
「僕はイラストレーターじゃなくて装飾家だよ!」東ロンドンにあるスタジオで会ったクラウス・ハーパニエミはそう主張してやまない。だが、彼が「英国ファッション・イラストレーターの第一人者」、そして「フィンランドの最も豪奢で才能溢れるイラストレーター」とまで称された人物であることを考えると、この言い分には違和感を覚える。今回は彼の最新の作品を拝見しながら、クラウスにその主張の根拠を語ってもらった。
作:マット・シンクレア
訳:ナツミ

スタジオの外に立つクラウス
写真:アレキシ・ニエメラ
超トレンディなブリック・レーン付近に住居を構えているにも関わらず、クラウスからは「東ロンドン在住のデザイナー」らしさが感じられない。仕事場は、彼と恋人が旅行先(主にはロシアや旧東欧諸国)で買い集めたゴテゴテのキモカワイイ玩具で埋まっているし、飼い猫がテーブルの上をのし歩いたりコンピューターのキーボード上に座ってみたりして、常に遊べと要求してくる。だがクラウス自身は驚くほどの熱血で、会ったその瞬間からほぼずっと、最新のプロジェクトについて語り続けてくれた。

ロビン・フッドのお話の、舞台の脚色というか解釈なんだけど、封建時代の忍者ものにしてあるんだ。僕は戦国ものが大好きで、古い衣装の柄とかイメージもよく作品に使っている。こんなことを言って日本人の方に失礼にあたらなければ良いんだけどね!京都にも一度行ったし、去年大英博物館でやっていた戦国時代の装束や刀の特別展にも行った。装飾が凄くて、本当に綺麗だったよ。

最初は子供向けの絵本として、来年あたりに出版される見込みだけど、アニメにすることも考えてる。実は、丁度ロサンジェルスでその可能性について話してきたところ。
トイ・ストーリー系のヒット作になる予定?
いやいや!僕は昔の東欧風の切り絵アニメか、ひょっとしたら古い技術を使った人形アニメーションでも良いと思ってる。プラスチックっぽい3Dものはあまり好きにはなれないから印刷されたものが良いんだけど、動画にすると僕の好みとしては人工的になりすぎてしまうし、最近ではそんなものはそこら中に転がってる。僕的には物事に対する昔ながらのやり方のほうに興味があるね。
この後、クラウスは彼のフィンランドでの子供時代にまで遡るインスピレーションの源を見せながら、「正統派」アニメーション技術への情熱を語ってくれた。

Krtek (The Little Mole) © Krátky Film、プラハ

Krtek (The Little Mole) © Krátky Film、プラハ
殆どがロシアかチェコ製で、子供時代にテレビで見ていたもの。こういうキャラクター・アニメーションのスタイルや装飾、スラブ系の背景とかが大好きだね。

フランスのパペット・アニメーション「シャピ・シャポ」
あと、こういう古くてちょっと変わった玩具からもインスピレーションを感じる。ゴムみたいなんだけど、同時にちょっとふわふわした手触りの。殆どはロシアに行った時に見つけたものだよ。他にも古いクリスマス・ツリーの飾りなんかも探すかな。何故か日本のキャラクターものの玩具(可愛いんだけどちょっと変だったり不気味だったりするような)と共通するものがあるね。

それから、イワン・ビリービンを知ってるかい?あれは凄いよ、本当に素晴らしい。セント・ペテルスブルグの劇場で、芝居やオペラの背景幕とか本や劇場ポスターのデザイナーをやっていた人。子供のテレビアニメとは全く違うけど、彼のスタイルや色の使い方はとても興味深いね。

貴方の作品はフィンランドの文化や自然などに深く根差していると聞きましたが、私にはロシアの方が大きな影響を与えているように思えるのですが。
実は、東欧とフィンランドは繋がっているんだよ。フィンランド人はなかなか認めたがらないけどね。国民は忘れようとしているけれど、フィンランドの文化の大半はロシアを基盤としているし、国境もかなり人工的で、スウェーデンや欧州諸国との国境が海で物理的に区切られているのに対して、ロシアとの境は地図上の単なる線でしかない。僕にはフィンランドとロシアの違いをどう定義すればいいのか分からないけど、僕がフィンランドで育っていなかったらここまでロシアの影響を受けることはなかったと断言できるよ。
じゃあ、フィンランドでアニメを見て育ったところから、どうやって今日の地位を築かれたのですか?
まあ、子供時代の僕は絵を描くこと-キャラクターを生み出すことに夢中で、それはラハティ・ポリテクニックのデザイン学部でグラフィックスを勉強している時期にも変わらなかったかな。ここの学部はグラフィックデザインには定評があったけど、僕は最新の「流行」にはあまり興味を持てなかった。卒業後は暫くフリーランスで活動して、当時のクライアントの1人であったDrop Cofee(フィンランドのコーヒーショップチェーン店)のブランド戦略の一環としてキャラクターを作ったりしてたよ。

