スコット・キャンベル:変異するトランスフォーマー

2006年4月7日 カテゴリー: イベント/展示会, インターナショナル, プロダクト, 国内, 特集

スコット・キャンベル:変異するトランスフォーマー

「ロール・モデルズ・コレクション」よりミスフォーマー作品「親友」

新宿のスコット・キャンベルのスタジオには、千体以上もの解体されたトランスフォーマーが様々な状態で置かれている。オーストラリア出身のアーティストである彼は、1999年にオブジェ・シリーズを開始し、完璧な状態の「トランスフォーマー」を完璧ではない状態の「ミスフォーマー(変異体)」に作り変える。PingMagでは、スコットが大切なオブジェを組み立てたり、設計したり、いじり回すスタジオに沢山の「なぜ?」を聞きに行って来た。

インタビュー:ウレシカ
訳:ヤマネ・ナツミ

2002年に最初の「ミスフォーマー(変異体)」展を行って以来、あなたは多くの支持を集めてるわよね。あなたの作品や展覧会(QUTアート・ミュージアムで『国際的な風景において繰り返される関係』展が先週終了)で魅了された人に、ほとんどの作品を売ってしまうと聞いたけど。

2002年の「ミスフォーマー(変異体)」展

「ミスフォーマー」を作る意図はどんなものなのかしら?

「トランスフォーマー」は、機能性の象徴なんだ。便利なマシンから、神様みたいな凄いロボットに変身するんだよ。でも、少年から大人への変身を「トランスフォーマー」で真似することは難しいよね。「ミスフォーマー」シリーズは、この概念にある程度の平衡感覚を与えたもので、中間で身動きが取れなくなってる人間と社会の現実を表したものなんだ。車でもなく、世界を救うロボットにもなりきれていない、みたいな。

Hasbro社の米国ウェブサイトの「ミスフォーマー・サイバートロン・デラックス・クラス」フィギュア

「ミスフォーマー」プロジェクトは、機能的な大人の男を育てる、工業化社会の無力さを一瞥するという形で始まったけど、すぐにもっと広い意味で社会に関係する問題を探る土台になったんだ。

それ以外でも、「トランスフォーマー」の神話の複雑さや、視覚的な言語が一つの題材として気に入ってるんだ。感触や色、一つのポーズから別のポーズに動かした時にたてる「音」が大好きなんだよ。(動画はここから)


スコットのスタジオでテストされる大きな「ミスフォーマー」

元は同じ、でも違う形

ミスフォーマーの詳細

さらなる詳細

スコットの作品は、部品や組みかえられた形なんかがとても格好いいわよね!あなたにとって、見た目とコンセプトのどちらが重要?どちらも密接に関係しているのかしら?

「ミスフォーマー」はまず第一に、目で感じるアート作品なんだ。同じアイディアについて論文や本を書いても意味は通じるけど、視覚的なアートの良いところは、ものすごい量のアイディアが一瞬で伝わるところだよね。新しいアート作品を見た瞬間に、アイディアが雪崩のように意識に流れ込んで来る感覚が好きなんだよね。

「ミスフォーマー」2003年、広島

「ミスフォーマー」シリーズの作品は、比喩的で、抽象的で、なおかつ象徴的なんだ。美しくない象徴だといろいろ問題だから、人間の目に魅力的に映るように、また一般的にも受け入れられやすい外見に作っているんだ。

あなたの作品は、見に来る人が触れて、常に変形させることで成立するけど、一般的な来場客はどんな反応を見せるの?

僕は、アート作品を観賞する人がいつも“受身”であることを不思議に思っていたんだけど、媒体としての「ミスフォーマー」が、人が作品に向き合うことでより完成度が上がるように出来たと思っている。一部の人には、ギャラリーの展示物には触れてはいけないという考えがあるけど、それさえ無くなれば、殆どの人は夢中になるんだよ。

最近行われた『国際的な風景において繰り返される関係』展で「ミスフォーマー」を変形させて楽しむ来場者

見る人が手にとって変形させることで、その人の作品への理解が変わると思う?

