
フランソワ・シャレ(François Chalet)にインタビューを行った。自らを「ストーリーテラー」だと評するこのヒネたスイス人アニメーター。ヨーロッパでのVJとしての活躍はもとより、教鞭をとっている事、ダンサーとのコラボレーション、ポンピドゥー・センターでの展示会への参加、そして愛(!)や人生についても、大いに語ってくれた。長くて楽しいインタビューの概要をここで紹介したい。
インタビュー:ウレシカ
訳:キョウコ
フランソワ、貴方のユーモアがすごく好きです。シンプルなキャラクター達が、ユルい笑いを誘いますよね。自分のスタイルを表すとしたら、どんな風になると思いますか?ミニマルなテックス・エイヴリー(Tex Avery)とか?(Tex Averyはアメリカの奇才アニメーター。ドルーピーなどのキャラクターで有名)

Exit FestivalでVJをするフランソワ

VJの一場面

Exit Festival

VJの一場面
ボクの作品は、すごくシンプルな形、つまり丸だの、四角だのから出来ていて、それって、もしかして数学科に行ったからかも知れないし・・・。人によっては、スイス人特有の巧妙さだなんて言う人もいるし、ボクが日本のキャラクターが好きだから「カワいい」ものになってるって言う人もいる。思うに、ボクがやっているのは、インスピレーション受けたいろんな事をミックスさせる事だと思う。子供の頃に、テックスのアニメを見た事もそうだし、日本に何度も旅行してる事からも影響を受けているよ。ボクが作り出したミニマルなキャラ達は、アニメを通して物語を伝えてくれる。だいたいのところ、おもしろいんだけど・・・いや、悲しいものもあるな。ボクが悲しい気持ちのときは、悲しい話が出来ちゃうんだよね!(笑)つまりユーモアで世の中を良くしようとしてるのさ。
最近はどんな作品を作ってるんですか?

VJ映像とダンサー

VJ映像とダンサー
舞踏家のトマス・ドゥシャトレー(Thomas Duchatelet)と出会って、新しい事を始めたよ。彼は以前、ピナ・バウシュ(Pina Bausch)のために踊っていたんだけど、その後パリで自分の会社を設立したんだ。ちょうど、クラッシクとか普通のダンスじゃなくて、なにか新しい事に挑戦したいと思っていたらしくてね。それで、踊りと音と映像を融合させたコラボレーションを始めたんだ。そんなわけで最近パリにしょっちゅう行ってるよ。ダンサー達が踊るのを観察して、アイデアを得て・・・ だってやるんだったら、きっちり打ち込んでやりたいからね。現時点で言えるのは、映写用に、すごく長いスクリーンを使って、ダンサーはその前を踊るって事くらいかな。映写については、以前自分の作品で既に実験済みだしね。ダンサーとコラボレーションするのは大好きなんだ。今度の作品は、「From Zero to Eternity(ゼロから無限大へ)」というタイトルで、長さは70分程度になる予定。12月の最初から、ツアーにでるよ。
貴方は、デザイナーのパトリック・ジュアーン(Patrick Jouin)とメディア・アーティストのドゥ・ゼンジュ(Du Zhenju)とともに、ディディエー・フシリエー (Didier Fusillier) がプロデュースした舞台「シリアル・キラー(Serial Killer)」で、VJとしてコラボレーションしましたよね。あのパフォーマンスでの貴方の役割を教えてもらえますか?

