
プロセシングは、インタラクティブな作品を作る世界中のアーティスト達に利用されている新しいツール。無料で配布されることで、アーティストやデザイナー達の想像力に貢献している。今日は、プロセシング・ジャパンの代表である前川 峻志(まえかわ・たかし)氏が、世界のプロセシング、デジタル・アート、プロセシングが使われるべき5つのフィールドなどを語りにPingmag編集部へ遊びに来てくれた。
インタビュー:ジョン、チエミ
今日はお越しいただき有難うございます!では、自己紹介からお願いします。
前川 峻志です。今年の3月に多摩美術大学を卒業したばかりです。プロセシングとの出会いは、2002年にジョン前田さんが作った「design by numbers」という教育用のプログラミング環境を大学で扱っていて、ある時その公式サイトから開発途中のプロセシングを見つけたのがきっかけです。当時はまだダウンロードできず、サイト自体も原始的な状態でした。
ジョン:まずは、プロセシングが何かを、ものすごく短い言葉で説明してもらえますか?

それは難しい質問ですね。うーん、そうですね、アーティストのプログラミング環境、でどうですか?
ジョン:まだ難しいですね。子供にするように説明してもらえますか?
チエミ:さっぱり分からないので、私にも分かるようにお願いします。
そうですね、プログラミングを使って…あ、子供はプログラミング自体が分からないですよね。数字を使って絵を描く、という感じでどうでしょうか?

ジョン:素晴らしい!プロセシングはウェブ上だけではなく、インスタレーションやイベントなどにも使われていますよね。ですが、ウェブ上でプロセシングの作品を見た時に、それがフラッシュの作品にとてもよく似ていると思うんですが、フラッシュとの違いを説明して頂けますか?
僕にとっても、他の人にとっても、一番の違いというのは、プロセシングが様々な事を可能にさせるという点ですね。例えば、フラッシュですとウェブカメラやマイクから入力することが可能ですが、プロセシングではその幅がうんと広がります。フラッシュでは、外部のデータを保存したりは基本的に出来ませんが、プロセシングの場合は、自分が用意した電子機器をコンピューターに繋いで、やりとりした値を入力することなんかができるんです。

また、プロセシングの背後には、Processing.orgという大きなコミュニティがあります。そこではプロセシングが、無料で配布されていて、簡単にダウンロードできるということが主な理由です。プロセシングは、オープンソースなんですよ。
もうひとつ僕が思う重要な点は、プロセシングが企業によって作られたものではない、という点です。これは、ブロード・インスティチュートのベン・フライとUCLAデザイン、メディア・アーツのケイシー・リースという二人のアーティストによって開発されたものです。彼らはすでにターゲットを絞って開発をしたので、インタラクティブ・メディアの分野で活動する人には、もってこいのツールと言えますよね。彼ら二人は、このツールを使って何がしたいか、というはっきりとした目的を持って開発しました。これから説明するものを見て頂ければ、分かると思いますが。
フラッシュの良い点を挙げるとすれば、フラッシュは立ち上がるまでにとても早いですよね。また、フラッシュには、アニメーション派とプログラミング派がいると思うのですが、プログラミングがよく分からなくても出来てしまうのは、良い点だと思います。
ジョン:なるほど。プロセシングがなんであるかが、少しずつ分かってきました。では、ここでいくつかの事例を紹介して頂けますか?
もちろんです。

タイポグラフィーの実験”rtype01″

まるでホラー映画のような様から「呪われた文字」と本人が名付けたタイポグラフィーの実験 “rtype02″
タイポグラフィーの実験なんですが、文字をクリックしてどうなるか見てみましょう。
チエミ:面白いですね!他にはどんなものがありますか?
これは、開発者のベン・フライのValenceという作品です。英語の文章をどこからか持って来て、そこで使用される単語の回数を自動的にカウントして、知覚化したアプレットなんです。一番使用されている単語が、この3D化されたオブジェクトの真ん中に集まってくるんですよ。これは拡大や縮小も可能で、自分がこのオブジェクトの中に入り込んだようにして見ることも可能なんです。

ジョン:これも面白いですね。他にもありますか?
タイポフラフィーの作品で、ニキータ・パシェンコブのAlphabot55でしょうか。今、ひとつのアルファベットがスクリーンに出ていますよね。ここで、キーボードの他の文字を押すと… その形になるんです。これは回転させることも可能なんですよ。あと、最後に僕がすごく気に入っている作品で、Europaというものです。これはスケートする二人がクルクル回るんですが、今までのアニメーションとはひと味違っていて、動きや、描かれる線の全ては数学で操られているんです。
ジョン:面白い作品が沢山ありますね。プロセシングは、テクノロジーとアートの境界線をなくしたと言われていますが、その辺りについては、どう思いますか?
確かにそうですね。ですが、技術者とアーティストでは、違うゴールを目指しているように思います。アーティストが最終的に“美”を追求しますが、技術者はそれがいかにうまくできているか、というところを重要視しますよね。ですので、全く正反対の両者が協力し合うことで、プロセシングの可能性をより広げているのだと思います。
ジョン:プロセシングは、ウェブ上で面白いものを作るだけではなくて、リアルタイムで何かを取り込んだりすることが出来ますよね。いくつか例を紹介してもらってもいいですか?

