
(写真提供: Unilever ice cream)
「この年、ノーサンブリアでは、竜巻や、幾度にも渡る不思議な雷、火を吹く龍が空を飛ぶなどの不吉な予兆がみられた。その後、飢饉が地域を襲い、それからすぐの1月のある日、バイキングたちがやってきた。バイキングは無防備な人々に襲いかかり、暴行、虐殺等の非道を行い、ホーリー・アイランド(リンディスファーン)の修道院は血塗られた大惨事にみまわれた。」(「アングロ・サクソン年代記」より)
作:トム&キョウコ
訳:キョウコ

1066年頃の仏のバイユー・タペストリーの一部。バイキング船を作っているところ。

同じく1066年頃の仏のバイユー・タペストリーの一部。
これは793年のことで、この年、バイキングがイングランドに初上陸したと言われている。スカンジナビアの侵略者達は、驚くほど洗練された木製の長い船(それは、ほとんどが手斧を使って作られていたそう)に乗って、ヨーロッパ攻略に旅立った。東はロシアそしてビザンチンへ、西はイギリス諸島、グリーンランド、そしてついにはノバスコシアまでその侵略の手を伸ばしたと言う。そして暴行と略奪を繰り返し、行く先々で恐れられた。でも、今はその言い伝えだけが残り、「バイキング(海賊)」という言葉からは、男らしさ、冒険者というかっこいいイメージを持つ人も多いのでは?
21世紀の今、新しいバイキングの伝説が誕生した!といっても今回のは略奪や暴力とは無関係の、心温まる「海賊船」のお話だからご安心を。2005年8月16日に新たな世界新記録が生まれたのを、みなさんご存知だろうか?アイスクリームの棒で実物大のバイキング船を作ってしまった男性がいるのだ。使用したアイス棒の数、なんと1500万本!このバイキング船がすごいのは、アイス棒で作った世界最大の建造物というだけでなく、実際に航海ができるという点だ。
この船を造り、世界記録を作った我慢強い男性の名は、キャプテン・ロブ・マクドナルド。でも、キャプテン・ロブが世界記録を樹立したのはこれが始めての事ではないというから驚きだ。過去にもロッキング・チェアに座って453時間40分、椅子を揺らしつづけたり、巨大な凧を作ったり、様々な記録を打ち立てている根っからのチャレンジャーなのだ。「シー・ハート・バイキング」船で世界新記録を達成した今、キャプテン・ロブはすでに新しい挑戦の計画を立てている。世界中の子ども達に勇気を与えるため、このバイキング船を使って、今度は大西洋へ航海に出ようというのだ。彼が挑戦し続ける理由は一体なんだろう?

キャプテン・ロブが最後の1本(1500万本目)を船に貼付けているところ。
© seaheartship.com

箱一杯のアイス棒。
© seaheartship.com
キャプテン・ロブは1959年、アメリカ合衆国、フロリダ州の州都タラハッシーで生まれた。8歳の時、自宅でのガス爆発事故で、体皮の70%の火傷というひどい重傷を負い病院に収容された。この時医師からは、右手を二度と動かせないだろうと宣告される。しかしながら、生粋のチャレンジャーである彼は、子どもの頃からのスタントマンになるという夢を叶えるためにも、絶対によくなると誓う。そして実際に彼は驚異のスピードで回復。一年で右腕が使えるようになった。
この事故がきっかけとなり、この後キャプテン・ロブは子ども達への慈善活動としておもちゃを集めるようになる。また、ハリウッドで、プロのスタントマンになるという夢も、18歳で実現させる。(彼は、ハリウッドのスタントマンの「ホール・オブ・フェーム」にジャッキー・チェンやカーク・ダグラス等の大物と共に名誉の殿堂入りを果たしている。)子ども達を助けること、そして挑戦しつづけること。この2つが、彼が情熱を傾けて取り組んでいる事だ。(病院の子ども達に娯楽を与える組織「シー・ハート・ファンデーション(Sea Heart Foundation)」を2004年に設立している。)
ある日、彼の息子がアイスクリームの棒を拾って来たので、ロブはミニチュアのボートを作った。その事がきっかけとなり、アイス棒を利用しての船作りが始まった。まず、1万7千888本のアイス棒を使い、「Zeven Provincien(7つの州)」号を、その次に37万本を使い「Baby OB」号を完成させた。「Baby OB」号は、長さ3.89メートル、幅1.18メートルの大きさだったという。
2003年に、この「Baby OB」が「世界で最もたくさんのアイス棒を使った船」としてギネス認定された後、キャプテン・ロブはもっと大掛かりなプロジェクトに挑戦する事を決意する。それが、15万本のアイス棒を使って、約15メートルの長さのある、バイキング船のレプリカを作ることだった。

