CBCNET : デザイナーをつなぐ

2006年2月10日 カテゴリー: イベント/展示会, グラフィック, 国内, 特集

CBCNET : デザイナーをつなぐ

CBCNETの栗田洋介さん

栗田洋介さんは、日本の若いデザイナーたちを繋ぐネットワークを作りを支援するプロジェクト、CBCNET(Creativity Between Communication)の設立者だ。PingMagは彼に、デザインカンファレンスを通してデザイナーのモチベーションを高める方法や、彼をはじめ才能のある人々になぜコミュニケーションを促すネットワークが必要なのか、などお話を伺った。

インタビュー:ウレシカ
翻訳:キョウコ

- このインタビューは英語で行われました -

ヨースケ、あなたは以前 +81で仕事をしていて、その頃から日本をはじめ海外のグラフィックデザイナー達との交流が始まったと聞きます。英語が話せるからという理由で、+81が数年前にあなたをシドニーで行われたSemi-Parmanentへ送り込んだ事を皮切りに、世界中のデザイン会議に出席し続けているとのことですが、これらのカンファレンスから得た事はなんでしょう?また、それをどうやって日本に持ち帰り(還元)しているんですか?

シドニーで行われたSemi-Parmanent

まだ僕が学生で、デザイン雑誌やウェブサイトを見ていた頃の事だけど、デザイン界のスターたちは違う世界の住人で、とても遠い存在に思えた。そりゃ、記事を読めば読むほど彼らが身近に感じられるようになったけど、彼らが実際に存在しているなんてなんだか信じられなかった…カンファレンスでホンモノを見て、話す機会が得られるまでは、ね。

この事がきっかけになったんだ!きっと世の中には僕のように、「部外者だ」って感じている人がたくさんいるんじゃないかなって。つまり、面白い出来事が実際にはまったく起きていないように感じている人が多いんじゃないかって。とくに相手が海外のデザイナーで、考え方も違って日本語が通じない時にはね(笑)。

そんなわけで、このコミュニティーをもっとエキサイティングなものにするための手助けが、僕に出来るんじゃないかと思った。みんなが思っているより、世界は身近なものだって事を人々に伝えたいと思ったんだ。(ところで、デザイン会議が行われている時のシンガポールは、多くの国際的デザイナーに会ういい機会で、デザイナーの休暇にはもってつけだよ。)

うーん、知らない人と会って話をする事って、そんなに難しいかなぁ…?

もし、海外のデザイナーとおしゃべりしたり、仲良くなる事がみんなにとって簡単な事なら、僕は他の事をやるんだけどね(ニッコリ)。

どんなカンファレンスがおすすめですか?

そうだなぁ、まず、街によってそれぞれ雰囲気が違うからね。

FITC カンファレンス

IdN のように大きなカンファレンスでは、まるでコンサートのように1000人もの人間が1人のスピーカーをじっと見てるから、他のデザイナーと親しくなるのが難しいんだ。 カナダのFITC のような小さいカンファレンスの方が好きだね。実際に人と会って話せるし。どのカンファレンスでも言える事だけど、何百人という人が、デザインやアートの話題で興奮しているの目の当たりにするのは、すごくエキサイティングな事だね。

ではその思いが、あなたに日本の若いデザイナーのためのカンファレンスAPARTMENTを始めさせたんですね?今までの時点で、日本でオーガナイズしたデザインカンファレンスの手応えはどうですか?

APARTMENTでプレゼンする岩井俊雄氏。東京のSuperDeluxeにて。参加者の楽しそうな笑顔!