最近の例で言うと、2005年の12月に、韓国の国立劇場で行われたパフォーマンスの間に使用されたa stringでしょうか。ここでは、プロセシングはダンサーのリアルタイムの動きを取り込み、そのダンサーの影を追うようにストリングに似たビジュアル・エフェクトを付けることに使われています。
ジョン:プロセシングがその事例に適していた理由は何でしょうか?
プロセシングは、動くものをとても素早く取り込むことができます。カメラの入力があればなおさらですね。例えば、これをフラッシュでやろうとすると、それはものすごく大変な作業になるでしょう。
ジョン:プロセシングは、日本で現在どうあると思いますか?
とても良い状況にあると思いますよ。教育できるレベルの人が、すでに5人以上もいますし。ただ、直接プロセシングの開発に関わっているという人は、ほとんどいませんね。教育の分野では、多摩美術大学、東京芸術大学、造形大学、九州大学などが関わっていて、九州大学の方は、プロセシングとカメラを使った研究をしています。

ジョン:プロセシングの歴史は2002年頃に始まったばかりです。現在までに沢山の実験が行われてきましたが、まだ断片的ですよね。プロセシングが最も適している場に関しては、どう思われていますか?
そうですね、5つの例を挙げるとすれば…
●カメラを使って、何か動くものを取り込んだりする場合。
●ゲーム。意外に使われていないのが現状ですが。
●VJ。事例を見ていないので確かではないですが、先ほどのダンサーの例と同じで、カメラを利用して観客の動きを取り込んだりすることは可能でしょうね。また、音とシンクロさせることも出来ますので、iTunesのビジュアライザーのようなものを簡単につくることができます。

●研究関連。例えば、SonyのCSLラボで研究を公開している日があって、昨年授業でたまたま訪れたんです。その時に新しい入力機器を提案していて、圧力が感知できるトラックパッドがあったんです。そこでは写真を使ったデモを見たんですが、それがプロセシングで出来ていました。それは、自作の機器と通信させるのに、最も適しているのがプロセシングだからなんですよ。
●グラフィック・デザイン。プロセシングは、数学がベースになっていますので、何かの形やオブジェクトを繰り返し作るのは、容易に出来るんです。例えば、イラストレーターで何かを何千回描こうとしたら、大変な作業ですよね。ですが、プロセシングだと、ちょっとした数学の知識があれば、簡単にできてしまう。素晴らしいのは、プロセシングの最新版では、PDFを作るバージョンがサポートされたんです。ですので、プロセシングで作ったものをPDFで印刷することが可能なんです。あと、イラストレータのファイルとして書き出すことが出来るプラグインもあるんですよ。
ジョン:素晴らしいアイディアですね。では、テクノロジーとアートの融合という話題になったところで、何か紹介したいものはありますか?プロセシングに関係なくても良いですよ。
では、ぜひこれを見て下さい。江渡浩一郎氏によって作られた無料でダウンロードできるアプリケーションで、Modulobeというものです。これは、LEGOのようなブロックで、生き物を作ることができ、さらにそれに“命”を与えて、歩かせたりすることができるんです。ウィンドウズだけですが、遊んでみるとすごく面白いですよ。

あと、Sonasphereも。これは、3次元空間で物を振り回すことで音を変化させるというソフトなんです。点の重力を変化させたりすることで、音を奏でることができるんですよ。無料でダウンロードできるので、ぜひ試してみて下さい。こちらはマックのみの対応です。

ジョン:すごいですね!では、最後の質問です。もう公表しても大丈夫だと思うのですが、今月からPingmagも所属しているイメージソースに入社されるんですよね。入社されたら何がしたいですか?
そうですね。僕はデザインとプログラミングの両方が出来るように学んできたので、まずはその二つの橋渡しができるようにしたいですね。あとは、フラッシュに限らず、技術サイドに貢献したいです。
ジョン:入社される日を楽しみにしています!プロセシングを使ったインスタレーションのお仕事なんかもしてもらえるといいかもしれないですね。今日は本当に有難うございました!
チエミ:来週お会いましょう : )
4 コメント
ウェブマガジン「PingMag」及び、姉妹サイト「PingMag MAKE」は、2008年12月31日をもって休刊いたしました。これまで応援して下さった世界中の皆様、またご協力頂いた皆様に、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。
PingMagの姉妹版、日本のモノづくり情報を世界に発信中!
PingMagから大切なお知らせ
2008年12月31日
板谷龍一郎:色鮮やかでユーモア溢れる世界
2008年12月29日
マギボン:YouTube発のネットアイドル
2008年12月26日
ベネデッタ・ボッロメティ:たくさんの元気をくれる不思議な絵
2008年12月24日
中銀カプセルタワービル:未来の建築
2008年12月22日
花村えい子:キュートでポップな60年代の少女マンガ
2008年12月19日
日本のハイテクトイレ事情
2008年12月17日
アミューズメント:アートやファッションと融合するゲーム文化
2008年12月15日
HIROCOLEDGE:現代に溶け込む新たな伝統
2008年12月12日
瀬戸正人:ビンラン売りの甘い誘惑
2008年12月10日












[...] http://www.pingmag.jp/J/2006/03/31/processing-maths-to-art-in-one-simple-step/ [...]
Posted by: wild but harmless! » Blog Archive » keep closer to processing @ 4月7日2006年
[...] PingMag has a featurearticle about Processing in Japan. [...]
Posted by: D.E. » @ 6月7日2006年
[...] その他だと、インストア・アニメーションやテレビの仕事、プロセシングの仕事が多いですね。プロセシングの仕事では、ウェブカムを使って動きを作り出し、アニメーションを反応させるんです。つまり、手を振ると、アニメーションが動くといったものです。 [...]
Posted by: PingMag - 東京発 「デザイン&ものづくり」 マガジン » Archive » マット・パイクによるユニバーサル・エブリシング @ 9月29日2006年
[...]
Posted by: 匿名 @ 8月23日2007年