matt:インテリア・デザイン

2005年8月22日 カテゴリー: プロダクト, 国内, 建築, 特集

matt:インテリア・デザイン

matt- 渋谷の新しいブティック・ホテルのデザイン

彼の「あ、今オフィスにいるから!」という言葉は、外苑前を見下ろす、おしゃれで、しかも居心地のいいバーにいる、という意味にもとれる。mattの設立者で代表者でもある李明喜(Myeong-Hee Lee)の「Cafe Office」は、間違いなく、彼の画期的なプロジェクトの一つだったと言えるであろう。アートディレクションのみならず、実際の現場作業にも参加したと言う「Office」の完成後、彼の忙しい日々が始まった。

インタビュー:ウレシカ
訳:キョウコ


Office」 昼間の様子

「Office」 夜の様子


- このインタビューは英語で行われました -

リー、「Office」は素晴らしいアイデアだったけど、どうやって思いついたの?

中村貞裕さん(「トランジット・ジェネラル・オフィス(Transit General Office)」 代表)と、東京のファッションマガジンのトークショーで出会ったのがきっかけかな。ボクら出会ってすぐに意気投合してさ。当時、彼はまだサラリーマンだったんだけど、自分でカフェを作りたいというはっきりしたビジョンをもっていたんだ。それを聞いて、すごく面白そうだったから、やってみたいと思ったよ。すごく低予算だったけど、他にはないユニークなものを作りたかったからmattはかなり頭をひねったよ。「『Office』という名前でファックスやコピー機を置いてシゴトができるカフェにしたい」という中村さんのアイデアを基にふくらませてアイデアを出していったんだ。大きな多機能なミーティングテーブルやどこでも話ができる可動椅子&テーブル等・・・。オフィス調にもかかわらず、とてもスタイリッシュなカフェが出来たよ。友達が、内装工事をやってくれて、僕も塗装なんかを手伝ったよ。あのカフェには僕の情熱と汗がつまっているんだ(笑)。


Office」 夜の様子

Office」 夜の様子


「Office」には、「面白い人と出会える」「そこから何か新しいプロジェクトが始まる」そんな気分にさせてくれる空気があるよね?実際、「Office」で初めて出会って、そこから新しい事をはじめた人を何人か知ってるんだけど

そうだね、「Office」は新しいチャンスと出会える場所だと思う・・・。僕が初めて手掛けたカフェだから、愛着があって、それこそ毎日あそこに行かないと落ち着かないくらいなんだけど・・・、例えば、「ATAK」のアートディレクションもあそこから生まれたんだ。ATAKの渋谷慶一郎さんとは「Office」で出会ったんだけど、「音楽のレーベルでもなんでもいいから、面白い事をはじめたい」と言ってるのを耳にしてさ。そして気がついたら、いつの間にか彼等のデザインのディレクションや、CDジャケットを作っていたというわけ。その後、ATAKのために、「セミトランスペアレント・デザイン (Semitransparent Design)」のデザイナー田中良治さんとコラボレーションもしたよ。


イタリア料理「Caminetto」

イタリア料理「Caminetto」

「Cafe Sign」

「Cafe Sign」


「Office」で成功を収めたあと、カフェ・ギャラリー「サイン(Sing)」のデザインと、同じ建物内にあるレストラン「カミネット(Caminetto)」を手掛けたよね?そしてその他にも、今やカフェのオーナー、イベント主催者、ホテル「クラスカ(Claska)」のプロデュース・運営を手掛けた中村貞裕さんのために、目黒や代官山などのカフェを次々とデザインしてきたし・・・。今度中村さんの会社「Transit General Office」が、渋谷の新しいホテルをプロデュース・運営する予定で、そのインテリアをmattが任されてるって聞いたけど、進行状況はどんな感じ?企画・建築は「都市デザインシステム(Urban Design Systems)」が担当してるんだよね?

そう、すごくうまくいってるよ。ただ僕って、低予算のプロジェクトが得意なデザイナーとして知られてしまったみたい…(涙)。今回も、一生懸命やらなきゃね。このビジネスホテルには、いろんな種類の部屋があって、シングル、ダブル、メゾネットタイプでお風呂が上の階にあるものや、ものすごく小さい…12平方メーターの部屋まであるんだ!これぞ日本だよね(笑)。ホテルのプロジェクトは、いろいろあって面白いよ!


渋谷のホテル。

渋谷のホテルのデザイン。

渋谷のホテルのデザイン。メゾネットタイプの部屋

渋谷のホテルのデザイン。メゾネットはお風呂場として使用


建物の構造などに関して、意見を出したりする事は可能だったの?

残念ながら、それは出来なかったんだ。すでに計画が固まっていたし、なんといっても低予算だったからね。僕の役割は、インテリアデザイナーだから。でもこれからは、もっと大きなプロジェクトをやってみたい。建築に関しても、実際の建物のデザインから関わってみたいし・・・。インテリアは、いつもプロジェクトの一部でしかないから、全体をデザインするようなプロジェクトが出来たらいいなと思うよ。

もの作りをするとき、大事にしていることは何?