オランダのエメロードに設置されたキャプテン・ロブの製作所。
© seaheartship.com

世界記録を作るために、いよいよ着水しようとしているところ。
(写真提供:Unilever ice cream)
15万本ものアイス棒は、世界中の子ども達から寄せられたものと、スポンサーでもある、世界最大規模のアイスクリーム・メーカーOLAが提供した欠陥のあるアイスクリーム棒でまかなわれた。プロの造船家の助けと、たくさんのボランティア達の活躍によって、全長15メートル、重さ12トン(うち2.2トンは特殊な接着剤の重さ)、20名以上の乗組員を乗せる事ができるバイキング船がついに完成した!
そして2005年8月16日。この日世界記録への挑戦が行われた。バイキング船は無事着水し、その後90分にも渡ってさまざまな操作をクリア、新記録の達成を果たした。来年には、この船で、1000年前にバイキング達が旅したように、大西洋横断を計画中のキャプテン・ロブ。忙しい合間をぬって、PingMagの質問に答えてくれた。

「1500万本!」の文字。
(写真提供:Unilever ice cream)

世界新記録に挑戦中。
(写真提供:Unilever ice cream)
このプロジェクトは、「ちょっとしたクリエイティビティと(多分、かなりの)辛抱強さがあれば、なんでも出来る」ことを証明してみせましたよね。ところで、どうして「船」を作ろうと思ったんですか?例えば、家とか、他にも作る対象はあると思うんですが。
そうだね、どうして家を作らなかったんだろうね?もし僕が日本にいて、君が手伝ってくれるなら、考えてもいいけどね。ハッハッハ。まあ、僕は今までも入院中の子どもたちにおもちゃをプレゼントしてきたけど、新しいおもちゃを買うお金なんてなかったんだ。だから、家にあるものをなんでも利用して、いろんなおもちゃをものを作ったものだよ。アイスの棒を使うようになったのは、僕の息子とその友達が(拾ってきたのが)きっかけかな。
今までに船以外でも、何百というおもちゃをアイス棒で作ったよ。でもそうだな、船を作る事は僕の情熱なんだ。それに、アイス棒で作った僕の船は子ども達にとても好評でね。それに、おもちゃを通してリサイクルの重要さも教えることができるし。なにしろ、僕らの未来はリサイクルにかかっているからね。
船に乗ることが好きになったのは、僕が子どもの頃、兄貴達が船の操り方を見せてくれたからなんだ。第一、フロリダやオランダのような場所で育つと、船嫌いにはならないものだよ!
このプロジェクトを完成させるのに、何人のボランティアが参加しましたか?完成までに費やした時間は?
僕が最後に数えたところによると、過去2年間で、5歳から85歳までの約5000人の子ども達が、造船を手伝ってくれたよ。完成には2年間かかったけど、一日18時間、毎日毎日、祝日も週末もなしの作業だったね。1日18時間以上作業を続ける日も多々あったよ。

世界新記録に挑戦中。
(写真提供:Unilever ice cream)

キャプテン・ロブが、子どもから募った夢や希望をかなえる「Ship of Dreams」に選ばれた3人の子ども達。
(写真提供:Unilever ice cream)
完成させるまでで、一番難しかったことはなんですか??
作業時間の長さ、かな。家族が恋しかったよ。
このプロジェクトを完成させるためには、本当に忍耐力が必要だったと思います。どのようにして、創作意欲を保ったのですか?自分を奮い立たせたものはなんですか?
子ども達が、こんなセリフを繰り返し僕に言い聞かせるんだよ。もともとは僕が彼らに教えた事なんだけど、「ヘイ、ロブ!あきらめたり、負けたりしちゃだめだ」とか「やれば何でも出来るんでしょ」とかね。それだけで、十分だったね。
今後の予定を教えてください。
「大西洋の大冒険」が成功に終わったら…次は、「太平洋の大航海」にでも出かけるかもね。まだ分からないな。日本に行ってみたいなとは、以前からずっと思っているんだよ!!
今後、アイス棒を使って作ってみたいものはありますか?
実物大の、日本の帆船なんていいんじゃないかな!(すごい船だよね!)
ギネスの世界記録挑戦は成功に終わったと聞きましたが、おめでとうございます。当日はどんな気分でしたか?
夢が叶ったって感じだよ。まあ、まだ第一章にすぎないんだけどね、ハッハッハ。
読者にメッセージをお願いできますか?
君の知っている世界が「不可能だ」って君に指図したり、友人や先生、メディアすべてが「やめとけよ」って言ったとしても、これを覚えていて欲しい。「君には何でもできるんだ!」って事を。「あり得ない、不可能だ」って言葉こそが、あり得ないことなんだ!出来ないことはないんだよ。がむしゃらに100パーセントの力でぶつかって、そして決して挑戦をやめないこと。それが大事だね。
ロブ船長、どうもありがとうございました!身の周りにある、ありふれたものを使って、こんなにもスペシャルなものを作ってしまうなんて、本当に素晴らしいと思います。来年のバイキング船での航海を楽しみにしています!
キャプテン・ロブのウェブサイトはコチラです。また、キャプテン・ロブは、みなさんからのメッセージや質問をコチラで受付けているそうです!!
5 コメント
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thank you !!!
I am very happy
Posted by: takeo era @ 4月9日2008年
Wow,fantastic!
You are grate captain!
Posted by: Lenmama @ 4月9日2008年
Giving is a light in me as for courage.
Posted by: Eiki @ 4月9日2008年
すばらしい根気ただただ感服これからも常に挑戦してください。
Posted by: マサシ @ 4月10日2008年
キャプテン・ロブとアイス棒の船 good post903
Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年