
モノレイクのロバート・ヘンケとT++ことトーステン・プロフロックの二人が5月の「SOUNDZ FROM GERMANY 2005」のために来日した。このフェスティバルは、現在日本で開催中の「日本におけるドイツ年 2005-2006」の一環で、ドイツ文化センターが中心となってオーガナイズしているさまざまなオルタナ系イベントの一つだ。ロバートとトーステンが、クラブ に行く前に、インタビューのため立ち寄ってくれた。
インタビュー:ウレシカ
訳:キョウコ
ロバート、あなたはミュージシャンで、同時にすばらしいプログラマーでもありますよね。さまざまな音楽ソフトウェアを開発し、映像への橋渡しもしていますよね。プログラミングを始めたきっかけはなんだったんですか?
僕の家族はエンジニア一家でね。だから、まあ、血筋かな。自分で音楽を作り始めてすぐに、電子楽器のとりこになったよ。それで、そのあとベルリンに引っ越したんだけど、ベルリン工科大学に入り浸ってた。大学にはすばらしい研究施設があってさ、そこでMaxと出会ったんだーそれがのちにMax/MSPになるんだけどね。僕は、新しいテクノロジーをすんなり受け入れるタチだし、音楽の方向性についても、頭にはアイデアがあった。というわけで、プログラミングを勉強してたから、当然自分で音楽のソフトを作るっていうのが妥当に思えたんだ。自分で音楽が作り出せて、これなしじゃ出来ないっていうような新しいソフトをね。
ゲルハルト・ベールズと一緒にAbleton社のLiveを開発したわけですが、他のプログラムに欠けていたものはなんですか?そのために、あなたがLiveをつくる必要性を感じたわけですが…。

Ableton社Liveの動作画面

Ableton社Liveの動作画面
音楽ソフトっていうのは、音楽をやる人のためっていうよりは、これまでエンジニアの視点から作られたものだったんだ。昔は、ミュージシャンとサウンド・エンジニアは別々の人間の仕事だったしね。音楽ソフトはエンジニアのための道具で、だれもそれを楽器だなんて考えもしなかったんだ。ソフトにはいろんな機能がついていたけど、なんていうか、魅力的じゃなかったんだよね。それに、使いこなせるようになるまでに、すごく時間がかかって、操作も難しかった。プレイするためのものというより、設計するための道具みたいだった。そこで、僕らの登場ってわけさ。Liveが、ミュージシャンのために作られた、最初のソフトウェアだよ。演奏用にデザインされているし、すぐに結果がだせるんだ。一番大事に考えた点は、ステージ上で使えるソフトをつくるという事だった。Live、つまり生演奏でね。
Liveは開発以来どのように変化して来ましたか?そして今からどのように変化していくんですか?
最初は、ステージの上で使うソフト、と決めつけていた。でも、しばらくして気づいたんだ。多くの人は、ステージで使わずに、スタジオで使うだろうってね。だから、スタジオでも使えるように調整したよ。スタジオの核となるようなソフトウェアで、したい事がなんでも出来て、それでいて今までのどのソフトより簡単なもの、そんなソフトだね。シンプルなんだけど、より完全なものを作ろうと努力したよ。
アトランティック・ウェーブズ について、大変興味があるんですが、その話を聞かせてくれませんか?聞いたところによると、とても簡単に扱えるソフトウェアで、あらかじめ用意されたサウンドをつかって、2カ所から(例えばインターネット経由で)演奏出来るという話ですが。物理的に離れた場所にいる人が一緒に音楽を作り、影響し合い、リアルタイムで結果が出せるというものですよね?どのようにして、思いついたんですか?
デッドビートのスコットと友達なんだけど、彼と一緒に音楽を作りたかったからなんだ。彼はモントリオール、僕はベルリンに住んでるだろ。だから、この問題を解決するにはどうすればいいか考えなくちゃいけなかった。「一番簡単に出来る方法はなんだろう」って自問自答して、紙に簡単なスケッチを描たりしてさ。その結果が、インターネットを使って、Atlantic Waves をつなぐという解決法だった—つまり、大西洋の大波をインターネットで乗り超えたわけさ。

Atlantic Wavesの動作画面

Atlantic Wavesの動作画面
Atlantic Wavesをつかってのパフォーマンスを、すでに2、3度行ったそうですが、どうでしたか?
それが、本当にすごかったよ。とてもシンプルなソフトんだけど、学ぶべきところは多くてね。実際まだ、テスト期間なわけで。プレイのたびに上達してるよ。一度、僕はベルリンの自分のスタジオで、スコットはデトロイトのでっかいクラブでやった事があるんだ。変な感じだったよ、だって、ぼくは自分の静かな部屋にいるんだけど、同時にもう一カ所では、騒々しい大観衆を前にスコットが演奏してるんだもん。Atlantic Wavesにはチャットできる小さいウィンドウがあるんだけど、スコットが途中で「ここじゃみんな悲鳴をあげてるよ!」って書いてきたんだ。あれは最高の瞬間だったね!

