ドイツ・デザイン・ラボ 第1回

2005年5月11日 カテゴリー: イベント/展示会, プロダクト, 特集

ドイツ・デザイン・ラボ 第1回

学生の作品。柔軟な棚「ジンファンデル(Zinfandel)」

「日本におけるドイツ年」の大きな目標の一つはドイツのイメージを一新させる事だ。 ドイツ年のイベントの一環である「ドイツ・デザイン・ラボ」シリーズは、様々な分野で活躍するドイツ人デザイナーが来日し、自らの作品について語る公開セミナーであるが、5月11日に行われたその第一回目に参加した。ドイツのイメージを新たにする、という狙い通り、今までになかったドイツを垣間みる事ができるイベントであった。

作者:ウレシカ
訳:キョウコ

「ドイツ・デザインの今日:日用品からライカまで」と題された本日のセミナー。カールスルーエ造形大学教授でもあるデザイナーのフォルカー・アルブス(Volker Albus)氏が最初のスピーカーとして登場し、「プロダクトデザインに今求められるもの」について講演した。彼の話は、9月からエジプト、カイロを皮切りに世界を回る彼の展覧会「anders als immer」についてふれ、(タイトルは、「いつもと違うもの」という意味。この展覧会は、伝統的、従来型のデザインから分岐した、ドイツをメインとするヨーロッパの多種多様プロダクトデザインを紹介するもの。)そこで展示する、最近のドイツのプロダクトデザインを紹介してくれた。「消費者が何を必要としているか?」という問いかけが、長い間ドイツのデザインの最重要事項とされていたため、「機能重視」という合理的デザインに終始していた。だが近年、もの作りをする際の視点が「ひょっとして、こんなものがあってもいいんじゃないか?」という風に変化してきたというのだ。

たしかに、アルブス氏のセレクションは、最近のドイツのプロダクトデザインが、面白さ、美しさ、楽しさなどのクオリティーを追求していることを証明していた。個人的にはトム・パブロフスキー(Tom Pawlofsky)という学生の棚を新しい発想でとらえ直したした作品「ジンファンデル(Zinfandel)」が最高に気に入った。機動性という事を第一に考えた、この「棚」。  パブロフスキーは、シンプルな箱を、スポンジの枠の中に自由にアレンジ出来るようデザインした。棚を動かしたい時は、箱を(中身がはいったまま!)取り出す事が出来、外側の柔らかい枠は、簡単に折りたたむ事が出来るのだ。 (そこのプロデューサーのみなさん、ぜひ商品化して下さい。)


棚として準備オッケーな「Zinfandel」

移動の準備オッケーな「Zinfandel」


これもアイデア賞をあげたい作品。コンスタンチン・グルチッチ(Konstantin Grcic)の「ハンガーブラシ」は最近無印良品から商品として売り出された。アルブス氏によるデザイン、エレガントなフロアランプ。鉄の棒がついていて、簡単に動かせる。


「ハンガーブラシ」©Konstantin Grcic

「Downlight」 ©Volker Albus


アルブス氏自身のデザイン。遊び心いっぱいの靴磨き!そして、そこに深澤直人 氏が、上の靴磨きにぴったりのドアマットとともに登場。男とサッカー。もうなにも言う事はない。


Kick&Brush
©Volker Albus

±0/Soccer Mat/Design by Etsuya Adachi・Design Directed by Naoto Fukasawa /Photo by Hidetoyo Sasaki


アルブス氏は、深澤氏のCDプレーヤー(無印良品)のデザインの大ファンだそうが、このCDプレーヤーは壁掛け型で、ランプみたいに電源コードを引っ張ると再生・停止の操作ができるというもの。


MUJI/CD Player
Photo by Hidetoyo Sasaki

auKDDI/INFOBAR


フォルカー・アルブス氏と本日3人目のスピーカーであるマルクス・ボッチュ(Marcus Botsch)氏は深澤氏がデザインしたauの携帯電話「INFOBAR」のちょっとした仕掛けに大変感動していた。それはケータイをしばらく使わないでいると、画面にゆっくりとカビが生えてくるアニメーションが流れるというものだ。このテのユーモアをドイツの商品に取り入れたいものだ!

マルクス・ボッチュ氏は医療機器デザインを専門としていてそのデザインは大変非凡なものだ。また、付け加えると、深澤直人氏も人工心臓のデザインに関わる、世界でも数少ない人間の1人だ。人工心臓のサイトはコチラBerlin Heart AG(補助人工心臓機器を製造する会社)はボッチュ氏のデザイン事務所の主なプロジェクトの1つ。


Berlin Heart visual ©Büro Botsch

Berlin Heart visual ©Büro Botsch


コンファレンス終了後のプレスを対象とした夕食会の場で、コーポレイト・デザインについての話になり、いかに(プロダクト)デザインがブラントのイメージを浸透させるか、が話題にのぼった。そこで、三菱やTOTOなどの大企業の社員が、自分たちに一番欠けているのはそれだ、と認識していたことに驚いた。BMWやSIEMENSなどの欧米の企業が、デザイン戦略を徹底させ、製品を見ただけでどこのブランドか分かるのに対し、日本企業の製品は、そのモノをみただけでは「どのブランドの製品だ」といい当てられる事はめったにない。その製品についているロゴやステッカーなどで、ここのブランドか、と見分けがつく程度のものである。

深澤氏が、このように言っていたのが大変印象深かった。デザインする時、彼は「普段、人がなにげなくしている行為」にしっくりハマるデザインとは何かを考え、そこに自分の感性を足すのだそうだ。(彼がプロダクトをデザインをする場合、完成品を企業におさめ、そこに企業側のブランドのステッカーが貼られるそうだが彼のデザインを愛するものの一人としては、プロダクトが彼のものだとはっきりわかるように、フカサワという名前を前面に出してほしい。もしくは「±0」シリーズのように、彼のスタイルで一つの新しいブランドを作って欲しいと思ってしまう。でもそれでは、日本の大企業が抱えている問題を、解決する事にはならないだろうが。)


±0/Humidifier
Photo by Hidetoyo Sasaki

万人受けする事をめざして、独自性を打ち出す事を避けていては巨大なマーケットで生き残って行く事は難しい。 デザインに対する意識がかつてないくらい高まっている現在、プロダクトに対する愛情もかつてない程強まっているのだ。 明確なメッセージ性があり、なおかつカスタマイズできる製品を今の消費者は求めている。いまや、すべてのものを持っている消費者をうならせるためには、アルブス氏の言葉を借りるならば「(いままで、ありそうでなかった)こんなものが欲しかった!」と思わせる製品が今求められているのであろう。

2 コメント

  1. 深澤氏のCDプレーヤー(無印良品)は確かにカッコイイけど今やMP3の世界、需要が減り、売れなくなっていくでしょうね。残念です。

    Posted by: じゃむ @ 8月11日2008年

  2. Home run! Great sglungig with that answer!

    Posted by: Marel @ 4月17日2011年

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