
現代美術センター「水戸芸術館(アートタワー水戸)」は、都心から離れた、人口25万人ほどの市に位置しているにも関らず、その質の高さや広大で意表をつくコンセプトで有名だ。現在、そこではキュレーターの窪田研二氏が、KAZE MAGAZINEと共同で、スケールの大きなジャパニーズ・グラフィティ展を開いているが、それはなんと美術館を飛び出して、市内13箇所もの場所に作品が置かれ、水戸の印象さえ変えているという。仕掛け役の窪田研二氏に話を聞いた。
インタビュー:ウレシカ
訳:ジュンコ

壁に描かれた作品。SITE、CASPER、JOTA、AMES、HUZE、VERY、 DASTE、 VITR

壁に描かれた作品。DEM
こんなにスケールの大きな、日本人グラフィティの作品展は世界で初めてですよね?こういったものをやろうと思われたきっかけは何ですか?それから、これだけのアーティストを集めるのにどれくらいかかったんですか?
僕自身は、結構長くグラフィティに注目はしてたんですよ。でも、その世界と実際に接した事があったわけではなくて、今回の展覧会に関して、まずKAZE MAGAZINEに相談してみたんです。彼らは地元に根付いていてどんな事が起こっているか良く知っているんで。それから僕らはかなり長く話しを詰めていって、結局日本人の作品に絞ってみようって事になりました。うーん、トータルだいたい1年半くらいかかりましたね。

ペイントがついたジャケット。KRESS

KRESS

KRESS

3Dのベンチ作品。KRESS
どんな基準でアーティストを選んだんでしょう?
僕はこれまで主に古典的な芸術作品の展覧会に関わる事が多かったから、グラフィティ・アーティストの知人とかもいないし、KAZE MAGAZINEに何人か紹介してくれるよう頼みました。そこで色んな種類の作品を用意してくれて、慎重に検討した結果、38人の作品を取り上げる事にしたんです。(ACUTE, AKIM, AMES, BELx2, BUTOBASK, CASPER, COSA, CS, DASTE, DEM, DICE, DISKAH, ESOW, FATE, HUZE, ICHI, JOTA, KAMI, KANE, KEONE, KRESS, MAKE, NEIM, NESM, PHIL, QP, RACK, REW, ROMI, SASI, SITE, SKLAWL, TABU, SUIKO, VERY, VITR, ZEN, ZYS)

SKLAWL

AKIM
この展覧会における、ライブイベントや、パフォーマンスやワークショップの持つ重要性って何でしょう?
僕らの大きなねらいの一つは、グラフィティとヒップホップ、それからスケートボード・カルチャーそれぞれの繋がりを表現したいというものだったんで、ライブ・ペインティングとかラップミュージック、ブレイクダンスなんかをやる事が、凄く重要な意味を思ってたんです。スケートボード・ランプ(傾斜路)をギャラリーの中にアートの一部として置いた事も、スケートボーディングとグラフィティカルチャーの強い関係性を表現するためなんですよ。

スケートボード・ランプの横で・・・

スケートボード・ランプはZYSによる作品。写真はDISKAHの作品
日本では、警察はグラフィティをどういう風に捉えているんですか?文化や芸術の破壊者とかそういう風に考えているんでしょうか?
警察がどういう風に考えているかは分かりませんが、でも、実は今回の展覧会のアーティストが水戸市内の壁に作品を描いた時、市民がこれを破壊行為だという風に受け止め心配になって警察を呼ばれたんですよ。結局、この壁は合法のもので、何よりもこれは“芸術”なんだって説明したら、警察は理解を示してくれて、その後で誰かがまた警察を呼んでも、「それは芸術なんだ」って説明してくれたんですけど、これって凄く嬉しい事ですよね!
西洋のグラフィティと日本のグラフィティの違いってあると思いますか?
日本にグラフィティが伝わって15年くらいになりますが、90年代始めに伝わってきた当初は、主に西海岸スタイルを真似て、そこに少しドイツやオランダの影響が加わった感じのものでした。それから日本での発展があって、現在アーティスト達は更なるオリジナリティを追及しています。例えば日本語の漢字とか片仮名をマンガやアニメの影響とミックスして取り入れたりとか…。それらの文字を見たら、かなりの部分に日本のポップカルチャーが影響してる事が分かると思うし、アーティスト達がそういう文字を作るやり方そのものが、西洋のグラフィティとはちょっと違うなと感じますよ。通常の描き方よりも、もっと職人技っていう感じですかね。

