
イースト・ロンドンにある人気のエリア、ショーディッチ。晴天なら平日でもホワイト・キューブ前のホクストン・スクエアは日向ぼっこを楽しむ若者で溢れ、週末の夜にもなればキングスランド・ロードに立ち並ぶバーの前は人だかりになる。作家のクリス・モリスには、チャンネル4のテレビ・シリーズ「ネイサン・バーレイ」で、その日々の生活を痛烈に描写されたショーディッチの若者達だが、それも元はと言えばこの小さなエリアから新しいムーブメントが次々生まれるためだろう。今回は、若者達とクリエイターが集まるそのショーディッチをベースに活動するデザイン・ユニット、ハドソン・パウエルのスタジオを訪ねてみた。
作:チエミ
では、まずは自己紹介からお願いします。
ハドソン・パウエルです。デザイン会社としては成長途中なので「これが僕たちのやっていること」と言い切るのは、正直まだ難しいかな。過去一年でこなしたプロジェクトは、紙媒体のものあれば、アイデンティティ、アニメーション、インタラクティブなど様々。主なクライアントはバービカン、カンティーン、ポインター・フットウェア、キャラット、BEAMS Tといったところ。

手がける媒体の幅が広いですが、メインの分野はどれでしょう?
タイプ、イメージ、それに構成は基礎としているけれど、ひとつに捕われることなく常にオープン・マインドでいるように努力している。そうすれば、様々な媒体でアプローチできるからね。僕達の今いる場所は、メディア、イメージ、ストーリー、そして時間の間の中で、新しい相互作用を繰り返しながら拡大しているんだと思うよ。
ハドソン・パウエルは名字で二人は兄弟だそうですが、いつから共に活動するようになったのでしょうか?
大学を卒業後に何度か一緒に仕事をする機会はあったんだけど、本格化したのは兄のルークが僕にPJハーヴェイのプロモーション・ビデオのディレクションを一緒にしないか、と尋ねてきたことから。当時、僕はNokiaに勤めていて、大きな組織の一員として働く事に対してすごくフラストレーションを感じていた。だから、小さなグループで活動することは、僕にとってすごく良いことだったんだよね。ハドソン・パウエルは、僕たちの持つ最高の能力を発揮できる機会を与えてくれている場所。もちろん、兄弟だからお互いのこともよく分かっているしね。

PJハーヴェイ「Shame」のミュージック・ビデオ

ハドソン・パウエルの本格的な活動はここから始まった

PJハーヴェイ「Shame」より

PJハーヴェイ「Shame」より
二人の中でいつも決まった役割などはあるのでしょうか?
それはないね。二人ともデザインのアプローチの仕方が違うんだ。僕(ジョディ)がバーチャル・エンバイロメント(仮想環境)の修士号の勉強をしていた傍らで、ルークは常にデザインとファイン・アートの狭間にいた。だから僕達の受けた仕事は、どんな方向にでも転ぶ可能性がある。プロジェクトの始まりはいつも紙とペンだし、プロジェクトの構造自体もごくシンプルなものにしている。いつもアイディアが鍵になっていて、そこから方向性が決まっていくことが多いね。
では、今までのプロジェクトで特に気に入っているものを紹介してもらえますか?
「Responsive Type」とロンドンのレストランの「Canteen」の仕事は、すごく楽しかった。両方ともタイポグラフィーと印刷の知識に、新しいテクノロジーの必要性と可能性を組み合わせたものだったんだ。

Responsive Typeは、札幌で開かれた展覧会の為に開発したカスタム・プログラムで、僕達はスクリーンベースのダイナミック・フォントをデザインした。このシステムでは、携帯電話やコンピューターから送られたEメールを展示作品が受信して、リアルタイムで文字をレンダリングし、その文字を最も読みやすい状態でディスプレイする。つまり、小さなサイズのフォントは読みやすくなって、大きなサイズのフォントには複雑さが加えられる。送られたメッセージはresponsivetype.comにアーカイブされていくんだよ。

