開かれたICCの未来

2006年6月26日 カテゴリー: イベント/展示会, インターネット, 国内

開かれたICCの未来

日本で唯一のメディアセンターであり、歴史に残る展覧会の数々を開催してきたICC(インターコミュニケーション・センター)が、新宿初台にあるオペラシティに出来てから現在まで、約10年の月日が経った。そのICCが、幾度にも渡る閉館の危機を乗り越えて、今月6日、「Art×Commnication = Open」をテーマに、より幅広い層にも気軽に利用できる“公共の空間”として生まれ変わった。今までの歴史を振り返りながら、”オープン”になったICCについて触れてみたい。

作:マエカワ

90年前半、まだメディアートという言葉がない時代に、NTTの日本の電話事業100周年記念としてICCの構想は始まった。

ICC会場内

今回から、子供から大人まで「オープン」に楽しめるように、常設展示は無料で開放されることになった。展示空間は、ネットワーク・ゾーン、アート&テクノロジー・ゾーン、研究開発コーナー、アーカイブ・ゾーンの4つに分かれており、「Open」というICCのコンセプトを具体的に伝えるものになっている。それでは、それぞれのゾーンを紹介しよう。

ネットワーク・ゾーン

ネットワーク・ゾーンでは、その名前のとおりインターネットを利用した作品が展示されている。そのためにICCの中だけではなく、自宅のネットワークを通じて参加できる作品もある。

まず、入り口で出迎えてくれるのが、過去PingMagでも特集した石黒猛氏による「サウンドポール」という作品。この作品はポールから電磁波が流れていて、人が近づくと音量が変化する。また、ICCのウェブサイトに用意されているSpnetから、ポールに人が近寄った様子を観察できるようになっている。

ネットワークゾーンの作品「サウンドポール」2005 石黒猛

その次に目に入るのが、大きな輪で空間構成された「Project Phonethica Installation “Rondo”」という作品。この作品は、元々Mac向けのソフトウェアとして開発されているPhoneticaをベースに、インスタレーション作品として構成したものだ。

ちなみにPhoneticaとは、世界中のあらゆる言葉をつなぐソフトウェア。例えば、日本語で「鯖(さば)」と発音すると、フランス語では「cava(サヴァ)」という言葉になり、意味は「ごきげんいかが?」になる。このような発音の偶然の一致をきっかけにして、世界のさまざまな側面を探ることに挑戦している。

「Project Phonethica Installation “Rondo”」2006 遠藤拓己+徳井直生

Phoneticaを制作した遠藤拓己氏に「インスタレーション版にしたときの違いは何か」と質問をしたところ、「空間でしか出来ないものを作りたいと思っていました。単純にソフトウェアをプロジェクションするのはやめようと考えたのです。」という答えが返ってきた。この作品の核となっているPhoneticaのプロジェクトは現在も進行中で、 似ている言葉を投票してもらうWebシステムを開発中である。

Phoneticaのプロジェクトに限らず、コンピュータ・ディスプレイ上でもっとも美しくなるように調節してあるソフトウェア作品を物理的な空間を生かしたインスタレーションとして成立させることは、アーティストにとって重要なテーマとなっている。

研究開発コーナー

ここでは、新しいインターフェイスとアーティストのための“新しい道具”を紹介している。つまり、ここから新しいアート作品や製品が生まれる可能性が十分にあるのだ。

ここで展示されている「風インタフェース」はその名前のとおり、三次元空間のCGに風の勢いを使って触感をあたえるユニークなデバイスだ。鑑賞者は三次元眼鏡をかけ、大きな透明の“おたま”のようなもので三次元空間のCGを操作できる。

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「風インターフェース」2004 NTTサイバーソリューション研究所 鈴木由里子+小林稔