ZYS and DEM

NEIM and KUNI
西洋グラフィティとの違いは、5年から10年の間にもっともっと顕著になってくると思いますけど、でもすでに日本のグラフィティはオリジナリティを確立してるって言えるんじゃないかなとも思ってますね。つまり、アーティスト達自身が、表現を通して自分たちが日本人である事を伝えたいと思っているような気がするんですよ。
グラフィティは、実際どうやって日本に伝わったんですか?
80年代前半に、「ワイルド・スタイル」っていう映画が公開されて、それが日本でヒップホップやラップ、ブレイクダンス、DJなんかが流行るきっかけになったって言われてます。でもその時にはまだグラフィティは注目されなくて、結局それから10年くらい経って、アメリカやヨーロッパを旅行した日本の若者たちが、帰国してグラフィティを始めるようになったんですよ。あ、西洋との違いって点でもう一つ僕が思うのは、日本のアーティストは、ヒップホップよりもむしろ純粋にスケートボーディングやパンク・ロックから強く影響されているように思いますね。

中目黒のDaizu Jikkenのドア

ACUTE
日本のグラフィティはヒップホップのサブカルチャー(下位文化)に溶け込んだものだって思いますか?それとも、まったく独立した分野だと捉えていますか?
実際、グラフィティだけをやるアーティストはとても少ないし、まだかなりの部分でミックスされたものだと思っています。グラフィティをやる人の多くはスケートもやるし、ラップもやるし…結局彼らの生活の一部なんですよね。
日本のグラフィティアーティストは外国人アーティストやグラフィティ社会(集団)についてどう感じてるんでしょう?
グラフィティ・アーティスト達の間では暗黙の了解みたいなルールがあって、彼らが旅行をした時はいつでもその土地のグラフィティ・アーティストと会って、彼らの家に泊まって一緒に作品を作る。それがグラフィティのライフスタイルの大きな要素であって、彼らには強い仲間意識があるし、アーティスト同士とても尊重し合ってます。アパートが狭かったり実家で暮らす人が多い日本では、ちょっと難しいとは思いますけど…。

VERY

SCA
日本でも核となるテーマってあるんですか?例えば、ニューヨークのモットーは「破壊したいんだ!」で、ドイツは「スタイルと名声」ですが…。
今はまだ、破壊とかそういうのは重要でなくて、新しくてオリジナルなスタイルを追及して確立する事がテーマだと思います。それから名声を得るために個性的で優れた技術を持つことが動力源だとは思います。ちなみに今回参加したアーティストの何人かは、すでによく確立してますね。

KAMI and SASU

SASUの作品の一部
スタイルとは?何が彼らを特別にしているんでしょう?
作者によりますよ。例えばQPなんかは、シンプルなアイコンを白黒で描く手法で、凄く個性的です。彼は東京中に出現しますけど、でも彼が絵を描くのに選ぶ場所が凄く特別なんです。もし彼の作品を見る機会があったら、彼の、場所に関するセンスの個性的なことにも気づくと思いますよ。彼の作品はとても霊感的で、人を鼓舞するようなものばかりなんですよ。

QP

QP

QP

QP
他にはどんな変わった種類のスタイルがありますか?
例えばNESMはギャラリーに写真だけを持ち込み、スプレーは全く使いませんでした。かなり前に彼はニューヨークでグラフィティをやっていましたが、今は全く新しいスタイルを模索しているようです。彼の作品は、巨大な文字をガーデニングの道具で芝生に切り刻んだもので、飛行機からも見えるようなものです。彼は今、色んな手段に挑戦し、どうやって彼自身を表現するか、新たなグラフィティのあり方を探求しているところだと思います。

NESM

NESM
それからDISKAHやDEM、ZYSの作品はスケボー文化に大きな影響を受けてますが、彼らは決して、ワイルドスタイルやアニメキャラを追求しているわけではないんです。でも彼らの作品はグラフィティの王道であり、カラフルで文字やメッセージの扱い方がとてもコクがあって…彼らの作品には特別な明るさがあって、それを通して彼らの気持ちがとても素直に直接的に伝わってくるような気がしますよ。ちなみに作品は、スケートボード・ランプ(傾斜路)の中や周りに展示してます。