ただ単に、かっこいいから、スタイリッシュだからという理由だけでデザインはしたくない。そういう事には興味がないんだ。例えば部屋のデザインをするとしたら、僕にとって重要なのは、その部屋をいろんな角度から何度でも楽しめる、そんな部屋作りをすることなんだ。見方によって、幾通りもの雰囲気が楽しめるような部屋ーだからいろんな場面に適応できるようなデザインを心掛けるし、可動性や多目的の家具なんかも取り入れているよ。たった一つの目的、経験のために作られたものって、僕にとっては違和感があるんだ。だって、いろんな人間がいるし、一日の中でも、時間によって気分は変わるものでしょ?インテリアだって、それに合わせて変化すべきだと思うな。見かけじゃなくて、体全体で部屋を楽しんで欲しいと思う。


リー、スタジオにて

テープで出来たいろんな形。巨大な絵のよう。


では、インテリアをデザインする時、どうやってはじめるの?例えば「どんな要素を使おうか」とか、どんな風に決めるの?

自分がデザインを手掛ける事が決まったら、その空間でなるだけ長い時間を過ごすように心掛けているよ。そこをぐるぐる歩き回って、想像を膨らませてみたり、床や壁をメジャーではかったり、(壁は僕にとっては、でっかい絵画みたいなものだよ)置いてあるものを移動させてみたり・・・。その部屋を「感じよう」と努力する。そして、この部屋がうまく機能するためには何が必要か、最終的にどんな姿になるべきかを見つけ出すんだ。もちろん、最終的には、スケッチをしたり、具体的な素材を考えたり、コンピュータも使うんだけど、ギリギリまで線や形(スケッチやモデリング)にはしないで、頭と体で創造しようとするよ。なぜかというと、線や形にすると、その瞬間から確実にその線や形に創造が左右されてしまうからね。ギリギリまで創造の可能性を広く持ちたいというのが、僕がデザインをする上でとても大事にしている事だよ。


渋谷のボテルのフロアプラン

渋谷のボテルのフロアプラン


部屋をまったくの「無」からデザインするのが好きなんだ。つまり、「こうしなくちゃいけない」というルールは作らないし、例えば「ダイニング・テーブルの標準の高さはコレ」なんていう一般論も関係ない。すべては、その空間に似合うようにデザインされるべきだと思うし、僕はそうしているよ。

今、もう一つ大きなプロジェクトをやっているんだよね?秋葉原にIT投資家のマンションをつくるとかって聞いたけど、これについて、詳しく教えてくれる?


「Akiba 1LDK」39階

「Akiba 1LDK」40 階


このプロジェクトは「秋葉原、1リビング・ダイニング・キッチン」の略称「Akiba 1LDK」って呼ばれてるんだ。名前だけ聞くと、なんだか学生の謙虚なアパートって感じがするけど、実際のところは、地上40階にある300平方メートルのロフトで、秋葉原駅の真ん前にできた新しいコンドミニアムの最上階の部屋なんだ。今六本木ヒルズに住んでいるDice-K(榎本大輔氏)とその友人ための、隠れ家になる予定なんだけど、今年の11月には完成するよ。

彼とはどうやって知り合ったの?


アクセサリー・ショップ

アクセサリー・ショップ


最初は、GASの紹介で知り合ったんだ。その後Dice-Kが、僕が昔やったアクセサリー・ショップの「JAM HOME MADE」を見てくれてね。このお店のコンセプトは、落ち着いた静かな空間で、透明感のある白色のアクセサリーを楽しんでもらおうというものだった。(ちなみに、カールステン・ニコライがこのコンセプトに合わせて、音楽を担当したんだよ。)ありとあらゆる感覚を使って、その場を経験しようというのが僕のアイデアだったんだけど、僕のやり方をDice-Kが気に入ってくれてさ。僕だったら、彼のためだけのオーダーメイドの空間を作れるんじゃないかと思ったらしいんだ。彼は僕と同じガンダム世代でさ、ガンダムのコスプレをして宇宙に行きたいと思うくらい、ガンダムを愛してるんだ。僕ら二人ともアニメも漫画も大好きだし、好きなものが一緒でさ。彼のマンションの主なコンセプトは伝統的な「和」と、オタクっぽいものが自然に共存している事かな。すごくクールなものになるはずだよ!

「Akiba 1LDK」のどの部分が「和風」で、どの部分が「オタク」なのか聞かせてくれるかな?

う〜ん、どの部分と言うのは難しいな。というのも、僕はスタイルに捕われたくないんだ。どこが「オタク風」であるとか、どこが「和風」であるとか、そういう区別はしないで、とにかく自分たちが「クールだ」と思えるものを組み入れていったという感じかな。

日本の伝統的な家っぽい部分もあるし、「いい無駄」もつくった。それがアクセントになっていると思う。例えば、ベッドにしても、「スカイ・ソファ」の下に収納出来るようになっているし。スカ・ソファっていうのは、奥行きが1.8メートルもある大きなものでね、壁の一角全体をカバーしているんだ。ソファは窓のすぐ横に置かれているから、40階から東京の街を見下ろせるんだ。最高の景色だよ。


「Akiba 1LDK」のフロアプラン。 縁側

「Akiba 1LDK」のフロアプラン、,Sky Sofa

「Akiba 1LDK」のフロアプラン

「Akiba 1LDK」のフロアプラン


フロアプランをみると、「縁側」なんてものまであるから驚いたわ。なにか特徴はある?

