
今回で七回目を迎える「ネクストフレーム・ニッポン(NextFrame Nippon)」は、テンプル大学ジャパンの学生が中心となって運営される、年に一度の国際学生フィルムフェスティバルである。フェスティバル終了後に、今回フェスティバル・ディレクターとして2度目の指揮を取ったテキパキスタジオのカール・ノイベルト(Karl Neubert)氏を訪ねてみた。
作者:ウレシカ
訳:ジュンコ

学生が、英語と日本語でプログラムの説明

ノイベルト氏。フェスティバル会場で
「日本では、学生が自分たちの作ったフィルムを発表する場が本当に少ないでしょう。僕らはそれを何とかしたかったんだよ。」ノイベルト氏はこう続けた。「それでこのフィルムフェスティバルを思いついたんだけど、ただ単に自分達のフィルムを発表するっていう経験だけではなくて、同時に僕らが学生達に望んだのは、フィルムの世界のビジネス面も知って欲しいなって事だったんだ。リアリティ・チェックっていうか。…例えば、PRの為に企業に電話する事から始まり、チラシを作ったり、外国の生徒の作品の為に字幕を付けたりね。それから勿論、このフェスティバルを通して、もっと日本の人達がショート・フィルムや実験的なフィルムに興味を持ってくれて、こんな素晴らしいメディアをサポートしてくれるようになったらいいなって願ってるよ。」
六本木の麻布区民センター(7月15~20日)と渋谷のアップリンク・ファクトリー(7月18~20日)で開催された今年のネクストフレーム・ニッポンは、規模はまだまだ小さいものの、その質の高い作品群は観客を魅了し、そして何より、ボランティアで働いている学生達が自分たちの手作りのフェスティバルにかける情熱と意欲は物凄く、小さな会場は連日熱気で包まれた。

Aki」の一場面

「Aki」の一場面
ベルギーのエラスムス大学生のフリーダ・ファンレーベルの作品、「Aki(秋)」は、昔の日本を舞台に漁師が恋に落ちる様を描いた、素敵な作品だ。外国人である彼女の視点から描いた昔の日本が興味深い。また、個人的に今回の作品の中で一番印象深いのは、ロードアイランド造形大学のマックス・ポーターによる「Red Things」だが、全ての赤いもの、例えば帽子や猫や虹までもが理解不能な混乱の中で消えていく10分のアニメーション作品で、とても気に入った。

「Red Things」の一場面

「Red Things」の一場面

「Red Things」の一場面

「Red Things」の一場面
ショートフィルム上映の後には、映画界で活躍している人たちによるゲストトークがあり、私が訪れた日は、運の良い事に、30年以上フィルムの編集に携わってきた鵜飼邦彦氏がゲストだった。若い頃日活で腕を磨いた彼は、現在では、「Rubber’s Lover」などインディペンデントフィルムやアクション映画の編集で有名である。今回は、彼がこれまでに関わってきた沢山の有名な映画に関するストーリーを沢山紹介していたが、編集という作業は見過ごされがちだからこそ、中には本当に「目からウロコ」の話しもあった。実際、デキル編集者無しには良い映画は生まれないのである。

ゲストの鵜飼邦彦氏

鵜飼氏
「若い頃は、俺も監督になりたいなーと思ってたんだ。でも今は、編集っていう仕事を心から楽しんでるし、この仕事が大好きだよ。なんてったって、監督や俳優が必死で撮った素材を、どっかりと椅子に座って、ポイッって捨てちゃえるんだからね。」そう言って鵜飼氏は笑った。
勿論、どう考えても編集の仕事はそう簡単で楽しいばかりのものではないはずである。特に日本で映画を作る場合は、低予算の為に、編集にかけられる時間は極端に短い。鵜飼氏はこう言う。「編集期間は1ヶ月だけだと言うと、外国の人たちは皆すごく驚くよ。運良くアクション映画の編集に3ヶ月ももらえた時には、たっぷり僕の技術をみせびらかせたから、違う意味で驚いてたけど(笑)。日本では、編集の仕事って山ほどあるんだよね、残念なことに恐ろしくタイトなスケジュールな事が多いんだけど。」