フィンランドのDrop Coffeeの為のキャラクターデザイン © クラウス・ハーパニエミ

フィンランドのDrop Coffeeの為のキャラクターデザイン © クラウス・ハーパニエミ
その後は、広告代理店Taivasの一部門であるHelで仕事をしたね(簡単に言うと、Taivasはフィンランド語で天国、Helはヘルシンキの略称でもあるけど、なんとなく分かるでしょう?)。そこではMTVやDieselの企画に携わっていて、その結果Diesel Style Labと仕事をすることになってイタリアに移住することになったんだよね。
それで数年間Dieselで働いたんだけど、その間に現在Bela’s Deadという会社を経営しているジョー・リンチとも一緒に仕事をした。今も丁度、彼女のランジェリー・コレクションの作業をしていたところだね。その後、2年くらい前にロンドンに移り住んで、今の自営業に至るかな。

Bela’s Dead(イギリス)の為のイラスト © クラウス・ハーパニエミ

Bela’s Dead(イギリス)の為のイラスト © クラウス・ハーパニエミ
今はどんなクライアントから依頼を受けているのですか?

最も大手の依頼人の1人はCacharelで、2006年春のレディース・コレクションの衣装や舞台セットに使われたイラストを提供した。

他には、Selfridgesもクライアントの1人。SelfridgesがTeenage Cancer Trustへのチャリティー活動の一環として、クリスマス物語という「有名人」作家に書かせた限定版の絵本を作った時に僕が挿絵を頼まれたんだけど、出来上がった絵を見せたら挿絵としてだけでなくウィンドウのデコーレーションとしても使われることになった。

最近のクライアントで言えば、Levi’sの仕事もした。Tシャツ・シリーズの仕事を丁度終わらせたところ。
貴方の作業の過程や、どうやってデザインに取り組むかについて教えて頂けますか?
稀にスケッチから始めることもあるけど頻繁にではないし、本当に雑だったりするんだよ!デザインを始める為(下絵をスキャンした上に描くとかではなくて、スケッチはインスピレーション)感覚や雰囲気を作り上げるのに使う感じだね。でもそうすると、依頼人はよっぽど僕を信用していないといけなくなってしまうわけで!時にはクライアントにスケッチを送ったものの最終的なデザインは全く違っていた、なんてこともあるよ。
こっちは、イタリアのジーンズの会社、My Assの仕事。スケッチを送った時には、ロンドンの地下鉄の座席に使われている布地の柄を基にキャラクターを作ると言ったのだけれど…

僕は直接フリーハンドで描くんだけど、それが柄や繰り返しを描くのには最高だし、そのやり方が一番よく分かってる。じゃあ3Dキャラクターを作りたい時はと言えば、このInfini-Dという古い学校教育用のソフト。本当に子供っぽいんだよ!だけどシンプルな形や環境なら簡単に作れるし、僕のスタイルとのよく合ってる。僕の本、Giantsを作った時にはよく使ったね。

My Ass ジーンズの為にMacromedia Freehandを使って、ロンドン地下鉄ヴィクトリア線の座席カバーを題材にして描かれたデザイン © クラウス・ハーパニエミ

My Assジーンズの為の3Dキャラクターデザイン © クラウス・ハーパニエミ
なるほど、その本はどんな感じに仕上がりましたか?
僕がキャラクターやデザインを先に作って、それをフィンランドでは結構有名な作家であるロサ・リクソムが物語にしたんだよ。

