
広尾の駅からすぐの公園沿いの道を歩いていくと、突然目の前がひらけてその素敵な建物が現れる。坂雅子さんのお店acrylic SHOPだ。
「日が当たって気持ちがいいから、インタビューにはぜひお昼にいらしてください」せっかくそう言ってもらったのに、当日はあいにくの雨。くやしがる私たちを迎えてくれたのは、坂さんの優しい笑顔とあまーい苺だった。「苺を食べ終わったら、質問に答えますね」そんな風に、この日のインタビューはとてもリラックスした空気のなか始まった。
インタビュー:ウレシカ&キョウコ

とーってもおいしい苺が私たちを待ち受けていた

…そう、坂さんの笑顔で、苺のおいしさも倍増
まず、坂さんがデザインを始めた背景などをお聞きしたいのですが、もともとグラフィックデザイナーとしても活躍していらっしゃったんですよね?

グラフィックデザイナーの時代に、一番最初に手がけたお仕事
漠然と建築に興味があったので、大学卒業後、建築会社で働きながら自分のやりたい事をさがしていたんです。日本人女性にありがちなんですけど(笑)その後、設計事務所に入り、デザインの基礎をたたきこまれました。厳しい修行でしたが、建築はいろんなことの基礎になるので、大変勉強になりました。グラフィックデザインを始めたきっかけは、ドイツやスイスのすごくシンプルでクリアーなデサイン を美しいと思っていたからなんです。数年間事務所で働いたあと独立、2001年ロンドンに渡り、一年間フリーランスのグラフィックデザイナーとして働きました。
それがどのようにしてジュエリーに興味をもつようになるんですか?
ある時プレゼントで大きなアクリルのアクセサリーをもらったんです。それで衝撃をうけてこれだぁって(笑)十代の頃から大きなアクセサリーは好きで、ずっと身につけてはいたんですけど、その時こういう素材のものがアクセサリーになるのか、と思いましたね。そして、ロンドンから帰ってきて、一緒に作品をつくってくれる人を捜したんです。

そして帰国後、2003年に「acrylic」を設立されたわけですが、acrylicという名前を選んだ理由は?
アクリルという素材が好きだからです。ずっとアクリルのアクセサリーをコレクションしていましたし。あとは、「アクリリック」というサウンドが好きですね。今は他の素材を使ったりしていますけど…他のアーティストともコラボレーションする際も、その基準になるのは、素材にこだわっている人、という事なんですね。だから、マテリアルにこだわっている事の象徴として、acrylicという名前にしたという感じですかね。 軽くて、クリアで、光によって見え方がちがって…面白いです。

アクリルのアクセサリー。表面のテクスチャーが特徴的

スポンジの作品、クローズアップ

坂さんのプロダクトはどのような方が買って行かれますか?
学生さんなどの若い女の子も多いし、そして男性のお客さんも結構いらっしゃいますね。私はユニセックスなものを目指しているので、それはうれしいです。ご自分でももの作りをされるというお客様も多いですし、MoMAのミュージアムショップでは、デザイン好きの方が特に多かったようです。
では、実際に作るプロセスやデザインについて聞かせてください。
例えば、このアクリルのアクセサリーは、私がデザインしたものを、モデルメーカーの香川元さんが仕上げています。実際の制作過程は、ハンドドローイングでモチーフをきめて、すぐにそれをイラストレーターでデータにしています。初めてつくるものは必ずカッティングして紙のモデルを作って、紙のブレスレットや紙の指輪をはめてみる。それでももうレーザーカッターに出しちゃいますね。

シンプルな形と色が特徴的なacrylicの作品

シンプルな形と色が特徴的なacrylicの作品
レーザーカッターにかけたアクリルはすごくラフで、ぺらぺらなんですね。だから、それを見ても美しいものではないんです。そのガギガギを香川さんが全部おとしていって、染めて形になっていく。もちろん、色やテクスチャーを彼と一緒に決定していきますが、私たちの好みはすごく似ていますし、彼はいつも最高のものを提供してくれます。彼は、本当に丁寧に仕事をする人で、例えば、小口のところまで緻密に作業するために、この指輪に合わせて自分でツールをつくったりしているんです。彼の作業は一ヶ月くらいかかります。職人ですね。
ubushinaとコラボレーションをした、漆とアクリルの指輪がありますよね。とても珍しい組み合わせだと思うんですが。

漆とアクリルの組み合わせは結構古くからあったんですよ。あと、漆のアクセサリーも、かんざし、ブローチなど結構ありますし。ただ、アクリルと漆を組み合わせてアクセサリーにしたのは初めてかもしれないですね。
これ、すごくきれいですね。横から見るとまた、漆が透けて見えて印象が変わりますし。この作品で漆を取り入れていますが、日本の伝統的なものから特に影響を受けていると思いますか?
特にそうではないですね。ただ、私はミニマムなものが好きなんです。伝統的な日本のスタイルというのはとてもミニマムですよね。そういう理由から、日本の伝統的なスタイルには興味はありますけど。とてもシンプルだけど、例えばこの漆の刷毛むら、こんなニュアンスは他のものじゃでないですよね。車の塗装などでも試したんですけど、こんな色気は出ないでしょう。それに、漆のにおいも好きですね(笑)

