ゲシュタルテン出版社(DGV)

2005年9月26日 カテゴリー: Top Page 10, おすすめ, インターナショナル, グラフィック, 特集

ゲシュタルテン出版社(DGV)

all works © 2005 Die Gestalten Verlag, Berlin, except "Hotel Fox"

グラフィック・デザインに興味がある人にとって、ディ・ゲシュタルテン・フェアラーク(Die Gestalten Verlag)—ゲシュタルテン出版社を知っているというのは、必須事項だろう。本棚に並んでいるデザイン本を取り出して見て欲しい。きっとこの出版社の名前を見つける事が出来ると思う。(持っていない人!もったいない事してますよ)ゲシュタルテンは、ただの出版社ではない。彼らは、デザイン界のキュレーター的役割も果たしており、ビジュアル・アーティスト達に自身の作品を発表する機会を与え、またそれが世界的に認知されるよう気を配っている。彼らが選ぶ作品は、どれもクオリティが高く、著名なグラフィック・デザイナーの横に、まだ無名の前途有望なアンダーグラウンド・アーティストが並んでいるという風だ。「作品。それこそが、一番大事なものだ」

PingMagは、ロバート・クランテン(Robert Klanten)氏にお話を伺った。彼こそが、ページの隅々にまで目を通し、今何が「ホット」で、何が「ホットじゃない」のかを決定するミスター・ゲシュタルテンなのだ。

インタビュー:ウレシカ
訳:キョウコ

ロバート、ゲシュタルテンでのあなたの主な役割を教えてもらえますか?

すべて、ですね。まず会社を設立して、監督、マーケティング、制作、ゲシュタルテンに関わる人間の管理といった事から、アーティストを選び、最終的にどの作品集を出版するか、といった事まで全部です。自分の時間の50%を本の編集などのクリエイティブ面に費やし、後の50%を会社経営といったビジネス面に注ぎ込んでいます。

ゲシュタルテンには2つ面がありますよね。まずデザイン・スタジオとしての側面ですが、アンドレアス・ペイエル(Andreas Peyrel)とマルクス・ホールマン・ロジュ(Markus Hollmann-Loges)がインディペンデントのデザイン会社として、一般のクライアントの為にデザインを行っています。そしてもう一つは出版社としての側面で、あなたのチームが本を制作。また、その他のデザイン・プロダクトの流通を行っていますよね。出版部門には何名のスタッフがいますか?

我々のグループは、フリーランサーも含めて約18人で構成されています。フリーランサーと言っても、彼らは我々のチームの重要な地位を占めています。ほとんどのフリーランサー達は、ほとんどの時間をここで過ごしていますし、その中の何名かはもう、6、7年間も我々と一緒に仕事をしているんです。ただ、未だにフリーランサーと呼ぶ理由は、彼らが副業として、自分のデザインの仕事をしていて、自分のスタジオ、そしてクライアントを持っているからです。週の2、3日をゲシュタルテンの為に働き、残りの時間を自分たちのデザイン作業に当てるというのは、ちょうどいいバランスのようですね。クリエイティビティを維持し、個人的業績を上げ、常に新鮮な気持ちで仕事ができる、そういう事です。私は、本物デザイナーが、デザイン本の編集者として作業をするのはとても大事な事だと思います。なぜなら、彼らになら、本の中で語られている事がよく理解出来るからです。もし、編集者の一人が、あるイラストレーターにインタビューを行うとしましょう。二人は、同じ土俵で話が出来るわけです。

では、デザイン界において、ゲシュタルテンの役割はどのようなものだと思いますか?


“Romantik”の表紙

“Wonderland”の表紙。このシリーズの2作目


我々は、立派な出版社として認められていると自負しています。しかし、ここまで来れた理由は、自分たちを違った目で見ているからだと思います。ゲシュタルテンのしている事は、クリエイティブ活動のネットワークを指揮する事です。今、ちまたで何が起こっているのかにいち早く注目し、才能を拾い上げ、そして彼らを世間に紹介します。プロジェクトを発表する事で、デザインの業界に影響を与えているのです。我々は仲介者として、ものに形を与え、アート作品を展示し、そして他のビジュアル・アーティスト達に情報を送り返しているのです。


リセロッテ・ワトキンス(Liselotte Watkins)による”Romantik”掲載作品

田名部敏文による”Wonderland”掲載作品


本に作品掲載される事は、我々が扱っているアーティストにとって、素晴らしいチャンスなのです。我々は、人脈作りはもちろん、彼らのスタートのお手伝いが出来ます。業界人が我々の本を買うのは、インスピレーションを得るためだけではなく、自分達が探しているプロジェクトに最適なアーティストを探すため、という事が良くあるのです。実際、我々の本での露出がきっかけで、比較的無名なデザイナーが有名なクライアントに仕事を依頼されるといった事も起こりました。

アーティストはどのようにして選ぶのですか?どのような作品から、一冊の本にまとめてもいい、という将来性を感じますか?