みんなすごく気に入ってくれているよ!実際、すごくポジティブな反応ばかりでびっくりしているよ。一番最初の回では、SemiTransparent Designや、浜田武士さん、岩井俊雄さん、 hatos crewを招いてプレゼンしてもらった。グラフィック、メディアアート、ウェブにストリートアート、いろんなものが一同に集まる、こういう事がずっとやりたかったんだ。

APARTMENTでプレゼンするSemitransparent Design 。東京のSuperDeluxeにて

日本では、デザインのテクニカルな面については、多くの討論の場がある。どうやって問題を解決するか、とかね。

でも僕は、APARTMENTでプレゼンしたデザイナーたちには「なぜ」彼らがこのプロジェクトをやったのかとか、何に刺激を受けているかとか、叶うとしたら誰と一緒にコラボレーションしてみたいかとか、そういう事を話してもらいたかった。参加した人たちがやる気を起こしてくれて「早く家に帰って、なにか新しいものを作りたい!」ってわくわくしてもらいたいんだ。

APARTMENTでパフォーミング中のhatos crew。東京のSuperDeluxeにて

クリエイティビティは、新しい人との出会いや会話から生まれると、僕は強く信じているよ。

インスピレーションを与えるという事以外で、CBCNET、またはあなたが新しく設立した会社Grandbase Inc.でやろうとしている事はなんですか?

Grandbaseは、まさに名前の通り僕らの「ベース(基盤)」になるもので、デザインのプロジェクトに興味がある他の人たちにとっても、同じくベースになるといいなと思う。これからは、もっと多くのカンファレンスを行いたいと思うし、最近のプロジェクトである折りたたみ自転車BeBIKEのようなプロジェクトもどんどんやって行きたい。

BeBIKEプロジェクトって何ですか?

BeBIKEというのは、日本の自転車の会社で、このプロジェクトのゴールはBeBIKEを世界中に紹介することなんだ。彼らはマウンテン・バイクのシリーズを出しているんだけど、アメリカのグラフィティ界の大物、FuturaやHazeにこのシリーズのスタイリングを任せたんだよ。BeBIKEから、今度はもっとポップな仕様の折りたたみ式自転車を広めたいから、僕らにクールなグラフィックデザイナーを選んで欲しいと依頼があったんだ。

Sunday-Visionがスタイリングを担当したBeBIKE

それで、どんなデザイナーを選んだんですか?

Sunday-Vision (日本)、Geoff McFetridge (アメリカ)、Rinzen (オーストラリア)、 Power Graphixx (日本) 、そして PhunkStudio (シンガポール)などだね。詳細については、CBCNETでもうすぐ公開するよ!

グラフィックデザイナーにとって、別のフィールドで仕事をする事はすごくいい機会だと思う。以前+81にいた頃に Garcia Marquezのカレンダーシリーズの仕事をしたんだけど、カレンダー用のテキスタイル・デザイナーを海外から3人選ばなくちゃならなかった。このテキスタイルは次のシーズンではバッグとしても使われる事になるかもしれなかったんだ…。Chuck Andersonのバックは、女の子用のバッグとして、実際に販売されたよ。

Chuck Andersonがテキスタイルを担当したGarcia Marquezのバック。ディテール

Chuck Andersonがテキスタイルを担当したGarcia Marquezのバック。ディテール

グラフィックの世界で既に有名な彼のような人が、カテゴリーの垣根を越えてファッションのデザインをしたのは素晴らしいと思う。こんな風にして、今まで彼らの名前さえ聞いた事がなかった人々に、知ってもらうチャンスができたんだから。

あなたは、いろんなアーティストとコラボレーションしていますよね。たとえば、EIGHT8 プロジェクトでは、FLASH 8のプロモーションのために、8人のデザイナーとコラボレーションしていますし…。ただ、多くのデザイナーが、少なくとも見た目の上では似たような作品を作っているように感じてしまうんですが、「いいデザイナー」「クールなデザイナー」とただの物まねのデザイナーを分けるものはなんでしょう?

