
作家であり、プロデューサーのミヒャエラ・ヴイーザー(Mic Vieser)と、東京のソニー本社でシニア・デザイナー/プロジェクト・リーダーをしていたレト・ヴェタック(Reto Wettach)の二人は、2002年にそれぞれの仕事をやめた。そして5年間暮らした日本を後にして、代わりに、故郷であるドイツを再発見するための旅に出る事を決意した。

ドイツの地図。訪れた場所
どのようなアプローチでドイツを検証したらいいのか、まだはっきりとは分からなかったけれども、とにかく二人はdrifting friends(放浪する仲間たち)というプロジェクトを開始させた。キャンピング・カーで6ヶ月間国中を旅するというプロジェクトだ。そして彼らは、この旅からドイツをより深く理解するだけでなく、知らないものを見つけ出す方法、人里離れた場所で何かと出会う方式を発見した。
ここで紹介するのは、彼らの物語だ。彼らがどのようにして旅を始めたのか、どのようにしてそれが本となって出版され、世界中で展示会やワークショップを行うに至ったか話を聞いた。
インタビュー:ウレシカ
訳:キョウコ
difting friends プロジェクトードイツ縦断の旅を開始するにあたって、背景にあったアイデアはどんなものだったんですか?
M(ミヒャエラ): すでに何もかも分かったつもりでいる国を旅して、違った角度からものを見ようと試みる事・・・そんな所かしら。海外で長い事生活していたから、当時はまだ物事を違った角度から見る事ができたの。その感覚を失わないうちに旅をするのが大事だと思ったわ。
R(レト): 私たちは、誰も知らないような場所を発見するように心がけたよ。みんなに忘れられたり、ガイドブックから未だに発見されていないような場所で、風変わりで、ストーリーが隠れていそうな場所をね。

じゃあ、どのようにしてみんなから忘れられてしまった場所の情報を得たんですか?
M:まず最初に、地元のレストランでランチを食べたりして、ウエイトレスとおしゃべりするの。この事が結果的に重要な鍵になるのよ!人々は私たちのプロジェクトにすごく興味を持ってくれて、特別な場所を教えてくれたわ。だから、私たちがやるべき事は、人々とコミュニケーションをとり続けて、その内どの場所がキラリと光る何かを秘めているか、見極めることだけだったの。
ドイツの全般的な印象はどんなものですか?
M:こんなに豊かで、文化的な土地だとは思っても見なかったわ。興味深い場所が多すぎて、時には一週間で30kmしか移動できない事もあったくらい。概して、古いものが数多く残っている事に気がついて、とても感動したわね。
R:団体でだったり、個人でだったりするんだけど、すべてのエネルギーを注ぎ込んで夢を実現させようとしている人々が大勢いる事に本当に驚いたね。
P

ポメラニアンのベッドの博物館。ドイツ民主共和国軍隊の4人用寝袋…

…それと、白雪姫の棺桶。いろんな眠りを体験してみたい方にどうぞ。私はどっちで寝てみたいか、ちょっと決めかねてます
私たちの本「Overlooked Sights(見逃されている景色)」が完成した時、この本が「エキセントリックなドイツ」を暴露した初めての本だと、何度も言われたよ。ドイツ人と言えば、きまじめで有名だけど、僕らが発見した事といえば、ドイツという国にはいろんな種類の人間がいて、いろんな種類のプロジェクトがあって、そしてとてもクリエイティブな国だという事さ。
あなたの本についてですが、シリアスなものからカジュアルなものまで、ドイツのさまざまなメディアで取り上げられましたよね。テレビ・ラジオのトークショーに招かれたりもして。今では「ドイツに関する事」でよく意見を求められたりしていますが、あなたのプロジェクトがこんなにも支持を集める本になった理由はなんだと思いますか?