僕は作品の美学的なコミュニケーションに加えて、各部品の動作がそれぞれのコンセプトに合うようにしているんだ。(スコットが彼の作品を変形させている様子

その作品が“怒り”をテーマにしたものであれば、その動きもより激しくなる。“臆病”がテーマなら、その作品の動きはもっと制限される。だから、作品の動きによる感じ方が一歩進んだ何かを伝えるんだ。

作品の一つを変形させた時、人はその物に対して自分がどう反応したのかという視覚的描写を得て、自分自身の理解を深めると思うんだよね。2004年の「ロール・モデルズ」展では、「父親」や「母親」っていうテーマの作品を変形させる時の人々のアプローチが本当に様々だった。

「ロール・モデルズ」展より「母親」

「ロール・モデルズ」展より「父親」

「ロール・モデルズ」展より「父親」

あなたの展覧会のメインテーマや、作品のタイトルを知ることによって、意味が伝わってくるのがとても面白いと思うの。ストーリーが唐突に浮かんだり、象徴性や、「ミスフォーマー」と作用しあう事で新しい形や独自の意味を作ったりとか。


「ロール・モデルズ」展より

「ロール・モデルズ」より 同じ作品の変形後

私的には、2004年~2005年の作品で、人や文化が国から国へと移動するのと同時に植物もまた移動することをテーマにした「風景&植物コレクション」が特に良かったと思うわ。

「ジャパニーズ・ウォールフラワー」東京・渋谷(日本での作品。しぼんだり開いたりする巨大な花をイメージ。)

作品の一つ… 例えば「3ヶ月の稲とコカ・コーラのカカシ」にまつわる“あなた自身”のエピソードを聞かせてもらえないかしら?

インドネシアに行った時に、コカ・コーラの広告の垂れ幕が沢山掲げられた田んぼの横をよく通ったんだ。最初はずいぶん強引なことをするなぁと思っていたんだけど、その幕の殆どが逆さになってることに気付いたんだよ。それで、そこの農家の人と話して、はためく赤い幕が収穫前の米を鳥に食べられないようにするのにピッタリだと分かったんだ。昔は、米は五ヶ月ごとに収穫して、人々はその暦に沿って稲の女神デウィ・スリに感謝の儀式を捧げていたらしいんだ。今では新しい多収穫種の稲(特にIR36)がバリ島にも持ち込まれて、伝統的な宗教儀式も無くなり、いくつもの歌や儀式が耐えてしまったんだ。

これは、外国の植物や文化によって、社会の精神生活が変わったという風景の一例なんだよ。

「風景&植物コレクション」より「3ヶ月の稲とコカ・コーラのカカシ」

「風景&植物コレクション」の作品は、植物と文化がお互いにうまく作用しなかった場所で作られているんだ。

ある朝起きたら、別の農家の人が僕のスタジオのゴミを拾って、僕が捨てた「トランスフォーマー」の箱でカカシを作ってたこともあったよ。皮肉なことに、「ミスフォーマー」自体がプロジェクトの最初のテーマだったものに利用されちゃったんだ。

あはは、最高のオチね!2002年の「ミスフォーマー」の展覧会では、非機能的な「取扱説明書」も作ってたわよね。あの意図は何だったのかしら?

あれは、“意思疎通の断絶”をテーマに作ったんだ。あの時のフィギュアの多くにはイラストの説明書があって、それを作り直してもっとわけの分からない説明書にした。パっと見るとそれで作品の説明がつきそうなんだけど、実は全く当てにならないんだよ。

「ミスフォーマー」説明書:オリジナルの切り抜きを使って作り直した紛らわしいマニュアル

とっても手作りに見えるけど、これってどうやって作ったの?

最終的に使用した「トランスフォーマー」のそれぞれの説明書を切って、ナイフと糊で貼り直したんだよ。あれは何枚も重なっているんだよ。もちろん、Photoshopでやれば早かったんだけど、二次的にするよりは、本物の「トランスフォーマー」の説明書を使ったコラージュみたいなものを作りたかったんだ。その物自体と意味が合っていることが大切だったんだよね。

「ミスフォーマー」をセットで買っていた人もいれば、個別に買っていった人もいたね。

すごく時間がかかってそうね…


スコットは、様々なトランスフォーマーを使う。小さな物から…

…大きな物まで

一つの「ミスフォーマー」を作るのに、いくつの「トランスフォーマー」が使われているのかしら?