DISKAH and DEM

DISKAH and DEM
他にも、神奈川出身のSCA(KRESS, PHIL, FATE, MAKE, BUTOBASK)のようにグループで活動しているアーティストもいます。PHILはキャラクターを描くのが凄く上手くて、他のメンバーは文字を描くのが得意です。高度な技術とオリジナルなスタイルだと思います。

FATE

SCA
グラフィティを描くということが人々から尊重されるようになるのに、例えば質と量という二つの重要な事に関してどう思いますか?時々、日本人アーティストにとっては、テクニックが最重要であって、場所は二の次っていう風に感じるんですけど。
東京に住んでいたら、広島や岡山などに比べて描くスペースは本当に少ないですよ。例えば岡山を車で回ってみたら、グラフィティが描ける場所がそこら中に見つかるはずです。東京のアーティストの傾向としては、やっぱり常にすばやく描ける小さなスペースを見つけることが大事で、だから彼らの作品はとてもシンプルになるんですよ。大作に取り組む場所が沢山ある東京以外のアーティストが複雑なスタイルを追求している一方、QPやZYS、KAMI、SASUの作品を見ると、基本的に凄くシンプルなアイコンで出来ています。

SASU

BELL
どんな世界でも常に言える事ですが、グラフィティ界にも女性は少ないですよね?今回の展覧会では唯一BELLやSASUという女性アーティストが参加していますが、SASUの作品はちょっと趣が違っていますね。彼女の作品もグラフィティの分野に入るものなんでしょうか?
SASUは、とても装飾的でスタイリッシュで美しい絵画を、はっきりした女性的なタッチで描くアーティストです。彼女自身も、自分をグラフィティ・アーティストだとは思ってないと思いますよ。この展覧会では、ストリート・アーティストである事を条件に参加者を選んだんですが、彼女は正に今ストリートに爆弾を落とし続けてるアーティストです。でも、根本的に、ストリート・アートとグラフィティの間にラインを引くのは難しい事なんですよね。SASUとKAMIは、自分たちを画家と呼んでいますし、彼らの作品は伝統的なグラフィティとはちょっと違っていますね。とにかく沢山のスタイルがあって、グラフィティをやるのに必ずしも文字を書く必要も無いんですよ。
今回参加のグラフィティ・アーティストの中で、実際にグラフィティで生計を立ててる人はいるんですか?

ESOW and CASPER

ESOW
確実には分からないですが、ほとんどいないと思います。アートの世界では皆そうですが…。SASUはナイキの「Urban Canvas」ビデオに出演してるし、ESOWはキャラクター製作をしています。彼はギャラリーで何度も展覧会を開いているし、プロのスケートボーダーでもあるんですよ。
この展覧会を通じて、あなた自身のグラフィティへの見解は変わりましたか?

ZEN

REW
僕はこれまで古典的な芸術作品に関わることが多かったから、今回この展覧会を主催することは本当に面白かったです。初めてアーティスト達と共同制作してみて、彼らの表現に対する姿勢や作品に対する真剣な思いを理解する事が出来たし。彼らの、自分たちがやっている事に対しての姿勢や真剣さは、他のアートの世界と同じだと思うし、僕はとても感銘を受けましたよ。うん、凄く嬉しく思いますね。
ANY公式グラフィティ・インタビューの他に、何か伝えたい事はありますか?
この展覧会を通して、日本の人たちのグラフィティに対する見方が変わってくれるといいなと思ってます。グラフィティは、社会問題にもなっていると言う難しい側面がありますけど、でも同時に本当に強烈な芸術的表現方法でもあるんですよ。僕自身は、グラフィティは社会的表現とアートの間に位置しているように思ってます。もしグラフィティが何かっていう事を知っていたら、道を歩きながら、もっと生活を楽しめるようになりますよ。皆がこれに気付いてくれる事を心から願ってます。

