
ポール・バロンとオリビエ・テローが知り合ったのは、数年前、原宿でのBloggersオフ会での事。既に数年間W3Cに勤めていたオリビエと比べて、当時ホンダR&Dのインターアクションデザイナーとして働いていたポールは、まだまだ東京では新参者だった。「東京のアートやデザインのイベントに関するリストとか包括的なガイドって、特に2ヶ国語対応のものとかになると、実際無いよね…。」共通の結論に達した彼らは、結局自分達で、オンラインの東京アート&イベントカレンダー、Tokyo Art Beat(東京アートビート)をスタートする事にした。
インタビュー:ウレシカ
訳:ジュンコ
Tokyo Art Beatを見れば、アートやデザインに関するイベントについて他にチェックする必要がもう無いって感じだよね。400以上の開催地について、時間や地図やそういう情報を全て網羅してて、しかも無料だなんて!初めて見た時はホント感動だった!
ポール:とにかく根本的なアイディアは、有名なミュージアムとかだけじゃなくて、もっと他にも、正に今、ここ東京で何が起きてるのかっていう事を知らせたかったって事なんだ。しかも、アートに触れたいっていう人以外の、売買してる人とか専門家なんかにも、東京にはこんなにバラエティがあるって事を知って欲しかった。それに、アーティスト自身にだって、これだけ彼らの作品を発表する場があるって事を知らせたかったんだ。インフォメーション全部を英語と日本語にする事で、海外からの観光客とか、日本のアートシーンを覗いてみたいと思ってる外国のアート好きなんかにも門を開く事が出来たんじゃないかって思ってるよ。

Tokyo Art Beatのトップページ

Tokyo Art Beatの検索機能
開始してからほぼ1年だよね。最初は何人で始めたの?今は?
オリビエ:2003年の11月に始めた当初は3人だったよ。でも翌年10月までには、面白そうだから手伝いたいっていう仲間が増えて、だいたい10人くらいになったかな。サイトが発展して行くのに伴って、自然と手伝ってくれるネットワークも広がっていったんだ。大事なことは、東京中から集まる全ての情報を、適切な方法で集めなければいけないって事なんだけど、実は、始めたばかりの時は、なんとなくそれをシステム的に自動化して出来るような気がしてたんだ。でも、情報を集めるのには、実際に人が動いてでなきゃダメだって事にすぐに気がついた。勿論、その方が良いのは当たり前かもしれないけど、でも、より大変なのも事実(笑)。
ウェブサイトを立ち上げた時の役割分担は?

ポールとオリビエ
オリビエ:ポールは、インターフェースのデザインと、情報アーキテクチャをやって…
ポール:で、オリビエはプログラミング全部と…うーん、でも正直全部二人で一緒にやったって感じなんだよね。
利用者に情報を伝える上で気をつけてる事ってある?
オリビエ:一部のイベントを選んだり、えこひいきみたいな事をしないって事は最も重要だね。とにかく全てを紹介して、利用者自身に選んでもらえるようにしてるよ。メディアで選ぶ事も出来るし(例えば「写真イベント」だけを探したり)、エリアで検索する事も出来る(今いる場所の近くのイベントを探す事も可能)。こちらからの押し付けじゃなくて、“その人自身が求めてるもの”を探すサポートをしてあげられるように努めてるよ。でも、一部には、逆に「ここへ行ったら?」みたいなオススメ情報を求める人もいるけどね。
なるほど。それで、「本日のオススメ」や「最も人気」セクションがあるのね?

「最も人気」セクション

My TAB
オリビエ:そうなんだ。「最も人気」セクションは、最近出来た機能だよ。利用者のデータベースが増えて来たから、それを使おうかっていう事になったんだけど、利用する人は、Myタブを作って気に入ったイベントをマークして、e-mailお知らせ機能を設定すると、行きたかったイベントを逃したりしなくて済むんだよ。その「行きたい」マークが多ければ多いほど、人気のあるイベントだって分かるってわけ。
ポール:つまり、利用者同士が自然に「こういうの好きだな」みたいな情報を伝え合ってるって事で、本来情報ってそうあるべきだと思うよ。
Tokyo Art Beatには、ナイス・アイディア!って思う機能が沢山あるよね。例えば、イベント会場をGoogleマップで探せたり。あと、いくつかのミュージアムでは、ウェブサイトからイベント情報をプリントアウトして持って行くと割引が受けられたりするじゃない?こうなってくると、日々の更新やイベント発掘以外にも、凄く手間がかかるようになってきたでしょ。実際どうやってこなしてるの?