戦国もののロビン・フッドも同じやり方、つまり絵を通して場面や雰囲気、キャラクターを作って、他の誰かが絵を基にお話を作る。だから、僕も自分自身を何て称したらいいのか分からない。レイアウトとか、そういう仕事をしているわけではないから、明らかにグラフィック・デザイナーではない。だけど、キャラクターとか、柄やモチーフを作ったりしているだけで、テーマにイラストを付けるイラストレーションの仕事をしているわけでもない。実のところ、そういう仕事をした時にはあまり楽しめなかったのもある。僕にとっては物語も好きに出来ることが重要だけど、イラストレーターっていうのは他の人達の物語に沿って絵を描くわけでしょう?僕はその逆をやりたい。
結局、ご自分を何と称されることにしたのですか?
模様作り、プリント・デザイナー、装飾家…装飾デザイナー。やっぱり分からないね!
最近オスロのVisuelt Conferenceで講演されたと伺いましたが。

Satyricon。ノルウェー出身者なら分かるはず!
そうだね。実はあの時、僕の好きなバンド、Satyriconのライブに行って来たんだけど、彼らは本当に最高のブラックメタル・バンドの一つだね。ノルウェーではブラックメタル文化はそこまで根付いていないから、本当に凄いことなんだけど、コンサートに来ていた観客の中にはデザイナーやギャラリーのオーナーが何人もいた。こっちのTurbonegroも要チェック。ノルウェーでは一番有名で、ブラックメタルともちょっと違うかもしれないけど同じような表現を使っている。Satyricon。ノルウェー出身者ならきっと分かるよ!
なるほど、貴方の作品の暗い方のイメージがどこから来るのか、何となく分かり始めた気がします。例えば、Levi’sの仕事とか…

僕のBantamやTop Shopの為の作品も見てみるといいよ。

Bantam(イタリア)の為の、鮮血が刺繍されたプリント・デザイン © クラウス・ハーパニエミ

Bantamがクラウスに贈った、クラウスのデザインを使用したバースデーケーキ
実はBantamはMy Assと同じ会社が経営しているんだけど、イタリアに住んでいた頃から数年間、僕がどっちものクリエイティブ・ディレクターをやっている。僕の作品をカタログや広告に使うだけでなく、実際の衣服に使うのにファッション・デザイナーと一緒に作業したこともあるよ。

Bantamで衣服に使われた模様 © クラウス・ハーパニエミ

Bantamシャツのラベル © クラウス・ハーパニエミ
その後、僕の作品を見たTop Shopが同じ系統のスタイルでデザインして欲しいと言って来たんだよね。

今後はどのような方向性の作品を考えていますか?
うん、さっき話したように、アニメーションの世界にも入ろうと頑張ってるよ。印刷したものだけではなく、僕の作品が生きて形になったところを見てみたい。これまでにも広告で僕のキャラクターがアニメになったことがあったけど、芸術的な作品ではない。僕としてはストーリーの方に興味があるんだ。もう一つは使用ライセンス。そっちの方面でも少しは成功を収めているんだけど、もっとやりたいね。それによって、僕のキャラクターが広がって、もっと色々なシチュエーションに登場できるようになるから。

台湾のセブンイレブンでの電子マネーカード

限定版Sony PlayStation2
クラウス、作品とノルウェーのブラックメタルの紹介、ありがとうございました!
8 コメント
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クルテクの下にある、「題名がわからない」とされているのは、「シャピ・シャポ Chapi Chapo」というフランスの70年代のパペットアニメです。
http://www.manuera.com/sonota/
こちらでchapiって検索すると、主題歌が聴けますが、ラウンジーな感じで実にイイのです。お気に入りです。
Posted by: おかもと @ 6月21日2006年
おかもとさん、情報ありがとうございました!
Posted by: chiemi @ 6月22日2006年
klaus haapaniemiの「giants」の絵本をぜひ購入したいのですが、ネットで調べてもなかなか出てきてくれません。
ISBNを教えて頂けますか?
Posted by: maki @ 7月4日2006年
makiさん
こちらでも調べてみたのですが、ちょうどご本人も休暇中とのことでISBNは分かりませんでした。ごめんなさい!
ただ、出版社はここだそうです。
http://www.pocko.com
Posted by: chiemi @ 7月6日2006年
調べてくれてありがとうございます。
やっぱりここの出版社なのですね・・・。
英語でがんばってみます!
Posted by: maki @ 7月6日2006年
http://hitspaper.com/?eid=636
Posted by: goram @ 10月1日2007年
Wow, awesome blog layout! How long have you been blogging for? you made blogging look easy. The overall look of your website is great, let alone the content!
Posted by: CassieAoay @ 11月9日2011年
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Posted by: christian louboutin @ 11月10日2011年