DICE and PLUM

ROM, AKIM, TABU, SKLAWLの作品を「体験」する水戸市民
今回は本当に有難うございました!
今回、水戸では、本当に沢山の作品を見る事ができました。ここで掲載しきれかった写真は、こちらのフォト・ギャラリーでお楽しみ下さい。
14 コメント
ウェブマガジン「PingMag」及び、姉妹サイト「PingMag MAKE」は、2008年12月31日をもって休刊いたしました。これまで応援して下さった世界中の皆様、またご協力頂いた皆様に、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。
PingMagの姉妹版、日本のモノづくり情報を世界に発信中!
PingMagから大切なお知らせ
2008年12月31日
板谷龍一郎:色鮮やかでユーモア溢れる世界
2008年12月29日
マギボン:YouTube発のネットアイドル
2008年12月26日
ベネデッタ・ボッロメティ:たくさんの元気をくれる不思議な絵
2008年12月24日
中銀カプセルタワービル:未来の建築
2008年12月22日
花村えい子:キュートでポップな60年代の少女マンガ
2008年12月19日
日本のハイテクトイレ事情
2008年12月17日
アミューズメント:アートやファッションと融合するゲーム文化
2008年12月15日
HIROCOLEDGE:現代に溶け込む新たな伝統
2008年12月12日
瀬戸正人:ビンラン売りの甘い誘惑
2008年12月10日











日本ではグラフィティまでも、結局ポップカルチャーなる商業主義に吸収されているんですね。アーティストは100%それを受け入れているのか。真意がききたい。
次回はアーティストのインタビューも取り上げていただけたらうれしいです。
Posted by: hanako @ 10月19日2005年
だとしたら、日本の壁を汚さないでほしい。ただカァンバスに描いてほしいですね。
Posted by: daisuke @ 10月19日2005年
X-COLOR キュレーターインタヴュー
PingMag X-COLORキュレーター窪田研二氏インタヴュー
http://www.pingmag.jp/J/archives/2005/10/xcolo...
Posted by: volume.92 blog @ 10月20日2005年
「日本の美しい風景を汚した壁」を汚して、何が悪いのかな?
Posted by: D @ 10月31日2005年
→daisuke
こうゆう方にぜひとも見て頂きたいエキシビジョンです。
Posted by: s @ 11月3日2005年
グラフィティは汚くないと思う。
誰かが何かを考えて、何かを伝えようとしてペイントしたものに汚いものなんてあるのかな。
それよりも、何もかんがえず、日々路傍にポイ捨てされていく歩きくわえタバコのほうが、よっぽど汚いと思う。ゴミはちゃんとゴミ箱にすてろよなーって思う。
Posted by: paraisotaka @ 6月21日2006年
小池徹平クンが彼女とヤったんだって。
その時の画像がコレ。
http://www.teppeikoikejp/
これを三箇所にコピペして
どこヵの掲示板に貼れば絶対に見れるよ。
最近こういうの多いヵら絶対ウソだと
思ってゃってみれたらみれた!!
まぢ感動!!!涙
徹平も激しいなぁww笑
Posted by: 匿名 @ 7月6日2006年
QPのヤツなんて誰でもかけますよ(笑)
Posted by: K$K @ 8月13日2006年
えば岡山を車で回ってみたら、グラフィティが描ける場所がそこら中に見つかるはずです。
最悪ですね。
旅の恥はかき捨て!お前らも岡山まで行ってマスかいてティッシュ捨ててこいっていうメッセージですか。
>僕自身は、グラフィティは社会的表現とアートの間に位置しているように思ってます。
妄想ですね、しょせん落書きですよ。脳内でどうぞ。
Posted by: 匿名 @ 9月6日2006年
ksk>QPは質より量派。それに描く場所がスゴい。
Posted by: gaz @ 11月3日2007年
オレはまだ高校生だけど、グラフィティ・アートは素晴らしいと思う。それを今の日本は追放しようとしているなんて・・・。芸術というものが分かっていない国民ばかりだ。
Posted by: tas @ 5月15日2009年
yo mem yo ! m e m . o yo !
Posted by: daddy m @ 12月14日2010年
You completed a number of nice points there. I did a search on the theme and found mainly people will consent with your blog.
Posted by: FletaMongolo @ 11月9日2011年
X-COLOR / グラフィティ in Japan good post908
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年