Atlantic Wavesの動作画面
モントリオール側から

Atlantic Wavesの動作画面
ベルリン側から
以前 ソフトウェア自体を、映像としてスクリーンに映し出して使うと話してくれましたよね。VJの代用として、でしたっけ?
そうなんだ。実際のところ、あんまりうまくいくんで可笑しいくらいさ。みんなが、僕らがなにをやっているのか理解できるんだよ。それは、こんな具合なんだ。ぼくらのデスクトップを映像としてつかったら、曲のリストも見えるし、僕かスコットが新しい音を置いたり、削除したりするのも見える。ちょっとしたゲームとして、文字を書いてみたり、あと、せっかく相手が用意した作ったサウンド・レイヤーを消すような、悪ふざけもできるし…。僕らのデスクトップで行われている事を、観客に分かりやすく提供するんだ。これってシンプルだけど、お客さんを飽きさせないようにするには十分みたいだよ。
Atlantic Wavesを使って教会でインスタレーションを行ったと聞きました。どんな風だったんですか?

Atlantic Wavesのインスタレーション

Atlantic Wavesのインスタレーション
僕らは、Atlantic Wavesのインスタレーション・バージョンを開発したんだ。あの教会の場合は、2つの離れた部屋にそれぞれ1個ずつターミナルを設置した。それぞれのターミナルにトラックボールとディスプレイがそなわっていて、お客さんは、それを見ながらプレイできたんだ。簡単に音を変化させたり出来るから、みんな喜んでくれたみたいだよ。特に、教会の内部でも場所によって違う音を体験出来る事も喜ばれたよ。

Atlantic Wavesのインスタレーション

Atlantic Wavesのインスタレーション
日本で初めてプレイしたときの事を話してくれましたよね。どのくらい最高だったかって事も。どんなビジュアルが好きですかと聞かれて、あなたの答えは、すべてを青色にしてしまう事。でした。ミュージシャンとして、あなたにとって映像とはなんですか?必要なものですか?
思うに…もし一人でラップトップ・コンピュータで演奏してるとしよう。それって、なんだか物足りない感じがするよね。だって、そんな状況って観客にとっては、僕が何をやってるのかってはっきりわからないし、それを眺めてても面白くないだろう。コンサートの場での理想の映像っていうのは、シンプルで抽象的で、音楽を引き立て盛り上げるもの。そして音楽がないと成立しないようなものだと思う。だから、音楽と連携して、シンプルな幾何学模様を生成するソフトウェアの開発を始めたんだ。ビデオのほうはまだ試作品の段階でなんだけどね。とにかく、興味があることをはじめたばかりって感じさ。

Monolakeの映像

Monolakeの映像
アルバム「モメンタム」は自宅ですべて制作したわけですが、スタジオというものは将来どうなると思います?どんなハードウェアがあなたには必要ですか?
いつも葛藤があるね。ラップトップコンピュータを持つって事はすごく便利だろ、すべての機能が入ってるし、なんでもこなせるし。実際ぼくは、コンピュータを使う分野の人たちは、将来ラップトップばかり使うようになると思うよ。とっても実用的だし。だけど、僕はでかいマシンがないと、音楽が作れなかった世代出身だから。だから、マシンにとても愛着があんだよ。つまみをひねったりする感触もそうだけど、過去には最先端の器具だった事があって、それを作りだすのに信じられないくらいの愛情をそそぎ、献身してきた人たちがいたってのが感じられる。だから好きなんだ。

アルバム「Momentum」カバー

ロバート・ヘンケのスタジオ
アルバム「Signal to Noise」から、「ロバート・ヘンケ・ソロ」として活動を開始されましたよね。まるで、音の研究をしているかのように聞こえましたが、モノレイクとはどう違いましたか?
最近、モノレイクはクラブ・ミュージックやこれからのクラブ・ミュージックがどうなっていくかをリサーチするプロジェクトで、ロバート・ヘンケは、僕がそれ以外で興味のある事をやるプロジェクトだという風に考えているよ。去年、ロバート・ヘンケとしてメキシコで行われたMutek Festivalでプレイしたんだ。野外で4チャンネルでやったんだけど、そこがまるで自然がつくりあげた巨大な彫刻みたいな場所でね。もともと火山だったらしいんだけど、まるで月にいるみたいだったよ。すごかったな。そこでプレイしてると、自然を祭り上げる儀式かなにかをやってるみたいな気になったよ。

アルバム「Signal to Noise」カバー

メキシコのMutek Festival
最近トールステンが参加して、再びモノレイクとして活動を始めましたよね。過去のプロジェクトを仕上げたりもするんでしょうか?
何をやろうとも、自分の中から出て来たものって、今までの自分とまったくの別物にはなりえないと思う。僕らはテクノ・ミュージックのジャンルを新しい方向へひろげたいー古典的なテクノ・グルーブを使わずにね。全くのテクノでも、全くの”エレクトロ”でもなく、その中間に位置する音楽を作り出したいね。今までとは異なる音で、リズム構成も違って、でも今までと同じような効き目があるものを作りたい。これが、テクノ・ミュージックへの進歩的なアプローチの仕方だといいんだけど。 実際のところ、今って、どの時代よりも新しい音楽を作り出す可能性があるにもかかわらず、そのオプションー例えばエフェクトなんかをつかって、結局のところみんなが同じような、つまらない音楽を作ってる。もしかしたら、必要なのは2、3個の道具で、それを完璧にマスターするほうがいいのかも。僕ら、そういう考え方が好きなんだ。つまり、限られたもののなかで、何ができるか探すって事がね。

Monolake「Polygon Cities」カバー

研究中のロバートとトーステン
2005年モノレイクのパフォーマンス
7/07 マンチェスター(UK)
7/08 ニューキャッスル (UK)
7/09 ロンドン (UK)
8/04 ベルリン(ドイツ)
8/24 ニューヨーク近代美術館(MoMA)(USA)
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