「Responsive Type」のポスター。このプロジェクトでは、紙ではなくスクリーン上でのタイポグラフィーに焦点を当てている

Canteenの仕事は、僕達がモーション・グラフィックやインタラクティブなプロジェクトばかりやっていた時に来たから、すごく新鮮で楽しかった。Canteenのコンセプトは、視覚的な意味を持つだけでなく、“クラシックな英国のデザイン”だった。その結果、テーブルを拭くことができるシュガーペーパーに印刷されたメニューや、ウェブサイトではダウンロード可能なPDFのメニューが自動的に更新されるようなシステムの構築へと辿り着いた。PDFのメニューは常に来る人に最新情報を提供できるし、スタッフの仕事も最小限で済むって訳なんだ。


「Canteen」のロウンチ・パーティー用インビテーション
ところで、スタジオを他の方とシェアされているようですが、このスタジオがあるサンバリー・ワークショップ自体にも、いろいろな方がいるようですね。他にどんな職業の方がいるのですか?
今までいろんな素晴らしい人達とシェアしてきたし、現在もそうだけど、僕達のところだけで、イラストレーターのジェスロ・ヘインズ、ニコラ・ペカラッロ、クリエイティブ・エージェントのアナ・スー、Unit 25 プリントスタジオ…。Unit 25 プリントスタジオは、Tシャツやポスターを作る時にいつも助けてもらっている。この他にもこの棟には、大工、建築家、花屋、整備士、そしてデザイン会社のZak Kyes、BC, MHもいる。いつも周りに人がいて、素晴らしい環境だよ。毎週水曜日と金曜日には、みんなで集まって近所でバスケットボールをしたりもするんだ。
彼らと一緒に仕事をすることもありますか?
イラストレーターのジェスロ・ヘインズとは現在進行中のプロジェクトがあるよ。他のクリエイターと仕事することは、僕達本来の力よりも大きな力になる可能性を与えてくれるし、それによってより大きなプロジェクトを引き受けることができるからね。与えられた仕事に対して常に最高のメンバーで仕事できるっていうのも素晴らしい。ジェスロとはこの靴のプロジェクトを一緒にやってるんだよ。

先程から気になってましたが、これは何でしょうか?
スペインで開かれる展覧会用に、このスタジオ全体として靴をカスタマイズしてくれないかという依頼があったんだ。その時に、棚にあった綿の入った袋を見つけて、これで草が生い茂った丘を作ろうと思ったのが始まりだった。その後ジェスロと僕達は、ポインター・フットウェアからこの作品のシリーズ化を依頼されたんだよ。今は二作品目に取りかかっているところ。変な仕事だけど…楽しいよ。ちなみに上の作品のコンセプトは、“灯台に恋したタコ”。この説明、何か役に立つかな…?

シリーズ第一弾の作品名は「Sibalom」

よく見ると、木を切っている人がいる…
スタジオ外のアーティストやデザイナーともコラボレートされますか?
キャラットのプロジェクトは、Northデザインとのコラボレーションだったよ。以前にキャラットのアイデンティティを制作したNorthデザインからブランドのキーとなるグラフィックの制作を依頼された。それで僕達が、ブランドのモチベーションのストーリーと組み合わせたグラフィック・シークエンスのシリーズを手がけたんだ。シークエンスは全て現在のアイデンティティの影響を受けている。高解像の静止画をレンダリングしたこのシークエンスは、Northの元に送られて、さらに彼らが自分達のデザインの中に取り込んでいった。シークエンスは3Dで制作されているから、もっと色々なものが簡単に出来てしまうんだよ。



ところで、ジョディさんはまもなく東京に引っ越されるらしいですが、その後のハドソン・パウエルとしての活動はどうなってしまうのでしょうか?
この会社は小さいから、遠くに住むフリーランサーとも仕事しているんだ。僕達は既にフランスのプログラマー2roqsと毎日のように一緒に仕事しているけど、すごくうまくいっているし、中国や日本のクライアントもいる。だから、ジョディが遠くへ行っても、切り替えはそんなに難しくはない思うよ。

ジョディさん、東京に引っ越したらぜひPingMagのオフィスにも遊びに来て下さいね。ルークさんからは例の靴のシリーズの続きを待っています!今日は有り難うございました!
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