ワンドットゼロ_10:ワールドツアー始動!

2006年6月16日 カテゴリー: イベント/展示会, インターナショナル, グラフィック, 映像, 特集, 音楽

ワンドットゼロ_10:ワールドツアー始動!

ロンドン会場でのラストを飾った英ビジュアル・プロダクション・チーム、UVAによる初のミュージック・ビデオ、コールダーの「トゥ・ザ・ミュージック」。UVAが独自で開発したソフトウェアを使って制作したこの革新的な作品は、映像クリエイターならずとも必見!(視聴可能なサイトの紹介は本文中で)

音楽、建築、グラフィック、ゲームなど様々なカテゴリーにおける映像シーンで、才能あるアーティスト達をいち早く発掘し、その作品群を世界中でショーケースしてきたロンドン発のムービング・イメージの祭典「ワンドットゼロ」。世界中の映像業界関係者が注目するこのフェスティバルが、今月2日よりロンドンのICAを皮切りに、いよいよ今年10周年となるワールドツアーをスタートさせた。

作:チエミ


会場となったICAの入口。近くには、バッキンガム宮殿やトラファルガー・スクエアがある

ICA内のバーは、各プログラムの上映後コミュニケーションの場に

クリエイターの集うロンドンのショーディッチ地区にオフィスを構えるワンドットゼロは1996年に設立され、映像フェスティバルとして世界中をツアーしている。日本での本格的な開催は2001年。昨年は東京、札幌、静岡の日本3都市に加え、ソウル、ストックホルム、サラエボ、マドリッド、イスタンブールなどを含む、世界60都市で開催されている。

上映されるプログラムは、世界中からエントリーされる作品から選出・構成されているが、この種類のフェスティバルとしては珍しくエントリー手数料を無料としているため、毎年2,000本以上の作品が集まっているのだとか。


デザイン・スタジオ、Introによって制作されたタイトル・シークエンス

fashion、installationなど様々なキーワードが描かれる今年のメイン・イメージ

10周年という大きな節目となる今年のタイトル・シークエンスを手がけたのは、イギリスを代表するデザイン・スタジオIntro。iPODのCM制作で知られる昨年のLoganのデジタル色が強い作品とはうって変わった、モノクロのアナログ的な作品に仕上げられている。アート・ディレクションは、例年同様、元・StateのPhilip O’dwyerが担当。今年のメイン・イメージは、ワンドットゼロがカバーする様々なジャンルの名前を球体化したもの。

ロンドンでの本フェスティバルでは、ショートフィルムやミュージック・ビデオを集めた通常のプログラムが10本、長編が8本、トークショー6本に加え、教育プログラムやライブ・イベントなども開催された。それでは、さっそく今回上映されたプログラムの中からいくつかを紹介しよう。

New British Talent

BBC Film Networkとのコラボレーションによるプログラム「New British Talent」では、新進気鋭のイギリス出身の映像監督の作品を多数紹介。若手監督らしく実験的な作品が多い中で、特に記憶に残ったのはアジアをモチーフとした絵画のようなタッチが美しい2分間のアニメーション、Lucy Leeの「The Gates of Heaven」。また、Paul Fraserによる「Scummy Man」は、ワープ・フィルムズドミノ・レコードのコラボレーションにより生まれたショートフィルム。現在、イギリスで最も注目されているバンド、アークティック・モンキーズの楽曲「When The Sun Goes Down」にインスパイアされて制作されたこの作品は、15才の少女・ニナとダメ男・ジョージのストーリー。


まるで絵画のようなLucy Leeの「The Gates of Heaven」

Paul Fraser「Scummy Man」は、とてもイギリス的な作品

Thomas Hicks「I Turn My Face To The Forest Floor」は、ワープ・レコーズとクリエイティブ・レビュー誌の映像コンペ用に制作