もうひとつの展示品「GAINER」は、ユーザー・インタフェースやメディア・インスタレーションを作るための環境で、オープンソースで開発が進められているI/Oモジュール。2006年6月14日にバージョン1.0がリリースされ、ハードウェアの分布もはじまっている。興味のある人は、ぜひGAINERのウェブサイトを参照してほしい。

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「GAINER」2005 IAMAS(情報科学芸術大学院大学┼国際情報科学芸術アカデミー)プログラマブル・デバイス・プロジェクト(PDP)

研究開発ゾーンには開発中のものだけではなく、基礎研究としてメディアアートを意識した永野哲久氏と城一裕氏による「Monalisa: 音の影」という作品がある。「Monalisa: 音の影」は画像のピクセルの情報を読み取り音に変換する作品だ。この作品もまた、Monalisa-Audio Unitという、ソフトウェア作品をインスタレーションに展開したものになっている。


「Monalisa: 音の影」2005 情報処理推進機構(IPA)2005年度未踏ソフトウェア創造事業 永野哲久+ 城一裕

画像の情報を音に変換中…

インスタレーション版の「Monalisa」は部屋の中で画像を撮影し、その画像を元に音を再生する。さらに一度画像から再生した音を録音し、音から画像を再現するということを試みている。制作者の一人である永野氏は、「絵を音にするという発想を広げて、クリエーターなどを刺激したい」と語ってくれた。

アート&テクノロジー・ゾーン

アート&テクノロジー・ゾーンは、90年代初頭からICCが行ってきた展示のコンセプトに沿ったものになっており、ICCが活動を開始した当時から最新の作品までが展示されている。

岩井俊雄氏の「マシュマロスコープ」とその元となった「アナザータイム、アナザースペース」、クワクボリョウタ氏の「loopScape」など、メディアアートのファンならばお馴染みのものがいくつか展示されている。

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「loopScape」2003 クワクボリョウタ

「マシュマロスコープ」2002 岩井俊雄

また、「The Road Movie」という作品を制作し、今年のARS ElectronicaのNet Vision部門でGolden Nicaを受賞したexonemo(エキソニモ)による過去の代表作「FragMental Storm 02」も展示されている。

「FragMental Storm 02」は、ユーザがコンピュータに入力したキーワードを元にウェブサイトを検索して、見つかった画像などのデータをばらばらにし、コンピュータ画面上でシェイクしてしまう作品だ。この作品はICCで体験できるだけではなく、エキソニモのウェブサイトから直接ダウンロードも可能。

icc 「FragMental Storm 02」2002 エキソニモ
icc 初台をキーワードに画像を検索中!

藤幡正樹氏による「無分別な鏡」という作品は、人間の“視覚の認識”をテーマにしている。作品の前にある眼鏡をかけて鏡を覗くと、見えるのは宙に浮いた眼鏡だけ。体験してみるとわかるが、コンピュータで再現されようとするシミュレーションの正確さと計算の誤差によるものなのか、いつも目で見る風景とは違いまったく違う印象をうけるようになる。体験者は鏡の機能をバーチャルリアリティを使って模倣することをきっかけに、自分自身の視覚の仕組みを再認識することになるだろう。

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「無分別な鏡」2005 藤幡正樹

クリスタ・ソムラーとロラン・ミニョノーによる「A-Volve」という作品は、人工生命をテーマにしている。クリスタ・ソムラー氏は、ICCについて「ICC初期とシーンは接続されている」と語った。ICCのコンセプトが約10年たった今でも継続していることを感じさせる言葉だ。

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「A-Volve」1994 クリスタ・ソムラー&ロラン・ミニョノー

アート&テクノロジー・ゾーンでは、メディアアートに慣れ親しんでいる人たちだけではなく、初めてメディア・アートに触れる人たちのために、作品ひとつひとつにちょっとしたサインがある。このサインを読んでいけば、初めての人でも作品を理解することが容易になるだろう。