このシルバーを使った指輪は、村田朋子さんとのコラボレーションです。すごくオリエンタルな雰囲気で、シルバーのアクセサリーとしてはユニークだと思います。私のプロダクトは形がシンプルなので、テクスチャーによって印象が違うし、テクスチャーで暖かみも出てきますね。
坂さんの作品は、とてもエレガントであるのと同時に、工業製品っぽい雰囲気がありますよね、例えば「Dial」(写真一番上)という作品ですが、思わず身に付けてまわしてみたくなります。


それに、「Dial」や「Octopus」では、アクリルだけでなく、スポンジをつかった別バージョンを出していて、ここでは、また違った感触を楽しむことが出来るわけですが…
私のイメージは、グラフィックデザインや、工業製品からインスピレーションをうける事が多いんです。スポンジの作品は、工場で型抜きして作っているので、まるで一枚の平らなスポンジのようにしか見えないんです。

スポンジは一枚のシートのようにしか見えないが…

押し出すと、アクセサリーが現れる

面白い素材を使う時って、作ってみないとどんな問題が出てくるかわからない。だから、とにかくまずは作って、問題点や解決策が見えてきたところで、あとは何度もやり取りしながら仕上げて行きました。
色についてはどうですか?白黒の作品が多いようですが。
カラフルな作品もずっと作りたかったんですが、ただ、アクリルのシリーズでは色を増やすのは難しいんです。というのも、透明なアクリルを染めてもなかなか鮮やかな色がでないので。黒だと光を遮るのではっきりした色がでるんですけど、私は、ビビッドな色が好きだから…。色がついたアクリルもあるんですが、その色は私が求めている色とは違うので。

妹と一緒に作っているバッグのシリーズでは、割と鮮やかな色のものを出していますよ。実を言うと、私はいつもコラボレーターをさがしていて、一緒に作る人が欲しいですね。だから、この場所が出会いの場所になったらいいなと思います。作る人たちが集まってくれて、こういう事が出来ますよとか、こういう素材がありますよ、とか情報を交換できる場所になればいいですね。

ところで坂さんの作品は、とても洗練されていて、大きくて大胆でとても目を引きますよね。以前、ANAの翼の王国の記事で読んだのですが、旅にいく先々で、とてもユニークなアクセサリーだと言う事で、いろんな人から話しかけられるという話でした。目立つオブジェをデザインする上で、この事は坂さんが目標とされる事ですか?つまり、人とのコミュニケーションですが…。
そう、確かに、acrylicを身につけているとよく話かけられるんですよ。ニューヨークとか、ユーロスターの中でとか。中には今ここで売ってくれという人もいますね(笑)「見た事もないから」って。でも、私はシャイなので…(話しかけられる事が目標というわけではないです)。でもね、コレクションしていた時代から、アクリルのアクセサリーを付けていると外国に行くたびに人から話しかけられたんです。その事がとても新鮮で、人から話しかける楽しみを覚えたのかもしれませんね。

ジュエリーは、例えばプロダクトデザインである、デコレーションであるという事以外で、実際の機能はありませんよねーつまり、自分を表現するという事が第一の目的であるように思います。では、坂さんにとって、ジュエリーの意味/目的とはなんでしょう?
いい質問ですね!そうね、私はアクセサリーなしでは生きられないから(笑)。うーん、アイデンティティー…やはり自己表現ですね。でもお洋服だってそうですよね、機能性だけだったら、もっと地味なものでいいわけでしょう?お花を飾ったり、アクセサリーをつけるたりしてみんな自己表現をしている。でも改めて、なぜ人は機能がないのにアクセサリーを身につけるかという事を考えてみると…
私の場合は、価値観を共有できる人を探すセンサーにしているのかもしれません。
お店に来て気がついたんですが、とても高品質な手作りの作品と、値段が安めで、工場で多く生産できるプロダクトとがありますよね。今後のacrylicはどのようになって行くのでしょうか?

もちろん、時間をかけて作られた作品もとても大事ですし、それを気に入って購入してくれる方がいる事もとても嬉しい事です。ただ、同時にもっと多くの人にアピールする事もやってみたいです。
こうやって毎日お店にいると、初めて見たのにワーって言ってくれる人がいたかと思うと、全然興味ないっていう人がいたり。あとは、「これ、何に使うんですか?」っていう質問を人がいたりね(笑)。もちろんacrylicのブランドに合うものしか、取り入れる事はしないだろうけど、確実に毎日勉強になっています。
今日は本当にありがとうございました。とても楽しかったです。そして苺、おいしかったです!
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このサイトをみて、「よし!こういうアクセサリーの似合う女になろう」と目標ができました。
素敵なお店を紹介していただきありがとうございました。
Posted by: Tigers7022 @ 2月14日2006年