Jonathan Woodの「Hurry Home」は旅先から送られるポストカードをモチーフにした作品

Features

長編作品には、日本で大人気の真島理一郎監督の「スキージャンプペア -Road to TORONO 2006」、ポップ・グループのSaint EtienneとPaul Kelly監督のコラボレーションによるドキュメンタリー作品「What Have You Done Today, Mervyn Day?」の2作品の他、今夏待望の日本公開が決定したマイク・ミルズ監督による「サムサッカー」、スパイク・ジョーンズ監督による「マルコビッチの穴」、ミシェル・ゴンドリー監督の「ヒューマン・ネイチャー」、作家/イラストレーターとして知られるデイヴ・マッキーンによる「ミラーマスク」など、ワンドットゼロと関わりの深い監督達の初長編作品6本を合わせた計8作品が上映された。


日本公開間近!マイク・ミルズ監督による初長編映画「サムサッカー」

デイヴ・マッキーンの「ミラーマスク」。上映前のトークショーは大好評だった

Richard Fenwick RND Talk

6月5日(月)は、ミュージック・ビデオからテレビ・コマーシャル、ドキュメンタリーまでを手がけ、今やイギリスを代表する映像監督となったRichard Fenwickによるトークショーが、ICA内のデジタル・スタジオで行われた。現代のメディア・コミュニケーションというテーマの元、あらゆる視点から作り出されるFenwick監督のクールで美しい映像が、彼の実験的なプロジェクト「RND#」を通して紹介された。


ICA内のデジタル・スタジオ。コンピューターでは、FenwickのRND#プロジェクトを見ることができる

Richard Fenwick監督本人。小さな会場のため、フレンドリーな雰囲気

Innervisions: warp, anatomy of brand

プログラム「Innervisions」では、「ワープ:ブランド解剖」と題され、常に革新的なミュージック・ビデオを世に送り出すワープ・レコーズからレーベル・マネージャーのPhil Canning、ヘッド・オブ・プロダクションのBarry Ryan、オウテカの「Gantz Graf」のミュージック・ビデオを手がけたAlex Rutterford監督、先月行われたi-WARPで来日したばかりのFlat-EのRobin MacNicholsとMatt Batemanが登場し、ワープ・レコーズとワープ・フィルムズの歴史から、ミュージック・ビデオ制作に対する熱意を語った。


左よりPhil Canning、Alex Rutterford、Flat-E、Barry Ryan

Alex Rutterford監督によるAutechreの「Gantz Graf」。MIXIでの同監督のコミュニティーは800人を超える

Innervisions: Group Mentality

6月9日に行われたプログラム「Innervisions: Group Mentality」では、“グループ”として活動する3組のクリエイター達に焦点を当て、20分間ずつのプレゼンテーションが行われた。出演したのは、TomatoのSimon TaylorとMichael Horsham、DIESELの映像プロジェクト「Diesel Dreams」や、The Flaming Lipsのミュージックビデオ制作で活躍するブラジルのアニメーション・スタジオLoboよりMateus De Paula Santos、またパナソニックや、コカ・コーラのプロジェクトを手がけるロンドン・ベースのAirsideの3組。メンバーが世界各国にいるTomatoや、社員はみんな家族のようだと語るAirside、海外のクライアントとの仕事が多いLoboのプレゼンは、それぞれ興味深いものだった。


左よりMateus De Paula、Simon Taylor、Airsideの二人、Michael Horsham

ブラジルを拠点に活動するLoboの「You Gotta Hold On」(The Flaming Lips)

Wavelength 06

毎年人気のミュージック・ビデオのプログラム「Wavelength 06」では、ワンドットゼロ常連のフランスのPleixの「Birds」、Four TetのDVD用に制作されたEd Holdsworthの「High Fives」などが印象的。また、昨年のワンドットゼロで来日し、トレヴァー・ジャクソンと共にオーディオ・ビジュアル・パフォーマンスを披露したUVAによる初のミュージック・ビデオ、Colderの「To The Music」は、今回のワンドットゼロで、最も注目すべき作品のひとつ!(「To The Music」のミュージックビデオは、OUTPUTのオフィシャル・サイトより視聴可能)