「青ひげ君」-設置中

ボールに映写された「青ひげ君」
パトリックは「青ひげ(Barbe bleue)」ーすごく残酷なフランスのおとぎ話だけど、それについてやりたがった。それでまず、他のみんなもやりやすいように、パフォーマンスのテーマを「青ひげ」から、シリアルキラーに拡げたんだ。ボクは、自分のアニメーションに合うように、あのおとぎ話を解釈して、「青ひげ君」っていうキャラクターと物語をつくった。そして、大きなボールに「青ひげ君」を前後から映し出したんだ。音楽は、スイスのマティアス・フェテル(Mathias Vetter)が担当してくれた。パトリックのパフォーマンスは、3Dの物体をつくって、クリコア(Krikor)の音楽に合わせて光がインタラクションするものだった。そして、ボクは巨大なボールにミュージカルビデオを映写して、その後にドゥ・ゼンジュがつづくといった感じでね。ドゥ・ゼンジュは、ビデオとダンサーの影をつかった、インタラクティブなダンス・パフォーマンスをやったよ。全部のパフォーマンスが終わるのに、だいたい1時間くらいかかったかな。今までに3カ所で公演したよ。
ダルバーン・レーベル(Dalbin label) と契約している貴方は、ポンピドゥー・センターで現在開催中の展示「D.Day」で、5つのスクリーンを使ってのビデオ・インスタレーションに、3分間のビデオ作品を提供されましたよね。5人のVJが選ばれて、映像作品をつくつるために、それぞれ、テーマ(成分)を与えられたと聞きました。フランソワ、あなたの成分はなんだったんですか?そして、この展示会のために、どんなアイデアをだしたんですか?

九州で見つけたポストカード

ポンピドゥ・センターの展示映像の一場面
ボクが与えられた成分は空気だったよ。いつもボクは物語から作品を作るから、日本で、凧のポストカードの写真を撮った事を思い出してね。(注:凧はドイツ語で、「Wolkendrachen」空の竜という意味らしい)その写真はお気に入りだったし、空気というテーマに合うんじゃないかなと思ったんだ。このアイデアがまず頭にあって、湖にほど近い小さな街、ラッパスビル(Rappersville)でやってる展示会を見に行ったんだ。そこには、自分のスタジオをそのまんまの姿で作品として展示したんだけどね。とにかくその街を歩き回っていたら、砦を見つけた。その砦っていうのが、おとぎ話から抜け出してきたようにあまりにも完璧な代物で、逆にチープっていうか、旅行者向けのアトラクションみたいな感じだったんだけど、そこで、映像のアイデアを思いついたんだ。砦に住んでいる一匹の竜がいて、空を飛んで大きな街へ出かけていって、ガールフレンドを探す・・・ラブストーリーだよ。あらすじを話して作品を台無しにしたくないからこのくらいにしておくよ。ポンピドゥー・センターにぜひ見に行ってみてよ!
建築グラフィックとでも言えばいいのかな・・・、あの一連の作品がすごく好きなんですよ。建築物の写真をつかって、典型的な「シャレ風」作品を作っていますよね?こういった作品も、将来アニメーション作品になったりするんでしょうか?

建築物シリーズ

建築物シリーズ

建築物シリーズ

建築物シリーズ
あー、あれ!そうだね、今、アニメーションの小作品をチューリッヒ(スイス)での映画用に、パーカッション奏者と一緒に制作しているところなんだけど、あの作品の建物くん達が、立ち上がって歩き回って、仲間と小さな街を作ったら面白いと思ってるんだ。ドゥシャトレーとのダンスのプロジェクトが終わったら、ダルバーン・レーベル向けのDVDを作る予定だから、チューリッヒ、ニューヨーク、ベルリン、東京なんかの建築物を使って、巨大なユニバーサル・シティを作ってみせるよ。DVDは来年の春頃までには仕上げて、ゲシュタルテン出版社(Die Gestalten Verlag)と通して流通されるよ。
それは楽しみですね!建物を使った作品では、特に、テーブル・サッカーのコミックが好きでした。

