耳に心地良い!あと、ゲーム考古学者には、Telemach製のジョイスティックは必需品ですね。スペインで製造されたものですが、ゲームセンターでの感覚を自宅で再現するという触れ込みで販売されたものです。本当にシンプルなものですが、とても良く作られてますね。

僕は毎朝、Mindscape社のパワープレイヤーで目を覚ましています。テーブルに置く為の吸盤を外して、ゲーム中もジョイスティックが手の中に納まるようになっている一風変わった実験的ジョイスティックです。まあ、人知れずひっそりと革新を称賛した、市場での大失敗作ですが…僕の配線装置プロジェクトでは良い物も悪い物も醜い物も、いつでも歓迎しますよ。

ロジャー、思い出を辿るお話と個性的な配線装置の使い方を教えて下さってありがとう!

コメントを入れちゃう!

  • Share and Enjoy:
  • del.icio.us
  • digg
  • Fark
  • NewsVine
  • RawSugar
  • Reddit
  • YahooMyWeb
以前の記事