そうですね、出版する本には2種類あります。モノグラフ(1人のアーティストを取り扱う)とコンピレーションです。もちろん、コンピレーションで取り上げられる方が—まだ若くて、作品の幅もそう広くない時などは簡単ですね。コンピレーションを作るのは、我々には骨の折れる作業ですが、多くの人は、特定の分野(例えばロゴデザインなど)で、たくさんのアーティスト、そして色んなスタイルが楽しめる本を好むようですね。最近の人々の傾向としては、仕事人間が増えて、本も道具の一つと見なす人が多いように思います。

モノグラフは、最近あまり出版していませんね。他の出版社でもそうだと思いますが、一冊全部を一人の作品で埋めつくせるほどのクオリティと幅をもった作家を見つけるのが難しいんです。コンテンポラリーでなおかつ洗礼された独自のスタイルを持つアーティストでないと、モノグラフでは難しいです。


“WK Interact”の表紙

“WK Interact”ストリート・アート


でも、あなた方は、モノグラフに値するアーティスト達を未だにたくさん見つけていますよね?WK Interact作品 や、Boris Hoppek(ボリス・ホペック)のSancho Panzaの本、他にもエイク・クーニッヒ(Eike Koenig)がリーダを努めるデザイン・チームEike Grafischer Hortはどうです!彼らの作品には本当に感動しました。これらの作品は、あなた方が一冊にまとめた、素晴らしいアーカイブだと言えると思いませんか?


“Boris Hoppek Y Sancho Panza”

Boris Hoppekの作品

Boris Hoppekの作品

Boris HoppekのBimbo Dolls


確かにそうですね。しかし、Eikeのような人物はそう簡単には現れませんからね。彼の事は94年から知っていて、彼の作品を長い事見てきました。彼のような人間はとても珍しいと思いますよ。でも、彼はいいアーティストでいる為になにが必要か、という事を知る上で本当に素晴らしいお手本ですよ。彼は広い心の持ち主であり、あらゆる分野から影響を受けているんです。彼のチームは異なった個性を持つ、異なった才能の持ち主で構成されていて、同時にEike Grafischer Hortにはっきりとした輪郭を与える事に成功しています。彼らはコンテンポラリーの分野で常に最先端を走ってきましたし、一つのスタイルで行けるところまで行こうというスタンスは、他のグラフィック・デザイナーの方向性とはかなり違うものだと思います。


“Hort”の表紙

“Hort”掲載作品

“Hort”掲載作品

“Hort”掲載作品


来週には、新刊がたくさん発売されると聞きました。空間デザインをあつかった「Hidden Track」は、素晴らしいコンピレーション本になりそうですし、日本では、「Redemption」で一躍ゴスの女の子達の心をつかんだフローリア・シジスモンディ(Floria Sigismondi)の2冊目の作品集「Immune」も楽しみです。どちらの作品が特におすすめですか?

作品集について語るのは、自分の子供の事を語る事と似ています。つまり、どちらが一番とは言えないものです。どれも、それぞれの個性ゆえに、興味深く大事ですからね。

我々の本には、それぞれ全くちがったファン層がついている事が多いんですが、とにかく本の制作には力を入れています。エージェンシーの関係で出す本もあれば、他には生活スタイルなどのトレンドについてなどの本もあります。これらの本は出版する価値がある本だと思います。


“Hidden Track”の表紙

Enamelによる”Hidden Track”掲載作品。

“Immune”の表紙

Floria Sigismondiの作品


人に、どのゲシュタルテンの本を持っているか?と質問したら、みんなの本のセレクションがそれぞれバラバラで面白いですね。他では見られないから、という理由で我々の本を買ってくれる人が多いです。例えば、過去に出版された例のないような「新しい」本や、ちょっと変わったデザイナーを特集した本などです。こういった面が、他の会社と我々の違いだと思います。たしかに、「Los Logos」のようにセールスで大成功した本や、「Type One」、「Pictoplasma」のように他のエージェンシーでも扱っているような本もありますが、それだけではないんです。

我々のクリエイティビティーは、「リスクを背負ってもやる」という心意気から生まれていると思います。もちろん失敗する事もありますが、挑戦に失敗はつきものですからね。


“Los Logos”の表紙

“Dos Logos”の表紙

“Type one”の表紙

“Pictoplasma 2″の表紙


9年間ゲシュタルテンをやってきていかがでしたか?デザイン界でなにか変化はありましたか?

もっとも大きな変化は、インターネットとEメールですね。全く偉大な功績としかいえませんよ。おかげで作業のスピードが上がりました。

それと、以前より「デザイン」が重んじられるようになりました。昔は、他の会社が我々の本からアイデアを盗み、完全にコピーだとしか言えないようなデザインを使用する事もあったのですが、それに対して打つ手はありませんでした。しかし現在は、彼らも守るべきルールがあるということに気付き、コピーするかわりに、そのアーティストに連絡をとり、仕事の依頼をするようになりました。このような傾向は、デザイナーにとっては素晴らしい事だと思います。もっとフリーランスで仕事が出来るようになりますし、いろんな分野でいろんなスタイルに挑戦出来るようになるからです。例えばイラストレーターがタイポグラフィーの仕事をしたり、写真の仕事、またストリート・アートもこなすという風に、一人何役も出来るようになります。

すごく興味深い事だと思うんですが、以前はアマチュアとプロの違いが簡単に分かったものですが、今は制作に必要なツールが簡単に手に入る事になった事もあり、いいアイデアさえありさえすれば、低予算でもミュージック・ビデオ等を簡単に作れるようになりました。ですから、今は「アイデア」がとても大事なんです。

1冊の本を出版するのに、だいたいどのくらいの時間がかかりますか?