テーブル・サッカー

テーブル・サッカーのコミック
あれは、みんなで共有してるオフィス用に作ったんだよ。僕らみんな、長い間プレイステーション・マニアとして生活してきた。だから今度はテーブル・サッカーゲームをオフィスに購入しようって決めたんだ。コンピュータの前に座って、一日中デザインばっかりやってるのって、ひとりっきりの孤独な作業だし、とにかくボクは本物の人間とコミュニケーションをとるべきだ、感情がわき上がってくるような何かが必要だって思ったんだ。みんなすごく気に入ってて、毎日一緒に遊んでるよ。すごく単純なゲームだけど、面白さが全部備わっているんだ。怒りとか、悲しみ、プライド、臆病さ、とにかくいろんな感情が湧き出して来て、素晴らしいよ!実際このゲームって、ボクが作品を通してやろうとしている事のいい見本だと思う。ボクは、「人生は本当はシンプルなものだ」ーただ、自分たちで複雑にしているだけで、基本的には単純なものなんだよ、って事をみんなに知らせたいんだ。
あなたならではのユニークなスタイルで、いろんな面白い事をやっていますよね。それで生計を立てているなんてすごいなって思います。

Mitsubishi

MTV alarm
うーん、だからボクにはガールフレンドが必要なのさ!(笑)なんて冗談だけど!もちろん商業的な作品も作っているんだよ。例えば日本の三菱や、アメリカのOP Vodka、ヨーロッパのMTV向けにアニメーションを作ったり、イラストの仕事はしょっちゅうやってるし。今政府からの助成金を獲得を目指しているんだ。本当のところを言うと、最近生活をガラッと変えたんだ!もっと自由になって、自分のために時間を使いたいからね。そんな訳で、多少の貧乏なら喜んで受けるよ。多分、ボクはその方がハッピーでいられると思う。
最近、ZKM(カールスルーエ・アート・アンド・メディア・テクノロジー・センター)でVJについて講義をしていると聞きましたが?

ZKMでのワークショップ: 「削ぎ落とす」

ZKMでのワークショップ: 「間違う」
ZKMでカールスルーエ大学の生徒向けに、アニメーションのワークショップを何度かやったよ。それが、だんだんとFlashを使ってのVJ用映像作りって感じになったんだ。ワークショップは「間違う事」、「削ぎ落とす事」、「動き」、そして「ループとVJ」の4つの要素で構成されてた。夏になると、そのビルがものすごく暑くってさ、最後のワークショップは夜にやろうと決めたんだ。夜通し作業したよ。そして3日目、生徒達は、それぞれに、ZKMのパーティーでプレイするための映像が出来上がってた。この経験はみんなの自信につながったんじゃないかな?人にものを教える事ってすごく楽しいんだ。すでにあちこちで講義させてもらっているし。一度、すごくユニークな経験をさせてもらったよ。ビジネス、文化、政治専門のツェッペリン大学 (Zeppelin University)でデザインの基礎を教える事になった時の事なんだけどね。そこの生徒達と会ってみて、すごく面白かったよ。だって、自分とは全く違う考え方の人たちに、デザインを教える事が出来るなんて素敵じゃないか。(彼等からしたら、ボクのほうが「変なやつ」って感じなんだろうけどね。ビーチサンダルで講義にいったからさ・・・)結局、ボクはいろんな人にあって、アイデアのやりとりをするのが好きなんだね。
(フランス語で)ドウモアリガトウゴザイマシタ
1 コメント
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伊藤さん、創刊おめでとうございます。
あわせて、上の記事でちょこっとだけ紹介されている三菱の作品は、もう2年以上前になりますが、シャレとうちとの共作だったのでちょっと嬉しくなりコメントしちゃいます。
彼と仕事をした感想は、とにかく彼は仕事が速いです。そしてクオリティも高い。間にコーディネーターの方に入っていただいたのですが、こういう絵が欲しいと企画を伝えるとものすごい速さで絵をあげてくれて、うちもその絵に対してかなりのスピードでアニメをつけて、というのをかなりのボリューム分こなしたのですが、その間のやりとりもスムーズで楽しく自由に仕事をすることができました。実際にクライアントさんからの直しもほとんど0でした。また何かで一緒にできればと思ってます。
彼のようなクリエイターをPingMagでどんどんとりあげていってください。今後の展開を楽しみにしています。
Posted by: boku@bascule @ 8月1日2005年