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メディアアートのキーワードが書かれているサイン

アーカイブ・ゾーン

ここでは、ICCで行われた展示、シンポジウム、図書館での過去の展示物やメディアアートの歴史を調べることができる。

アーカイブ・ゾーンで展示されている「HIVE」は、ICCで行われた展示やシンポジウムなどのデジタルな映像記録で、「HIVE」という名称は“Archive”という単語の後ろ四文字から由来している。HIVEはこれまで、ICC施設内のみでしか見ることが出来なかったが、6月8日に一部がウェブ上に公開された。

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アーカイブ・ゾーン HIVE

HIVEでは、CreativeCommonsのプロジェクトをリードするローレンス・レッシグのインタビューなどを見ることができる。このサイトに公開されたものは、CreativeCommonsのライセンスがつけられていることにも注目したい。

リニューアルしたICCでは、多くの分野でのプロ達との交流の場になるように、アート方面だけではなく、ヒューマン・インタフェース、音声そしてハードウェアなど、研究作品専用のコーナを設置している。アート作品だけではなく、研究作品をICCに展示するメリット何だろう?

キュレーターの四方幸子氏はこう答える。「産・学・官の関係で広範囲のものを紹介したいのです。ICCで展示されているものをまだこれから開発することによって、多くの人々からアウトプットをもらう事が出来ます。また、研究の側の成果を展示することによって、美しくブラッシュアップするという狙いもあるのです。」

さらに「展示期間が長いので、(展示内容が)バージョンアップするかもしれない」「産・官・学での研究事例をICCで展示することで、他の美術作品のように見た目の美しさを問われ、研究開発での成果がそこにフィードバックされることが期待されている」とも。それとは逆に、研究開発からアートへ、技術的な面で刺激を与えることも期待されている。

以前はICCに直接足を運ばないと見られなかった貴重なアーカイブも、現在ではHIVEから閲覧できるようになり、また、ポッドキャストチャンネルiccを始めるなど、ICCはウェブに対してもどんどん「オープン」な活動をするようになっている。今後、ICCがさらなる「オープン」を目指して、他分野との交流を深め、より活発になっていくよう期待したい。

6 コメント

  1. 僕たちのプロジェクト、Phonethicaを取り上げていただき、ありがとうございます。今回、Phonethicaのコンセプトをより広く理解していただくために、Phonethica Desktopというスタンドアローンのソフトウェアをリリースしました。Mac用で、無料でおつかいいただけます。
    ぜひ試していただいて、感想をお聞かせいただければと思います。
    http://www.phonethica.net/

    Posted by: nao tokui @ 1月21日2007年

  2. [...] PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » 開かれたICC

    Posted by: たんぶらに張り付けていた音楽関連のリンクを移管 « /ekskleiv/のトビチ @ 12月30日2007年

  3. dai suki!!

    Posted by: cococoaki @ 5月8日2008年

  4. [...] イスラエルの変態タイポグラファーOded Ezerのまったく理解不能なエクスペリメンタルな実験やスペルマ(精子)フォントにも、少し前にフランスでの展示の紹介をしたパンクなデジタルグラフィティ集団のGraffiti Research Labによる眼球しか動かす事しか出来なくなったグラフィティライターに目の動きだけでグラフィティを描く装置を作るという感動的な試みにも、まったく負けていない新しいタイポグラフィーへのアプローチ。技術力と表現したい事のレベルが非常に高い。この展示は見に行きたい。触ってみたい。彼らの再生されるタイプに触ってみたい。プログラムとグラフィックどっちもとか、反則。セミトラが特集された記事2つPublic-image.orgPingMag [...]

    Posted by: Semitra Exhibition「tFont/fTime」 セミトラ インスタレーション展 « TKOT! TEXT2 @ 7月25日2009年

  5. I was very pleased to find this website. I wanted to thank you for your time for this excellent post!!

    Posted by: homes for sale nashville @ 11月9日2011年

  6. 開かれたICCの未来 good post1019

    Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年

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