Overlooked Sights. German Places. の表紙
M:費やした大量の時間と情熱よね!(笑い)休暇をとって、私たちの経験を一冊の本にまとめることで、ドイツにやっと帰ってきたんだって実感できたわ。それと、出版社であるIC Berlin に巡り会えたのは本当にラッキーだった。私たちが「こうしたい」と思う通りにやらせてくれたんだもの。
R:たぶん、単純にこのような本が今までなかったからだと思う。メインストリームをはずれて、ステレオタイプじゃないドイツをあつかった本はまったくないはずだよ。私たちの本が販売されてから、たくさんの手紙をもらったよ。こんな本が欲しかったとか、こんなプロジェクトをずっとやってみたかった、てね。
私たちのプロジェクトのアプローチが成功した事、ドイツで受け入れられた事を確認できたのはうれしかったね。

旅でいろんな場所を見てきたと思いますが、お気に入りのエピソードを聞かせてくれますか?
M:ミセス・シュワッブの話が好きだわ。彼女は修道女にとても魅力を感じていたから、ドイツのすべての修道女の衣装をミニチュア版にして手作りし始めたの。自分の小さな展示スペースまで作ったんだから。

それと、職人技の結晶と言える「Junkerhouse」も印象に残ってる。寂しい一人の男性が、完璧な妻が現れるのを待ちわびて、20年以上、家のありとあらゆるパーツに彫刻を施したものなの。生きている間は、けっして評価される事がなかった彼だけど、今では町の人たちがこの場所の美しさを発見したわ。2つとも、一人の人間が個人的な夢を追い求めたというお話よね。


R:私は「museum of lies(嘘の博物館)」も好きだったよ。これは東ドイツの反抗的なアーティストが、ベルリンの壁崩壊後に建てようと決めたものなんだけどね。理由の一つは、(これは西側にもあてはまることだけど)壁がなくなった当時、こうなったらいいなと望んでいた事が、必ずしも真実ではなかったからなんだ。ここででは、ゴッホの耳を見たり、タイタニック号の最後の音を聞いたり、空飛ぶじゅうたんに乗る事まで出来るんだよ・・・ここで一泊する事も出来るし、安い値段でお土産を購入する事もできる・・・一人の男が作り上げた世界だよ・・・。


M:他にもたくさんのテーマがあるのよ。宗教、食べ物、おとぎ話、それから自然現象・・・例えば底なし沼とかね。小さな小さな沼なんだけど、地球の裏側までつながっていると思えるような場所があるの。この沼に関して面白いのは、この沼にまつわる話を人々が作り上げて、それが何世紀もの間伝わってきている事だわ。

R:たくさんの話を聞いたけど、その話によって伝わってくるのは、物事に対する尊敬の念だね。この事は私たちにとっては、ドイツに関する新しい発見であり、美しい事だと思う。
あなた方は、レクチャーを行ったり、ワークショップで、放浪の仕方、ものを発見する方法などを教えていますよね。例えば、デンマークのChaospilots 、ミラノの Salone di Mobile、ベルリンのマネージメント会議、それから東京の SuperDeluxeでも。
話のコアになる部分はなんですか?
R:それは、serendipity(セレンディピティ:予期せぬ良い物/楽しいことを見つけ出す才能、幸運、掘り出し上手という意味)と、ものを見つけ出す「方式」についてだね。
M:セレンディピティという言葉は、探してもいなかったものに思いがけず出会う事、言い換えれば、干し草のなかの針(ことわざ:捜しても見つかりそうにないもの)を探していたのに、農家の娘を見つけ出すような事よね。いつもスピーチを始めるにあたって、人類の歴史の中のセレンディピティの例を挙げるの。例えばバイアグラ。あれってもともとは狭心症の治療薬に開発されたのよ。人体で実験が行われている時に、まったく狭心症の症状が改善されているようには思えないのに、ユーザーがバイアグラを続けてほしがる事に、医師は驚いたそうよ・・・こういった発見もセレンディピティと言えるわ。
でも、セレンディピティって人に教える事が出来るんですか?
R:うん、そう思うよ。例えば、何かにぴったりの形を探す事でもいいんだけど、ものを発見したり、デザインしたりする「過程」を大事にして、そのプロセスを信じる事だよ。多くのデザイナーは、すでにこの事を知っていたり、直感的に判断していると思う。何かを見つけ出す道のりは、安易なものではないよ。だから、クリエイティブなアイデアがいつでも出てくるように心構えが必要だし、いつでも捜査にのりだす準備ができてないといけない・・・探していたものと全く違うものが見つかった場合でもね。