アンティークの床材で「縁側」を作って、そこに中が空っぽの大きなガラスのキューブを配置したり、木材の床の一部に白いプラスチック素材を取り入れたり、メゾネットのバスルームは檜風呂だったりと、とにかくいろんな素材を並列に使用してみたよ。「和風だから、この素材」なんていう決まり事は好きじゃないからさ。後は、そうだなぁ、部屋の一角が寿司バーになっているんだけど、パーティーがある時には有名な寿司職人を呼んでおいしい寿司を握ってもらえるよ。他にも可動式のDJブースなんかも作ってるんだ。

へぇ!Dice-KってDJでもあるんだ!

ちがうよ、彼はスーパー・オタクなんだ!(笑)

和風と、オタクの組み合わせって面白いなと思ったんだけど。

多くの外国人にとっては、伝統的で古風な和風に新しくてクレイジーなオタクっぽいものが並べられているのって、奇妙に思えるみたいだね。でも僕らは日本で育ったからさ、全部があたりまえの事なんだ。つまり、古いものも、新しいものも、スタイルにこだわらずに自然に混在していいものだと思う。さっきもちょっと言ったけど、「〜風」とかいうカテゴライズは僕の思考にはないんだ。そういったものから解放されたところでデザインを考えているよ。

このフロアプランはなに?


多目的階段の模型

リーと多目的階段の模型


この階段は、本棚やベンチ・・・それに机としても機能するんだ。いろんな目的のために使えて、同じ空間で違う経験をしてもらえること、それが僕のコンセプトなんだ。

完成したらぜひ見てみたい!今後の予定は?こんな事をやってみたいって事でもいいけど

カルチャー・センターをデザインしてみたいな。ニュー・メディアのカルチャー・センターか学校をね。実を言うと、全くの新しいシステムをデザインしてみたいんだ。教育って、みんなもご存知の通りすごく大事なものだよね。でも日本の教育のシステムは、残念ながらあまり上手く行っているとは言えないと思うんだ。デザインの観点から、新しい教育システムを作る事に興味があるんだ。内装、外装、メディア、授業、理解、イントラネット・ウェブサイト、学習、こういった全部の要素を融合させて、一つのデザインを作り上げるんだ。


YCAMの「BIT THINGS」

YCAMの「BIT THINGS」


山口情報芸術センター(YCAM)のために、「BIT THINGS」というカフェスペース(ワークショップなども出来るクリエイティブな多目的スペース)をデザインしたんだけど、とにかくたくさんの子供達がこの場所を楽しんでくれてさ。その事がきっかけとなって、教育に携わってみたいと思うようになったんだ。子供達がどうやって「遊び」を組み立てていくか、どうやって物を動かして学んで行くか、そんな事を目の当たりにして、子供のためのデザインがやりたいと思ったんだ。

もちろん、自分一人じゃこんなに大きいプロジェクトを立ち上げる事は無理だと思うけど、でもいろんな人と力を合わせて、一緒にそんなプロジェクトのディレクションがやれたらいいな。

ワオ!素敵なアイデアがいっぱいね。今後の活躍を楽しみにしているわ。今日は本当にありがとう!

4 コメント

  1. 多目的階段って建築家の藤本壮介さんのn-houseのパクリじゃないっすか?
    こんなのメディアにだしていいんすか?

    Posted by: いいの? @ 8月24日2005年

  2. ご指摘の建築家もプロジェクトも僕は知りません。
    別にこれは僕のオリジナルだーと言うつもりもありませんが、
    パクリという事実も全くありません。
    当たり前のことですが、自身の創作において他者のデザインしたものを
    直接参照することは絶対にありえません。

    Posted by: lee/matt @ 8月25日2005年

  3. 藤本壮介氏のn-houseは2001年のSDレビューで発表されていたと思います。
    http://www.japan-architect.co.jp/japanese/2maga/ja/ja0045/work/05-01.html
    http://9tubohouse.com/designers_file/fujimoto.html
    当時はアフォーダンスに関して盛んに議論が行われていた時期で、テンポラリーな氏の作品は強く印象に残っています。

    デザイナーとしてメディアに出る上で、他の作家の作品は常に意識する必要があるのではないでしょうか。インテリアデザイナーと建築家という違いはあれど、同業者であることに違いは無いと思いますし。
    今回の記事ではどちらがオリジナルか判別しかねるので、後は当事者間の問題でしょうね。

    コピーがオリジナルの強さを超えることは無い、というのが世の常だと思うのですが。

    Posted by: nick @ 8月25日2005年

  4. It was fun visiting here. Wishing you a great day! Living well and beautifully and justly are all one thing: http://www.useful-information.info/quotations/life-quotes.html , An investment in knowledge pays the best interest , which differ from the prejudices

    Posted by: Kyle Bartrim @ 11月2日2005年

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