
ハーマンズトラ(Hamanstra)、別名ハーマン・アリマダニ(Haman Alimardani)。彼は自分の仕事を総称するのに一番好きな言葉は、「洋服屋さん」だと言う。テヘラン生まれ、アフリカ系ペルシャ人でドイツ・バイエルン出身の彼は、ミュンヘンの広告代理店ユン・フォン・マット(Jung von Matt)でグラフィティの仕事をする事から始め、その後グラフィック・デザインの世界へと転向する。そこで彼が悟ったのは、ファッションの道が一番彼に向いているという事であった。ロンドンのセント・マーティンへの奨学金を獲得した頃からの野望、「Hamansutra帝国を築く」を抱き続ける彼に、次なる活躍地と計画しているニューヨークで話を聞いた。
インタビュー:ウレシカ
イメージ: デニス・ペアナット(Denis Pernath)
訳:ジュンコ
グラフィティを随分長くやって、それからグラフィック・デザイナーとしてもかなり活躍していたけど、その事が今の活動にどんな風に影響してると思う?
これまでやってきた事ってさ、問題にどう対処していくかっていう色んな手立てを学ぶのに凄く良かったんだよ。例えば、フリースタイルのグラフィティをやるのに、まっさらな壁に向かうだろ?そうすると、ただ頭に浮かんでくる、完璧に生で自然発生的なアイデアをぶつけるしかないんだけど、今でも洋服をデザインする時に同じような状態でやることがあるんだ。紐、糸、布、皮を使って、ただマネキンに向かう。昔、まっさらな壁に対面した時みたいにね。製品パッケージのデザインの仕事からは、一枚のシーツをどうやって立体にするかっていう事を学んだな。どれだけ少ない折り目でどんな風に折るかっていうのを凄く慎重に考えて、欲しい形を作り上げる…ちょうどピザの箱みたいな感じだよ。その後ファッションについて学んだ事で、今では色んな物を立体でイメージするようになったんだ。服のデザインをスケッチする時、全てのサイズにおいて、実際に着たらどんな風に見えるのか、出来上がりの映像が浮かんでいなきゃいけないし、それに素材の事も…本当に沢山の事を前もって考えてなきゃいけない。だから、もし僕が今コンピューターゲームのキャラクターをデザインするとしたら、例えばディープエンド(Deepend)でもやったように、最初からやっぱり立体で動くものになると思う。
例えばLessrain & W+K Amsterdamと一緒にやったNikeのプロジェクトみたいに、僕はまだ時々グラフィックの仕事をするんだけど、やっぱりそういう時には、自然と前にやってたグラフィティの影響を凄く受けたものになるんだよね。

やっぱり究極は何でも自分でこなしてしまうユニバーサル・デザイナーって事なのかしら?
その通り。全ての法則や技法を知ってて、レイアウトやコラージュや絵画、写真、スケッチ、縫製、デザイン…全部出来ちゃうから誰にも文句を言われることが無い!なんて最高…とはいえ、勿論何か1つにポイントを絞る事は必要で、僕の場合は絶対ファッションだったんだよね。

ファッション・デザイナーZiad Ghanemのためのコラージュ作品©Hamansutra

ファッション・デザイナーZiad Ghanemのためのコラージュ作品 ©Hamansutra

ファッション・デザイナーZiad Ghanemのためのコラージュ作品 ©Hamansutra

ファッション・デザイナーZiad Ghanemのためのコラージュ作品 ©Hamansutra
確か以前、ファッション系の生徒のほとんどが、有名どころと一緒に仕事することで自分のイメージアップをしたがってて、自分自身のスタイルを開発しようとしないってこぼしてたわよね。あなたの場合、一度コスタス・ムルクディス(Kostas Murkudis)のアシスタントをやったことがあるし、それからミュンヘンのバイエルン州立オペラで、「Twilight of the Gods」のコスチュームアシスタントをやったって聞いてるけど…。なんでもセント・マーティンズに在学中、凄く変わったインターンシップで何回かドイツに帰国したそうよね?


一体全体どうしてミュンヘンのドイツ軍隊の衣類部門で2ヶ月もアシスタントをする事になったの?
軍の仕事って、ファッションとは全然関係ないところにあるんだ。兵士は人格を無くして機能的でなければならない。それは彼らが着るものにも言えることで、彼らの服についてる全ての部分は、目的を果たす事だけを考えられているものでさ。Gスーツや気圧服みたいに、介助無しに着られないものなんて物もあるし。本当に、彼らの着る服には色んな配慮がされてて、沢山の秘密があるんだよ。僕は、何を着るか、どうやって着るか、どんな順番で着るかについて考えなきゃいけないっていう事自体が好きでね。それってほとんど儀式みたいなものだと思わない?正直、着る時にマニュアルが必要な服を作りたいくらい(笑)。そうすることが服の重要性や意識を高めると思うんだけど。
ミュンヘンの軍隊での扱いはどんなものだった?
ほとんどの人は、軍隊に衣類部門なんてある事を知らないし、実際、僕は35年ぶりのアシスタントだったんだよ。沢山のファッションデザイナーが軍服からアイディアを得て真似したりするけど、でも軍服を実際にちゃんと知ってる人はいないよね。僕は軍隊で、気圧服やダイビングスーツや、パラシュート部隊用の服、それぞれの部署で制服がどう違っているのかとか、階級によっての違いとか、全て研究してきた。