レクチャーをしてみて、気がついた事はなんですか?
M:セレンディピティというのはとてもシンプルな事だけど、このコンセプトを初めて聞いた人はとても興味を持ってくれたの。これって理想的な心の持ち方だと思うの。偶然を受け入れる心とでも言うのかしら。私たちの話を聞いた人たちが、もっとセレンディピティっぽく、探究心をもって暮らしたいと思ってくれた事は素晴らしかった。つまり、物事をなすがままにしておく、引き止めずに手放す、そうすると、もっと素敵な事が起こるようになるというシステムなのよ。
**あなた方のトークショーで、「wandering craftsmen(渡りの職人)」(注1)の話が出ましたよね。この伝統的な職人さんのシステムと、セレンディピティ、そして現代のネットワーキングについてはどんな関係があるんでしょう?

wandering craftsmen(渡りの職人)が旅をしているところ Photo: Gabriele Kantel

wandering craftsmenの古いロッジ
R:仕事の経験や革新を裏付けたり、役に立つ情報の伝達したりという彼らのシステムは、中世に発展したんだ。彼らは徒弟を3年と1日のあいだ旅に送り出した。普通のレールを離れて物事を違った視点から見る事の重要さを信じていたんだー移動を続けて、探して、見つけ出す事をね。この制度が今でも通用する事を知るのは、本当に興味深い事だよ。もっとオープンなコミュニケーションを利用して、お互いに助け合って・・・でも同時に秘密結社のように行動していてさ。ひょっとしたら現代の方が、知識を共有しつつも秘密を守るって事が大事になっているのかもしれないね。だからこそ、興味深いんだね。(ニッコリ)

wandering craftsmenについてのリサーチを行ったことで、すごく刺激をうけてね。セレンディピティと、成功を見つけ出すプロセスの作り方についてのフレームワークを作ったよ。以下の5つから構成されているんだ:
移動を続けること
記録を残すこと
「旅を遅れさせるようなものを、何も持ち歩かない」
ものを探す自分なりの方法を作り出す事
ネットワーキング:知識を共有しようそして秘密を守ろう
じゃあ、我らがdrifting friendsは、現在何をしているの?
M:基本的には、今も「見逃されている景色」を見つけ出して、新しい話を書いているところよ。ストーリーはFinancial Times Germany(ドイツの経済誌)に毎週掲載されているの。これらのすべてが、生活の術になったと、こう言えるかもしれないわね。(笑い)

それ以外では、日本におけるドイツ年の一環で、若いドイツ人デザイナーのプロジェクトD-ハウス で、本を展示したわ。ベルリンと東京で開催の、ドイツの若手デザイナー70人を取り上げたデザインマイ(DESIGNMAI) の一部「若いドイツってなに?(JUNG + DEUTSCH)」展にも参加したし、その後は、ミラノの家具フェアや他数カ所でワークショップを行ったし・・・そんな訳で、自分たちの本来の仕事以外で、すごく忙しくなったの。レトはポツダムのUniversity of Applied Sciences で教授をしていて、ドイツで初めてインタラクション・デザインの修士/学士のコースを設置しようとしているところよ。私は、ドイツ有数のPR会社Scholz&Friendsでパートタイムの仕事をしつつ、次の本の執筆を進めているところ。

放浪についてのレッスン、どうもありがとうございました。
注1)the wandering craftsmenとは: フリーメイソンの徒弟であり、また労働組合を考案、定着させた人々でもある。 ココ で、特別な職人である彼らのインフォメーションを見る事が出来ます。でも、残念ながらドイツ語オンリーです。ゴメンなさい!
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セレンディピティ: 素敵なものの見つけ方 good post934
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年