ワンドットゼロではすっかりお馴染みのフランスのPleixによる「Birds」(Vitalic)

今年は4作品が上映されているEd Holdsworthによる「High Fives」(Four Tet)

アメリカのJoel Trussellによる「War Photographer」(Jason Forrest)

素晴らしい作品を何度も提供しているMichael England監督。フェスティバル開催中は、予告なく姿を現す監督も多い

Wow+Flutter 06

「Wavelength」と並んでワンドットゼロを象徴するプログラム、ショート・フィルムを集めた「Wow+Flutter 06」では、予算ゼロの中で9ヶ月という期間をかけて制作された、南アフリカのThe Blackheart Gangによる「The Tale of How」、またWavelengthにも登場するEd Holdsworthによる日本をモチーフとした「Seed」、Simon HillによるipodのテレビCMのパロディ版「ichav」、今まさに実験に使われる可哀想なマウスのストーリーLuois Nietoの「Carlitopolis」などが印象的。


フランスを拠点とするDoudouboyの「Magic Lantern」は、サイケデリックな美しい作品

Simon Hillによる「ichav」は、ipodのCMを自作BGMにのせてパロディ化。会場は大爆笑!

Luois Nietoの「Carlitopolis」。思わず目を覆う場面も…

Ed Holdsworthによる「Seed」は、日本をモチーフとした美しい作品

Extended Play06

今回見たプログラムの中で最も楽しめたものが、デジタル加工されたショートフィルムやアニメーション作品を集めた「Extended Play06」。ここでは、英・広告映像誌SHOTSの“世界のもっとも新しいディレクター100人”にも選ばれた日本の関根光才監督による「Right Place」、The Streetsのミュージックビデオで知られるAdam Smith監督の「What Goes Up Must Come Down」などが紹介された。中でも注目は、アニメーション・ディレクターのChris ShepherdとイラストレーターのDavid Shringleyによるブラック・ユーモアに溢れた「Who I Am and What I Want」。監督曰く、「これは、僕が誰かってことと、僕が何が欲しいかについての作品だ。僕が作るものはいつもキミについての作品だと思っているだろうが、これは違う。これは全て僕にまつわるストーリーだ。」(この作品は、現在ワンドットゼロのDVDレーベルより、購入可能)


Chris ShepherdとDavid Shrigleyによる「Who I am and What I Want」は、ワンドットゼロよりDVD化されている

Adam Smithによる「What Goes Up Must Come Down」には、映画ニル・バイ・マウスのチャーリー・クリード=マイルズも出演

関根光才監督による「Right Place」は神経質な男のストーリー

Run Wrake「Rabbit」は、切り裂いたウサギのお腹の中から偶像を見つける大人向けお伽話

Terrain

都市化する現代の街をテーマにしたプログラム「Terrain」での一番の注目は、今回がワールドプレミアでもあり、6月4日の上映前には本人も舞台に登場したAlex Chandonのショート・フィルム「Borderline」。スペシャル・エフェクトを使って、ロンドンの街を映し出したその作品では、見慣れた景色が逆さまになったり、道路を走る車がテムズ川の中へと消えていくなど、非現実的に映し出された。


Alex Chandonによる「Borderline」では、特殊効果により見慣れたロンドンの街が非現実的に映し出される

同じくAlex Chandonによる「Borderline」より。5日の上映前には監督本人も登場した

Peter Kinderによる「The Berlin Infection」。Kinder監督は、Lynn Foxを輩出したバートレット建築学校出身

ICA内のデジタル・スタジオでエクシビションも行われていたRichard Fenwickによる「RND#16 Artificial Worlds v.3.0」

では最後に、フェスティバル・ディレクターであるシェーン・ウォルター氏からこれから世界のどこかの街でワンドットゼロに足を運ぶ皆さんにメッセージ。

「ワンドットゼロというフェスティバルが、ムービング・イメージの最前線として今年で10周年を迎えられたことを誇りに思っています。人々を楽しませ、教育し、また創造力豊かな次世代のクリエイターを奮起させてきたこの10年間という歴史は、常に溢れるアイディアの源であり、視覚的に実験できる現場でもありました。フェスティバルのサブタイトルでもある私達の“ムービング・イメージの冒険”は、これからも世界各国で続いてゆきます。私たちは新たな出発と次に起こりうることの為に、新しい街、仕事、アーティスト、観客をこれからも繋いでゆけることを楽しみにしています。」