Googleマップでイベント会場が見つかる

Googleマップでイベント会場が見つかる
ポール:イベント会場と僕らの関係は凄くうまく行ってるし、ウェブサイトもうまく回ってる。ボランティアでやってくれてる僕らのチームも素晴らしい働きをしてるよ。でも、知名度が上がるにつれて完璧を求められるようになって、仕事へのプレッシャーがかかるようにはなってきたね。実のところ、もう既に今の構造では無理が出てきてるから、何か策を練らなきゃって思ってるところではあるんだ。
Tokyo Art Beatの利用は完全に無料で、二人は全くそこからお金を得ていないのよね?これからも仕事がどんどん増えていって増員が必要になったらどうするの?
オリビエ:NPOを立ち上げる手はずは整えたよ。だから、これからは、ただ友達同士でウェブサイトを運営してるって感じじゃなくて、もう少し僕らをプロフェッショナルだと認めてもらい易くなるって期待してるんだ。現在、スポンサー大募集中です!!
東京とロンドンのアートシーンを比べて、大きな違いってある?
ポール:うーん、そうだなぁ。基本的には同じだとは思うけど、でも東京では、アートに触れる場所っていうのが、きれいに二つの種類に分かれてると思う。ミュージアムか、ギャラリーかっていう。アートを“展示する”世界と、アートを“売る”世界。
そう言われれば…。でも、Tokyo Art Beat上では、注意して見ない限り、その違いに気がつかないな。ただ単純にアートに触れる場所を見つけられるってだけで 。
ポール:それこそ、僕らの理想としてた形だよ。

ちなみにTokyo Art Beat は、日本の携帯電話でも見られる

さらに検索オプションの選択肢が多い
ギャラリーとミュージアム両方を扱って、アートとデザインの関係についてどう思う?…こういう質問って古くさいって分かってるし、アートとデザインの間に境界線を引くのがどんどん難しくなってきてるとは思うんだけど…。でも、ポールとオリビエ的にはどう思ってる?
ポール:(笑)そうだな…、僕がこのウェブサイトをやってて楽しいと思うのは、色んな人をいっしょくたに放り込んじゃえるって事なんだ。たとえ彼ら自身は一緒にされたくないって思っててもね。自称アーティストのデザイナーと、実はデザインをやってるアーティストとか。未だ誰も僕にアートとデザインの違いを説明出来ていないから、では一緒にしちゃえばいいかなと…(笑)。
ここ数年で、日本のアートシーンはどう変わったと思う?

ポール

オリビエ
オリビエ:うーん…それはちょっと難しい質問だな…。大きなトレンドとして僕が感じるのは、今の東京では、外国人と日本人のアーティスト両方が対等に作品を公開してるって事かな。つまり、日本人アーティストへの誇りや支持が増えてるって事。80年代や90年代は、外国人アーティストがスターの座にあったけど、今のスターは絶対日本人だよ。
ポール:でも、国内外でジャパニーズ・アートのかっこよさが凄く認められているのに、一方でギャラリーなんかは未だ苦労してるんだよ。ここ6ヶ月でもかなり沢山の所が閉鎖を余儀無くされたし、今現在も、大きな事が起ころうとしてる(内部情報だけど…)。実際、ギャラリーに関しては、全然トレンドの波が来てないんだよ。
イベントのプロモーション方法に関しては、何か最近の流れっていうのがあるのかな?例えば、インタラクションだったり、強いストーリー性があるとか、触れる事が出来るとか、あと、今ちょうど川村記念美術館でやっているような「世界の呼吸法~アートの呼吸 呼吸のアート~」 みたいに、より変わったテーマを持たせたりするとか…。
オリビエ:うん。勿論!それも、テーマを明確に分かり易くする事で、より沢山の人にアートに興味を持ってもらってイベントに来てもらう一つの方法だよね。結局全てはエンターテインメントって事にはなるんだけど、でも、普通エンターテインメントっていうのはそこでオシマイなのに、こういったエンターテインメントに関しては、そこから人をアートの世界に導けるっていうところがあるよね。
Tokyo Art Beat の今後のビジョンは?
オリビエ:僕らのビジョンはいつでも変わらないよ。「文化やアートやデザインを、全ての人に無料で!」って事。勿論、将来的には東京以外の街や他の国でもやりたいなって思うけど、ただ、とにかく出来る事を一歩ずつって感じだね。
なるほど。今日はホントにどうもありがとう!

ポールが帰る準備をはじめ..

それを見て苦笑するオリビエ
ポール:こちらこそ!…あ、そうだ!僕らの一周年記念パーティを、10月8日にSuper Deluxeでやるって事、読者に伝えてね。
了解しました!!
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