それは、ものによって随分差がありますね。時には1冊に1年もの時間を費やす事もあれば、またある時は、2、3週間で済む事もあります。我々は、年間20から25冊の本を出版しています。


“Designed to Help”の表紙

DED Ass. and Henning Brandsaeterによる”Designed to Help”掲載作品


今までで一番早かったのは、スマトラ沖の大津波で被災した方々へのチャリティ本「Designed To Help」です。あれは本当に、世界新記録並みのスピードでしたよ!プロジェクトの事を知ってから、たったの6週間で本を作ったんですからね。我々にとっても、コラボレーションした人々にとっても、まったく素晴らしい経験、そして達成感でした。きっとあの本が、今までのプロジェクトの中で、一番重要なものだったと思います。現在までで20,000ユーロ以上もの金額を被災者の為に寄付する事が出来ました。このプロジェクトは現在も進行中です。

あなた方の本は、内容が素晴らしい事で知られているのはもちろんですが、上質の印刷技術でも有名ですよね。5色刷りや、表紙のエンンボス加工やステンシル・・・また、Tokion magazineのアートデレクターであるディオンヌ・チューク(Deanne Cheuk)の「Mushroom Girls Virus」の表紙などは、刺繍が施されていましたよね!!


“Mushroom Girls Virus” 刺繍が施された表紙

Deanne Cheukの作品

Deanne Cheukの作品

Deanne Cheukの作品

2005年秋のカタログ

それに、販売している本だけでなく、カタログも本当に美しくデザインされていますし、エンボス加工や、パールのグロス加工など、思わず手元に残しておきたいと思ってしまいます。ただのカタログなのに!です。このような特別な仕掛けに幾らぐらいかかるものなんですか?

それは、印刷部数や小売価格にもよりますから・・・。それぞれの本をよく見た上で、自分自身に尋ねるのです。この本にちょっとした仕掛けをする事が効果的かどうか、という風に。まあ、本の内容によって外観が決まりますし、それにあわせなくてはいけませんが。しゃれた表紙を作ることは、目立たせる事が目的な訳ですから、我々の本来のやり方ではないのですが。ただ、名刺やカタログとなると話は別です。小売業者に我々の実力をプレゼンするのは大事な事ですし、彼らもそれを評価してくれますからね。

フォルクスワーゲン社から、コペンハーゲンにある「Hotel Fox」のためのアーティスト選びと、アートディレクションを依頼されましたよね。このプロジェクトは大成功で、空間デザイン、イラストレーション、ストリート・アートなどを別の次元まで引き上げたという意味でも画期的な事でした。参加したアーティストやゲシュタルテンにとってもすばらしい機会だったと思います。将来、またこのようなプロジェクトをやる予定はありますか?

私がやっている事は、本物を作り出すことで、それは本というメディアに限定される事ではないと思います。我々はデザインの世界で常に活動的でありたいと思いますし、他の分野に進出する可能性もあります。「Hotel Fox」では、我々に何が出来るかという一面を見せたにすぎません。


“Hotel Fox”の外観 ©diephotodesigner.de

“Hotel Fox” のロビー ©diephotodesigner.de

“Hotel Fox”©diephotodesigner.de

“Hotel Fox”©diephotodesigner.de


ホテルはある意味、また1冊新たな本を制作した、という感じですね。たまたまメディアが別物だったというだけで。将来このようなプロジェクトにもっと関わって行く可能性はありますが、我々のやっている事は同じですよ。ネットワークを拡げ、強化し、新たに探求していく。そして、そのネットワークを使って、世界中のデザイナー達と一緒に仕事をすること、それは常に変わりません。

クランテンさん、今日は本当にありがとうございました。.

5 コメント

  1. Very nice! I’m putting you at my favourits. which differ from the prejudices: http://www.quotationspage.com/quotes/Albert_Einstein , An investment in knowledge pays the best interest , In this world nothing is certain but death and taxes

    Posted by: Logan Ballard @ 10月23日2005年

  2. a sort of celebration of the most hidden and bewitching impulses, an aesthetic contemplation…that’s Dolceq.

    Posted by: sonia @ 7月20日2006年

  3. 嘘を突き通す売春婦。
    女に傷つけられたトラウマ少年。
    自由競争とはオスの淘汰である。

    Posted by: ウィーク @ 3月22日2011年

  4. I really like that. You touched my heart!

    Posted by: cupolas @ 11月9日2011年

  5. ゲシュタルテン出版社(DGV) good post899

    Posted by: air multiplier @ 4月21日2012年

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