フェスティバル・ディレクターのシェーン・ウォルター。鋭い目で新たな才能を見つけ出す…

大盛況で幕を下ろしたロンドンのワンドットゼロ

ワンドットゼロ2006は、6月18日までトロント、22日よりシンガポール、23日よりダブリンと、順次世界を周る予定。日本開催はまだ先なので、もし旅先でワンドットゼロを見つけたら、ぜひこの刺激的な映像の世界を一度味わってみて欲しい。

5 コメント

  1. [...] 下の作品は、展覧会のプロモーション用映像で、展覧会自体を彫刻化したものなんです。この作品は、6月のワンドットゼロの開催中にも、ICAの大きなプラズマ・スクリーンで上映されたんですよ。 展覧会「For Everyone Forever」のプロモーション映像。まずは、名前から…。© Universal Everything 次にこの点が崩れて、展覧会のタイトル名に…。© Universal Everything それがグルグルと回り始めて… © Universal Everything 再びユニバーサル・エブリシングの名前とタイトル名…。© Universal Everything そしてさらにグルグル回りながら…© Universal Everything 過去の作品を紹介してゆく。© Universal Everything この作品を一言で表現すると…© Universal Everything …デジタル・ケバブ!動画はコチラ。© Universal Everything [...]

    Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » マット・パイクによるユニバーサル・エブリシング @ 9月29日2006年

  2. [...] 他にも、広告に関するモーション・グラフィック、アニメーション、特殊効果の仕事や、展覧会、映画祭といった商業的ではないプロジェクトもあります。数ヶ月前に作り終えたマドンナのミュージック・ビデオでは、この業界の中でも僕達の名前を全く知らなかったようなに人達に作品を見てもらえたんじゃないかと思っています。 UK発の映画祭「ワンドットゼロ」の2005年のアイデンティティ、キー・ビジュアル、オープニング・タイトルはLOGANによるもの 同じく2005年のワンドットゼロより [...]

    Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » 世界中を踊らせる制作会社、ローガン @ 12月7日2006年

  3. [...] ショートフィルムなどは、まだまだ浸透していませんね。2002年にワンドットゼロが一度開催されたことがありますが、2日間だけだったと記憶しています。 [...]

    Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » チャン・カーヒン:中国の映像シーンの現在 @ 2月16日2007年

  4. [...] PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » ワンドットゼロ_10:ワールドツアー始動! Posted in tosee by kuma on the June 26th, 2006 PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » ワンドット

    Posted by: ZeroMemory Bookmarks » PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » ワンドットゼロ_10:ワールドツアー始動! @ 3月27日2007年

  5. [...] あれは2006年2月に行われたロンドンのV&Aでのワンドットゼロのイベント「トランスビジョン」の為に制作されました。展示自体は一日だけで、初めの依頼は、V&A内の一部を選んでV&Aに応答するような作品を作るということだったのですが、V&Aに訪れた時に目の前に並んだ歴史ある美術品を見て、到底敵わないと思ったのです。そこで、僕達は展示場所に屋外の庭園であるザ・ジョン・マジェスキ・ガーデンを選び、V&Aという美術館の存在と対比するような作品を作りたいと思いました。それが、エイリアン的で意思すらあるような物体…つまり、一見恐ろしいけれど、勇気を持って近づくとその勇気に対する報いのように優しい音が流れ出す…というような作品でした。 [...]

    Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » UVA:光とテクノロジーのスペシャリスト @ 4月13日2007年

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