ものによるけど、2体から40体の間ってところかな。時には、あの「トランスフォーマー」の腕にしかこの小さな緑の部品がないからというような理由で、15から20体の「トランスフォーマー」を使って、それ用の小さな部品を作るんだ。

入念に選ばれた部品が組み立てられて最終的な作品になる

腕を外して、欲しい部品を取り出したら、また1体の「トランスフォーマー」が他の作品に捧げられるかもしれないし、その時まで部品の山の中に半年以上も放っておかれるかもしれない。3~4体の「トランスフォーマー」から何個か部品を取って、シンプルとした作品を作ることもあるんだけどね。


シンプルな作りの作品

数体のトランスフォーマーから部品を取って作った別のミスフォーマー

1体作るのにどれくらいの時間がかかるの?

数日、数週間、数年?その作品の複雑さや、欲しい部品の入手難易度次第だね。全部ちゃんと作らないと嫌なんだよ。

ネジとペンチと部品

よりどりみどりの部品が一杯

これまでに何体くらい作られたのかしら?

180~200体くらいかな。

凄い!じゃあ、常に作業しているのね。貴重な「トランスフォーマー」を解体するなんてありえない!って言うコレクターに会ったことはある?

何度か本物のマニアと面白い会話をしたことがる。初めての展覧会で、僕が解体した「トランスフォーマー」の値段を聞いた時には腰を抜かすかと思ったよ。こういうオモチャに人々が費やす情熱って本当にスゴくて、その物自体の価値を上げていると思うよ。

例えば、「桜」の場合だと、1体いくらぐらい?

10万円くらいかな。

どんな人があなたの作品を購入するの?

ここ何年かの間に、色々な人が作品を購入してくれているんだ。個人コレクターや美術館、他のアーティストとか。 人々が買う理由は、購入した作品の種類と同じくらいに多彩で複雑なんだよ。

「ロール・モデルズ・エクシビション」で一番最初に売れたものは、「元カノ」という作品だと聞いたけど?

そうなんだよ!彼女はあっという間に売れちゃったんだ!もしあの展示会が全部「元カノ」というテーマだったら、全作品が数分で完売したと思うね!彼女には、恐ろしいような、憎らしいような美しさがあったからね。

「ロール・モデルズ・エクシビション」のミスフォーマー作品「元カノ」(!)

作品を売る事に対しては特に問題はない?それとも手放しがたい感もあるの?

作品は何であれ、いじり回される運命にあるから、スタジオから出す前には厳しい実地テストをするようにしるんだ。その後、自分自身で楽しむ為とスタジオを訪れた人の反応を見る為に、数ヶ月は手元に置きたいね。(リンク)作品が展覧会に出ると、もちろん感情的なものはあるけど、誰かがコレクションに加えたいと言ってくれるのはとても嬉しいよ。僕の社会的役割が果たされたと感じる瞬間だよね。

スコット・キャンベル スタジオにて

他に何か付け加えたいことは?

これらの作品には倫理的価値観はないんだ。観察と記録なんだよ。いくつかテーマは、特に美しい訳でも素晴らしい訳でもなくて、何が正しいとか、間違ってるとか、物事の良し悪しを言おうとしている訳じゃないんだ。「ミスフォーマー」シリーズは、目的を達成する手段として生み出されて、作られたのであって、目的自体ではないんだよ。人は自分の思うところの道徳性を、それぞれの理由で作品に見出すんだよ。

スコット、本当に有り難う!PingMagがあなたの作品を掲載する初のオンラインメディアとなったことを光栄に思うわ(詳しくはここを読んでみて)。今後、他のプロジェクトの成功もお祈りするわ。それと、もし要らない「トランスフォーマー」がそこらに転がってるという人がいたら、コメントでご一報下さい!有り難うございました!!

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3 コメント

  1. スコットの作品、カッコイイ!目の前に物が存在するなら、触って感じ取りたい。触れる展示品っておもしろいですね。うーん、色々な角度からも視たい。展覧会で実物に出会えるのを楽しみにしています。

    Posted by: momo @ 4月8日2006年

  2. 見る人が何かを描き加えて作品になるというようなペインティングはたまにありますが、見る人によって“形”を変えられることで、それが作品になるというのは珍しいですよね。展覧会情報が届きましたら、みなさんにもお知らせしますね!

    Posted by: chiemi @ 4月8日2006年

  3. スコット・キャンベル:変異するトランスフォーマー good post983

    Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年

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