「スコア」©1995 SHOCHIKU DAIICHI KOGYO・BANDAI VISUAL
多くの場合、編集前の素材の量は出来上がりの映画の3倍だそうだ。ただし、アクション映画の場合は話しは別だ。アクション映画は、多くのスタントシーンを含むため、同じシーンを何度も撮るわけにはいかない。そこで、違ったアングルから3台の同じカメラを用意して同時に撮影することになる。「『スコア(Score)』の撮影の時なんてね、彼ら同じカメラを揃えるお金が無くてさ、十分な素材が無いだけでも大変だったのに、種類の違うカメラで撮った質の違う映像の断片をいちいちバランス合わせていかなくちゃならなくて、本当に苦労したよ。本来学生がやるような仕事だよね。でも何とかやり遂げたけど。そうそう、それから、他にもあの撮影でつらかった事はさ、ほとんどのアクションシーンは音を録音していなくて、編集後に付けるんだよ。だから僕なんて自分自身で音をイメージしながら編集しなきゃいけなかったんだよ。」
そんな鵜飼氏が現在取り組んでいる作品は、来年1月公開予定の今井雅之監督作品、「The Winds of God」である。「この映画は日本映画であるけれども、実は外国のマーケットを想定して作られたものなんだ。実際全てセリフは英語で話されてるから、僕は全然分からないんだよね。だから編集も大変で、英語の先生が最後にチェックしてくれて全てオッケーくれた時はホッとしたよ。」幅広いジャンルの映画の製作に関わってきた鵜飼氏であるが、この日は主にアクション映画の話ばかりであった。「今日どうしてこのテーマで話をしたかというと、アクション映画の編集っていうのは、正に腕の見せ所だからなんだ。短いカットの連続に、展開はどんどん速くなっていく。これって、正に編集者にとっては挑戦だと思う。」

鵜飼氏
話題がデジタルフィルムに関する事に移ると、鵜飼氏は少しがっかりした様子で、「勿論僕もノンリニア編集を時々するよ。でもそれはやっぱりしっくり来ないよ。デジタル編集をした時って、自分とその作品との関係が全然無いと感じるんだ。僕は、作品に対する気持ちとか思い入れって凄く大事だと思うんだよね。もしも僕が一つの作品の素材をアナログとデジタル両方で手にしたとしたら、それぞれ全く違うものが出来上がってくると思うよ。」
映画とテレビの編集の違いを尋ねられた彼は、テレビドラマは編集を重要だと考えておらず、監督自らが行うことも多いと語った。ただ、テレビの場合でも、ドキュメンタリーはそれとは全く逆で、通常ドキュメンタリーの素材は、出来上がりの50倍にもなり、編集者も山のような映像を前に、ストーリーを見つけていかなければならない。ドキュメンタリー製作現場では、編集者の存在が特に重要なのだ。

「Rubber’s Lover」
©1996 Kowa Kogyo, Hone Kobo

「Rubber’s Lover」
©1996 Kowa Kogyo, Hone Kobo

「Rubber’s Lover」
©1996 Kowa Kogyo, Hone Kobo

「Rubber’s Lover」
©1996 Kowa Kogyo, Hone Kobo
編集の仕事の他に、鵜飼氏が成し遂げた事がある。それは横浜フィルムフェスティバルを立ち上げた事だ。「僕は自主制作映画が大好きだし、主な劇場からは軽視されがちな若い監督を応援したい。僕はしょっちゅう彼らの作品を無償で編集してあげるんだけど、彼ら若い監督と一緒に仕事するっていうのは、僕にとって凄く挑戦的な事だなって感じるよ。メインストリームにつかっちゃってると、ありがちなパターンが染み付いちゃって感性を鈍らせちゃうけど、彼らは常に新しくて、実験的なアイディアを沢山持ってる。だから、彼らのキャリアを作っていく手伝いをしてると共に、とにかく一緒に仕事してて面白いんだよ!」
1 コメント
ウェブマガジン「PingMag」及び、姉妹サイト「PingMag MAKE」は、2008年12月31日をもって休刊いたしました。これまで応援して下さった世界中の皆様、またご協力頂いた皆様に、心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。
PingMagの姉妹版、日本のモノづくり情報を世界に発信中!
PingMagから大切なお知らせ
2008年12月31日
板谷龍一郎:色鮮やかでユーモア溢れる世界
2008年12月29日
マギボン:YouTube発のネットアイドル
2008年12月26日
ベネデッタ・ボッロメティ:たくさんの元気をくれる不思議な絵
2008年12月24日
中銀カプセルタワービル:未来の建築
2008年12月22日
花村えい子:キュートでポップな60年代の少女マンガ
2008年12月19日
日本のハイテクトイレ事情
2008年12月17日
アミューズメント:アートやファッションと融合するゲーム文化
2008年12月15日
HIROCOLEDGE:現代に溶け込む新たな伝統
2008年12月12日
瀬戸正人:ビンラン売りの甘い誘惑
2008年12月10日










Very informative site. Good job. they go mad in herds: http://www.quotationspage.com/quotes/Charles_Mackay , we elected them , The best condition in life is
Posted by: Cameron Wilson @ 10月23日2005年