軍服の試作品 © Hamansutra

ハーマンとドイツ軍隊出身のアシスタント © Hamansutra
実際最初、軍の方としては僕がなんでそこで働きたいのか理解していなかったけど、僕が何を考えているのか話すと凄く協力的になってくれて、彼ら自身が逆に熱心になったくらい。僕が去る時には彼らの方が僕に感謝してくれて、ドイツ近辺のファッションスクールに、インターンシップを受け入れるっていうお知らせをする事まで考えてくれたほどだったよ。
実はそこで働いていた人の一人が、今僕の個人的なアシスタントになってくれてて、彼女は30年以上の皮革や裁断の経験がある人なんだ。彼女が僕の所で働くことに凄く熱心だから、僕は本当に幸せだよ。
セント・マーティンスでの4年間の勉強を終える時、卒業生のうち選ばれた人だけが参加出来るファッションショーでコレクションを発表したでしょ?ファッション業界大手からのヘッド・ハンター達で溢れるって言われてるショーよね。その時のコレクションのコンセプトは何だったの?


「1秒間で刺激し歴史を作る」だよ。本当さ!4年間もの間、1分半のファッションショーを研究してきたんだ。何か新しい事を考えつかなきゃ。僕は、サイボーグからイメージを得て、気圧服のズボンから、女性ボディビルダーの着る服を作ったよ。彼女らはコレクションの一部として僕がデザインした巨大な海外旅行用スーツケースを運んだんだけど、これは4つ上下に繋げると1つの衣類ダンスになるってやつで、しかも広げて平らにすると、部屋のパーティションにも使えるって代物。ほら、ここでもパッケージデザインの仕事から得た知識をファッションアクセサリーの為に使う事が出来てるだろ?
何故ボディ・ビルダーの女性を?
細長いステージにも、“歩くコート掛け”みたいなモデルにも飽き飽きだったんだよ。僕はもっと、人格とか強い個性に惹かれるんだ。ボディ・ビルダーの女性達は、パワフルで物凄いエネルギーに満ち溢れてるよ。彼女達も心から参加を望んでくれて、嬉しかった。それに何よりも、僕は彼女達から感じる軍人っぽいオーラが好きなんだよね。

Baby’s got a temper, 赤ちゃんバッグ ©Hamansutra

卒業時のファッションショーのために作られた靴 ©Hamansutra
あなたの仕事上、身体ってどんな意味を持つのかしら?
そうだなぁ。僕を最も刺激する物の内の1つだな。身体の構成や内臓も含めて。僕が作る服は、有機的でなきゃいけないし、身体にフィットするものでなきゃいけない。それに願わくは全てテイラーメイドであるべきだと考えてる。
どんな素材を使うのが好き?
2004年5月のショーでは、全てのコレクションを1本の気圧服のズボンから作ったんだけど、60年代にそれを開発した人達はもうほとんどこの地球上にいないから、僕は自分自身で研究するしかなかったよ。僕はね、どれだけ凄い知識や技術がこのズボンに隠されているのかって事を皆に知らせたかったし、それをどんな風に僕流に変化させられるか試したかったんだ。
でも総合的に言うと、僕は皮革を使うのが好きだね。皮革っていうのは、失敗が許されない凄く真剣な素材なんだよ。もし間違った所に針を刺したら、その穴はもう隠せないんだから。そしてそれが“皮(皮膚)”だって事にとても敬意を持っているし、なるべく切らずに1枚布として人の身体を包み込んでくれるように作りたいと思っているんだ。

皮のアクセサリー ©Hamansutra

皮のアクセサリー ©Hamansutra

皮のアクセサリー ©Hamansutra

皮のアクセサリー ©Hamansutra
それから皮革の他だと、ジーンズみたいな硬い素材や、科学的な機能を持っていたり高度な技術で出来たものとか、そういう特殊加工をした織物を使うな。
販売するラインに入らないものを、「プロトタイプ(試作品)」って呼んでるでしょ?あれは実際に着られるの?それともたった1日だけのための物?
あれは“bombensicher(防弾)”なんだ!…つまり、ちゃんと全ての細部を考えて適切に作られてるんだけど、余りにも独特の特徴があるから、2回以上着る事を推奨しないって事。忠告しておくけど、もしオスカーにノミネートされて、式のための衣装をHamansutraに頼んだとしたら、まずはどうやってHamansutraと暮らすかを学ぶ事から始めなきゃだめだよ。そして次の式も必ず予約する事。でも最初の衣装は2度と着ないこと(笑)!