EIGHT8のスクリーンショット

「いい」も「悪い」もないというのが、僕の正直な感想だよ。僕がコラボレーションのは、彼らの人間性が好きだからだし…。もちろんまず作品ありきなんだけど、デザインやアートはその人の人となりから生まれてくるものだと思うし、僕はまずその人の人間性に興味を引かれるんだ。話をしていて僕をわくわくさせてくれれば、僕はその人の作品にもっともっと興味を持つし。なぜある特定の人間に自分が惹かれるのか、という事に関しては、自分の直感を信用しているよ。

では、日本のデザインシーンの事をお聞きします。私の個人的な印象では、多くのデザイナーがコミュニケーションを苦手としていて、メールやブログでじっくり時間をかけられるときは自己表現ができるのに、すぐにその場で何かの発言を求められたりする事は得意ではないように感じました。

欧米諸国と、まったく違うのは確かだよね。

ResFestに行った時の事なんだけど、400人もの人間が、フィルムやモーショングラフィックに興味があって集まっているというのに、知らない人との会話がまったく生まれていなかったんだ。一人で見に来て、一人で帰る。でも本当はみんな、多くの人と知り合いになりたいと思っていると思うよ。

そんなわけで、僕は人と人をを引き合わせようと努力しているんだ。それに、CBCNETを通しても、そのお手伝いが少しは出来ると思う。例えば、ある人についての記事をCBCNETで読んだとする。そしたら、カンファレンスなんかで実際に会った時に、その人の所に行ってちょっと話してみようかな、と思ってもらえると思うし。

CBCNETのスクリーンショット

この苦手の原因はなんだと思いますか?チャットやブログでつねに誰かとコミュニケーションをしているのに、実際に会って話すとなるとうまく出来ないという、私たち若い世代にとっての共通の問題だと思いますか?それとも、日本人がシャイである事が理由だと思いますか?

それは場合によると思う。多くの日本人は、既に面識のある人たちだけでグループをつくる傾向があると思う。この事はAPARTMENTでもわかったんだけど、もっとみんなの垣根をとっぱらうために、こういうイベントはすごく必要だと思う。

とはいえ、シャイで、考えを心の内に秘めておく性質は、「日本人」らしさを作り上げているものでもあると思う。僕ら日本人のコミュニティーは海外のコミュニティーとは大きな違いがあるし、いまはいろんな事がオープンになってきているとはいえ、これからも文化の違いというものは完全にはなくならないと思う。僕は、みんながそれぞれのやり方でコミュニケーションをしようと試みる限り、内気さもすごくポジティブな事になりえると思う。

ストリートアート。CBCNETスタッフによる写真ブログTANKより

うーん…このトピックに関しては、即答するのが難しいね…もっと時間をかけて考えてみたいと思う。この事は、考えてみる価値がすごくあるね!

わかりました!あっ、ちょっと気にかかっている事なんですが、デザインのイベントやストリートアートの展示会なんかでも、女性が本当に少ないですよね?同じ女性として気になっているんですが、日本の女性のデザイナーはいったいどこにいるんですか?

この前のAPARTMENTのカンファレンスでは、女性も招待したんだよ。でも結局スケジュールがあわなくて「男の子だけの」カンファレスになってしまったんだ(笑)。今度のイベントでは、男性と女性のバランスをとりたいと思う(ニッコリ)。

SuperDeluxeで行われた、2回めのAPARTMENT。大盛況!

Grandbase Inc.の今後について聞かせてもらえますか?

今は、本のプロジェクトをやっているところで、6月までには公開できると思うよ!

本のデザインについては、シルクスクリーンや、いろんな種類の紙、白黒のプリントでで実験的な事をしてみたいな…。グラフィックと、インタビューと、レポート、3部構成の美しい本になるはずだよ。このプロジェクトも、インターネットと、実際の行動、コミュニケーションを組み合わせたものになるね。

これは、インディペンデントなプロジェククトになりそうだから、約1000部しか作らないけど、出来れば世界中で流通させたいね。日本では、インディペンデントな本ってあんまり出ていないしね。

次回のAPARTMENTの開催予定は?

次は4月の予定で、今度は海外からのゲストアーティストを招待したいと思っているよ。

Groundbase Inc.の山森晋平さんと栗田洋介さん

いろんな事がまだ始まったばかりなんだ。新しいオフィスにだって、今から引っ越そうとしているくらいなんだよ!バーチャルなメディアをうまく利用して、コミュニティーのためのリアルなプロジェクトを作り出して行きたい。今後の予定については、CBCNET をチェックしてほしい!

日本の若いデザイナーのシーンについて、いろいろ分かりました。今日は本当にありがとうございました!

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