Hamansutra Tシャツコレクション ©Hamansutra

Hamansutra Tシャツコレクション ©Hamansutra
まぁそういう感じで、こういう類の服は一晩限りって事で作られてるんだけど、もしも僕がTシャツとかジーンズのような既製服のコレクションを作るとしたら、それを第2の肌のように感じて、他の物と組み合わせたりしてずっと長く着て欲しいと思うよ。僕は1シーズンだけ着てポイみたいな人種には興味が無いんだ。永遠に残るものを創る方が好きだな。マーケティングの人間は、“トレンド”って物を常に教えたがるけどね(笑)。人はもっと着るものについて考えるべきだし、そうする事によって物って価値があるものになるし、長く着られるはずだよね。
あなたのデザインするものは、どんな人が着るべきだと思う?それに、着た時にどんな風に感じて欲しい?
基本的には誰にでも着て欲しい。でも、願わくば強い人格を持った人がいいな。個性の強い人とか、個性の強い人になりたいと願ってる人。騎士とかヒーローとか女王様みたいに感じてくれたら最高だよ!

ドイツのバスケットボール・チームの制服 ©Hamansutra

ドイツのバスケットボール・チームの制服 ©Hamansutra
ロンドンからミュンヘンに“リラックス”する為に戻ったと言いつつ、結局は常に仕事してたみたいよね。例えばドイツバスケットボールのチームの服とか、ドイツ企業のSaturnの広告 ”Geiz is Geil” とか。それに、ついこないだ「IF コミュニケーション・アワード2005」を受賞したSoniqueのビデオもあるし…。洋服作りにかかる時間ってどのくらいなの?
うーん、それは、どれくらいの付属品を付けるかとか、細かな部分がどれくらいあるかって事によるんだけど、1週間あれば完璧かな。他の大きなスタジオなんかは数時間でやるみたいだけど、それってどれくらい沢山アシスタントを使ってるのかな。僕は一人しかいないからね。
実際の創作プロセスってどんなもの?
まずは実際に自分の手を使って沢山作るんだ。だから実務がきちんとこなせなきゃいけないし、試作品全部をシンプルな手法で作る事が出来なきゃいけない。それから、実際にこないだSoniqueのビデオでやったみたいに、僕は今コンピューターを使って仕上げる方法に興味があるんだよ。

Soniqueのビデオ、スチール写真 © Designliga

Clone のデザイン画と最終的なプロトタイプ ©Hamansutra

Sonique のヘッド・ピース©Hamansutra

Soniqueのビデオ、スチール写真 © Designliga
一番最新のプロジェクトと今後の計画について教えて?
ちょうど最近Amosの服を作ったよ。彼らの新しいアルバムは10月24日に発売されるんだけど、Sonique の時と同じように、デザインリガ(Designliga)と一緒に今度はAmosのビデオを作る予定だよ。
それから、日本で紹介される僕の最初のプロジェクトとなる、皮を使ったアクセサリーコレクションの準備を進めているところなんだ。ヒップホップとゴシックをミックスした指輪とか、かがり縫いのアクセサリーとか、ゴム製のオーバーシューズとか…黒いヘビ革を使ったものになるよ。それから、売春婦や40歳くらいのモデルを対象にしたコレクションのプロジェクトを進めてるんだ。顔のシワをわざと見せびらかしてもらうのさ。僕は本当に、彼らのそういう人格とか個性みたいなものをアピールしたいから。でもまだ予算の問題が未解決なんだよ。

Hamansutraの「Lookbook」 ©Hamansutra

Amosのコスチュームを製作中 ©Hamansutra

Amosの完成したスーツ。 ©Hamansutra

Amosのウェブサイトより
他にも沢山新しいアイデアがあるよ。例えば春にはニューヨークに移動してそこでスタジオを持とうかと思ってるんだ。そこでは、“儀式的な服を作るためにハーマンズトラで働くハーマン・アリマダニ”って構図に変わっていくはずだよ。
素敵ね! 他にももっと、話してくれた事全て載せたかったけど…。本当にどうも有り難う!!
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ハーマンズトラかっこいい!今後要チェックします。
日本に居てはなかなか知り得ないニュースを取り上げてくれてありがとう!
Posted by: an @ 10月19日2005年
ハーマンズトラかっこいい!
Posted by: ハーマンズトラかっこいい! @ 6月10日2006年